考察『20世紀少年』の元ネタ。いましろたかしの『デメキング』

あの『20世紀少年』の作者である浦沢直樹が怪物的傑作と言い放ったいましろたかしの『デメキング』。

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 このマンガ途中まではすっごい面白い。

 舞台は1969年(昭和44年)瀬戸内安芸ノ浜市。テレビは安保闘争や大阪万博の開催という祭りの異様な熱狂を映し出している。しかし高校3年生の主人公蜂谷は何も無いからっぽの青春を過ごしている。友人もまたからっぽではあるが、大学に行くという目的がある。反面、蜂谷は「わしか、わしは何か、すごいことをやりたい…」要するになにも考えていないのだ。

 話は変わって「田ノ浦少年探検団」が登場。これは中学2年の亀岡と小学生3人で構成されたグループ。基地作り、キャンプ、弱いものいじめが彼らの主な活動だ。夜中に廃船の灯がつくという噂を聞いた彼らは真相を確かめに、それらしき船に忍び込む。そこで出会ったのが蜂谷である。彼は一言、「闘うんや、デメキングと」

 そして退屈な日常に飽き、誇大妄想にとりつかれた蜂谷の狂気の物語が始まる…なら話は簡単なのだが、そうはいかない。ここからデメキングが実在することを匂わせるSF的設定もストーリーに入り込み、一気に意味が分からなくなる(笑)

 

 浦沢直樹が評価したとか言ってるけど、実際、評価どころではなくこの『デメキング』がおそらく『20世紀少年』の元ネタなのだ。

 

 ストーリーはこの後、蜂谷がデメキングの足の魚拓を記した未来(平成)からの手紙を発見、その時彼は同時にデメキングが地球を破壊する予知夢を見る。蜂谷はある日、その予知夢に出てきた少年にそっくりの子供を見つけ確信する、あの予知夢は本物だと。名字が一緒のその子は予知夢に出てきた少年の未来の親だからだ。予知夢がどうやら確からしいと考えた蜂谷はデメキングが地球に現れるまで孤独に待ち続ける。

そして20世紀少年は

高度成長による「夢と希望」に満ちあふれていた時代から、一転して経済は停滞しオカルトブームが起き、世界滅亡の空気まで漂いはじめた、1970年前後。
そんな時代の中で、少年たちは、地球滅亡をもくろむ悪の組織や、東京を破壊し尽くす巨大ロボットに蹂躙され、混沌とし、滅亡に向かっていく未来の世界を空想した。そして、それらに立ち向かい地球を救うのは、勧善懲悪の正義のヒーローとその仲間たちだ。下らないようなストーリーを描いたスケッチブックを、少年たちは“よげんの書”と名付ける。しかし大人になるにつれ、そんな空想の記憶は薄れていく。
1997年、主人公のケンヂは、突然失踪した姉の娘のカンナを養い、コンビニを営む平凡な日々を送っていたが、お得意先の一家の失踪や幼なじみの死をきっかけに、その薄れかけていた記憶を次第に呼び覚まされていく。そして世界各地の異変が、幼い頃空想した“よげんの書”通りに起こっていることに気づく。一連のできごとの陰に見え隠れする謎の人物“ともだち”との出会いによって、全ての歯車は回り出す。

wikiよりあらすじ。

細かく指摘するのは面倒なのだが、大まかなプロットが類似していることが分かってもらえたと思う。

しかし、当の浦沢直樹は『デメキング』からの影響を結構ごまかしてて(笑)

そして読み終えたとき、なんとなく記憶の糸がほぐれだした。『20世紀少年』はじつは最初、怪獣マンガを描こうとしていたのだ。それを当時『ビッグコミックスピリッツ』編集長の長崎尚志氏に話したところ、「それだったら戦う相手は新興宗教の教祖みたいなやつがいいよ」そう言われたのだ。

『新興宗教』モノがいけるかもとなったのは、その教祖の名前として「ともだち」というのが浮かんだからだった。そして私は本格的に『20世紀少年』の制作に着手した。ちょうどその頃だと思う。『デメキング』の単行本を手にしたのは。誰かからもらったのか、自分で買ったのかは記憶にない。ただ「あ、僕の考えてたこと、いましろさんがやってたんだ」と思ったのだ。「よかった。怪獣モノでゴリ押ししなくて」、そう思ったのだ。


ね〜。好きならオマージュって言えばいいのに(笑)別にぼくはパクリだと思っているわけではなくて、たぶん浦沢直樹がこの、不幸にも打ち切りとなった『デメキング』が好きで好きで、その続きを自分が書いてみたってことなんだと思うんだよね。浦沢さん、タランティーノみたいに言っちゃおうよ「好きだからパクったんだよ!!」ってね。いや決して僕はパクリとは思ってないよ(笑)

驚愕のオチを加えた完結版。

 

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