アイアムアヒーローは、現在連載中の漫画の中でも特に好きな作品だ。
この漫画の何が凄いって何でもない日常が急に非日常に変わる瞬間の描き方である。
花沢健吾は単行本まるまる1巻分を壮大な前フリにした。
主人公の英雄はマンガ家松尾のしたでアシスタントとして働く中年の男。
一時期は連載も持っていたのだが、それも打ち切りになり再デビューを目指しながらも鬱屈した毎日を過ごしている。とにかくこの男ひとりごとが多いのだ。家に帰るとダンスをしながらずっとひとりごとを言う。皆に賞賛されている妄想をしながら。。彼の想像の中に存在する矢島というのも気持ち悪い。
矢島は英雄の言葉にすべて賛同してくれる都合のいい想像上の人物なのだ。
まあ、そんな英雄なので職場の同僚にも嫌われている。ずーっとひとりごとを言いながら仕事をしているのだ。そんな英雄にも彼女はいる。かつて松尾の元でアシスタントをしていた黒川徹子(てっこ)だ。といっても、てっこは、昔同僚だった中田コロリの才能に惚れており、未だに彼の漫画を捨てることができない、未練たらたらなのだ。
1巻はそんな日常が延々と描かれる。マイナーな青年漫画になりそうだな、と思ったその瞬間。
ある日、趣味のクレー射撃に向かう英雄はてっこの家に寄ってみた、その時
延々と続いた日常が完全に壊れた。
そんなアイアムアヒーローの16巻。
ZQNの正体に関して初めて具体的な推測が明かされたのだ。
そもそもこの漫画の面白さは、今まで書いてきたように日常が不確かなものに侵食されることだった。
英雄たちは、正体不明なものに侵食されたカオスの中で、生きのびるために戦っていく。
そんなアイアムアヒーローにZQNの正体というものは明かされないまま終わると思っていた。ZQNがどこからきて、何のためにというものは、この物語にとってあまり大事な要素ではないと考えていた僕にとって16巻の展開はかなり驚きだった。
舞台はイタリア。街のあちこちで巨大な肉の塊がZQNを次々と捕食しているのだ。
そんな中、生き残った人間のグループが建物の屋上に集まっていた。
そこで一人の男がある仮説を話す。
あくまで仮説ですが、私は今回のパニックは地球外生命体によるテラフォーミングのようなものだと考えます。
テラフォーミングとは人為的に惑星の環境を改変し人類の住める星に加工することらしい。
つまり、今回のZQNのパニックは、地球外生命体にとって都合の良いよう地球を変化させる目的で引き起こされているということだ。
さてさて、この展開、何か既視感があるなーと思ったら「GANTZ」だった。
GANTZも正体不明の宇宙人と戦うパニックもの。一体その宇宙人がどこから来て何のためにという理由は明かされず終わるものだと思っていたのにラストに理由は明かされた。
そろそろアイアムアヒーローもラストに近づいているのかもしれない。
それとも単なるミスリードなのか。。