太田光と映画評論家 町山智浩 二人の出会いや園子温について

  太田光町山智浩の関係には昔から気になっていた。というのも町山さんの『底抜け合衆国』の帯の太田光のコメントを見たからだ。あれ?もともと知り合いだったのかな?と

 そんな謎が解けたのが爆笑問題の日曜サンデーのコーナー赤坂応接間でのことだ。なんと町山さんがゲストで出ていたのである。

 

太田光町山智浩の出会い

町山 あれは93年、4年かな。当時、宝島30の編集者だったぼくがホバラさんと太田さんの連載を始めようと四谷かどっかのすごい汚い喫茶店で(笑)でどういう連載にしようかっていうことでフォーマットを打ち合わせして決めたんですよ。

  やっぱり編集者時代に出会っていたんだなー。しかも大ベストセラー『爆笑問題の日本原論』に関わっていたとは驚き。この時決めたフォーマットが今も生きているというのもまたすごい。

太田 またねえ。当時から町山さんが印象に残っているのは何でも書いてくださいと、危ないことでも何でも書いてください!北朝鮮のことでも何でも書いてください!ってこっちが心配になっちゃって(笑)

 当時は北朝鮮って単語自体がタブーだったそうで拉致問題というのもないことになっていたという。そんな時代に何でも書いてOKと言える町山さん、さすがです。その結果として当時の宝島はしょっちゅう訴訟を抱えていたらしいけど(笑)

町山 ぼくが『底抜け合衆国』という政治関連の本を初めて出したとき太田さんに推薦文を書いてくれたんです。政治評論の本は初めてで、おれの名前を出しても本は売れねえなと思って、一回打ち合わせしただけなのに太田さんが素晴らしい推薦文を。そのおかげで本屋さんがとってくれたからすごい大恩人ですよ。
太田 そうです。私、恩人です。

  太田光の出版界における影響力って凄まじいまのがあるね。劇団ひとりの傑作『陰日向に咲く』も、太田がラジオで絶賛した翌日に大量の増刷が決まったらしいし、カート・ヴォネガットの名作『タイタンの妖女』も太田がいろんなメディアで褒めてたから日本でも注目が集まったという事実がある。書評家の豊崎由美も『彼は書評家としては超一流』と褒めている。小説はけなしてたけど(笑)

最近の邦画ってだめだよな。

太田 最近、日本映画どうですか?
町山 やっぱりすごく落ちてますね。
太田 でも最近調子良いんじゃないの?
町山 いやそれは日本国内だけだから。海外に通用する作品はすごく減ってますよ。60年代、70年台の日本映画ってのは本当に世界最先端でしたけども、黒澤いましたからね。だけど、今海外に通用する監督っていうのはたけしさんと、三池と園子温ぐらいでほんと数えるくらいになっちゃって。テレビ番組のスペシャル版をやってるだけになっちゃってるから。
太田 海猿とか(笑)
町山 (笑)具体的な、、『20世紀少年』とかね!海外で売れないですよ!あんなものは。

具体的に名前までだしちゃって(笑)太田も映画大好きな人間だから、町山さんと盛り上がって邦画叩いてる(笑)

町山 でもこれだけグローバルな時代になってるのに日本映画だけはどんどん内向きに閉じていって消費者を国内限定の方向になってるからすごく弱いですよね。日本国内は携帯電話と一緒で内需がデカすぎるから海外に向かなくなっちゃってるんですよ、それだけで利益が上がるから。だって制作費2億円、3億円で当たれば10億円ぐらい儲かっちゃう。だから海外目指して10億かけて映画つくろうとはならない。

 日本が豊かであることがゴミ映画を生むというパラドックス。おとなりの韓国は逆に国内のマーケットが小さいから外に出ていかざるを得ない。だから海外でも通用し得る映画が多い。ポン・ジュノパク・チャヌクはハリウッドで映画を撮ってることが韓国映画のレベルの高さを証明しているね。 

 一方、アメリカ映画は日本の状況とは正反対だ。とにかく金をかけた映画じゃないと出資者が集まらない。大きな船には皆が乗りたがるのだそうだ。だから結局、大金使ってCG作ってのマンガ映画ばかりになってしまう。

 

愛のむきだし』全然おもしろくなかったよ。

太田 園子温は町山さんの評価は?
町山 あ、園子温はすごい好きなんですよ。『愛のむきだし』はアメリカでもすごい評価高かったしね。めちゃくちゃだから映画が。
太田 でもさー愛のむきだしってこの前たまたま見たんだけど、すげーつまんなかった。昔の実験映画が散々やってんじゃん、こんなのっていう感じがしたんだけど。新しさがもう古いっていうか。それこそATGとかあの時代に。
町山 でも50でああいうことやってるけど、30代の監督がやってることっていえば完全に守りでさテレビみたいな映画が多いんですよ。アメリカ人はやっぱりこじんまりした日本の映画を観る必要ないと思ってるから、でたらめなやつが見たいと、そうすると『片腕マシンガール』とかがウケる。

太田光の『愛のむきだし』の低評価の理由は伊集院光と似ている。要はこの映画がやっていることは自分たちが若手のころにやっていたことだ、と。爆笑問題も伊集院もキャリアを重ね、テレビの枠の中で面白いことを追求することこそ素晴らしいという考え方になっている。だからこそ伊集院光は「この映画は今のおれでは受け止められない」と言ったのだ。太田も正攻法でハリウッドと勝負して評価してほしいと考えているんだろう。

 

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