はーとぼいるどワンダフル。

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『桐島、部活やめるってよ』宏樹の涙の理由。

 DVDにて再見、やっぱり良い映画でしたよ。

 

 とにかく神木隆之介演じる前田君ね。原作からの改変として、好きな監督が岩井俊二からジョージ・A・ロメロに、読む雑誌はキネ旬から映画秘宝へとw 魅力的すぎるだろ!前田くん!ぼくのフェイバリットシーンが、前田くんが映画館で『鉄男』を観るところ。まず『鉄男』!!(笑)ってのもあるんだけど、映画が終わり、彼が後ろを振り返るとそこにいたのは

 

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 はい!橋下愛ちゃん!!かわいい!!橋本愛ちゃんが『鉄男』観てるって…おい!!夢か!ユートピアか!

  もちろん前田くんもテンション上がりまくり!え?え?塚本好きなの?『鉄男』好きなの?ってことで、映画館を出て彼は愛ちゃんにとりあえずジュースをおごるw

愛ちゃん「なんか、前観た映画に似てた」

前田くん「ん、ザ・フライ?、エイリアン?___ああ!遊星からの物体X!!」

愛ちゃん「___ごめん、わかんない。」

  このやりとりなんて、もう最高だ。可愛い女の子が少しでも自分と趣味がかぶってたら、もうテンション上がりまくりで喋ってしまう、あるあるだ。だけど前田くん、ひかれてるぞ!w

 

  まあとにかく面白い映画なんだけど、「よく分からない」って声も実は多い。ということで、宇多丸さんや町山さんの解説を基に自分なりにまとめてみる。たぶん分からないっていうのは宏樹くんのことだと思う。彼がなぜ涙し、野球部のグラウンドを見て立ち尽くすのか、彼は桐島の不在による実存の不安に陥ったのだ。以下、博樹くんがなぜ泣いたのかということに焦点を絞って書いていきます。

 

 サルトルで考えてみる 『実存は本質に先立つ』

  かつてサルトルは「実存は本質に先立つ」といった。このサルトル実存主義を前提に考えると、宏樹君の涙の理由が何となく分かる。まず実存、本質、いったいこれは何を意味するのか。サルトルはペーパーナイフを例に非常に明確な解説をしている。ペーパーナイフは物を切るという目的<本質>が先にあり、その目的を達成するためにナイフを形づくる。こうして実際の形を持って作られたものがナイフにおける<実存>である。つまりペーパーナイフにおいては<本質>が<実存>に先立つ。

 

  では、人間はどうだろう。神が信じられる世界では、本質が実存に先立つってことで問題ない。では神がいない世界では?人間の目的(本質)を決定する存在がいない場合、人間は本質を持って生まれないということだ。つまり、人間は自分の行為、自己決定により自分を形作っていかなければならない。自由の刑に処せられているのだ。

 

   以上のことを踏まえ、『桐島』を見てみよう。この映画において桐島=キリストである。すでに宇多丸さんや町山さんが指摘しているようにこの映画の根本にあるのは『ゴドーを待ちながら』である。ゴドー=ゴッド=神のように、桐島=キリストである。博樹はかつて桐島が目的を決定してくれる世界に住んでいた。桐島により安定した世界、同調圧力に従って生きる世界、勉強もスポーツも出来るし、なんとなく彼女もいれば幸せだった世界。

 

  しかし、彼は急にこの世界から降りてしまう。桐島の不在にうろたえる自分、友人、学校全体。神がいなくなったというのは同時に博樹くんは自分で自己決定し、自分を形作っていく世界に放り出されたということでもある。

 

 
意味と強度

  こうして桐島=キリスト無き世界に放り出された宏樹君が目にするのは野球部主将、そして映画部の前田だ。野球部の主将と宏樹の間でこんなやり取りがある。

 

宏樹 先輩3年生なのになんで部活続けてるんですか?

主将 なにが?

宏樹 ___いや、3年生は普通もう引退するかなって…

主将 ドラフトが終わるまではね、一応ドラフトが終わるまでね

  ここで宏樹は驚いた表情を浮かべる。おそらくドラフトで指名されることはないだろう。無理だと分かっていてなぜ続けるのか?そこに<意味>は無い。

 

   そして、屋上での前田とのシーン。

 

宏樹 将来は映画監督ですか?アカデミー賞ですか?

前田 __いや、たぶんそれはないかな。

宏樹 え、映画監督になりたいからこんのことしてんじゃないの?

前田 いや、自分が好きな映画とか、そういうものに、こうやって映画撮ってると近づける瞬間があるんだよ、だから辞められない。

  前田が映画を撮る、その行為にも<意味>がない。そして<意味>が無いことをあっけらかんに言ってしまう前田。この何でもない会話の後に宏樹は急に泣き出す。桐島が降りた後の世界で宏樹は<意味>を求めていたが、前田は好きだからやる、という<強度>を持っていた。

 

  <意味>は「こうしとくと将来役に立つ」、<強度>とは「その瞬間の濃密さ」のことである。

 

  宏樹は意味なんてなくていいんだ、と気づくが、同時に前田、主将のように強度を持って取り組めるものがない。自分がからっぽであることに気づき泣いてしまったのだ。ラスト、宏樹は行く先を求め、桐島に電話をかけるも出ない。彼は、ゆっくりと野球部のグラウンドに向かって歩いていく。

 

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