宮崎駿が決定的な影響を受けた作品と、影響を与えた作品まとめ

宮崎駿が自身の創作上、影響を受けた作品、与えた作品について、まとめてみた。「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」や、「出発点 1979~1996」での宮崎の発言を中心にまとめてみる。(※2021年7月18日加筆修正)

宮崎駿が影響を受けた作品

白蛇伝

世界を肯定したくてたまらない自分がいるのをもう否定できなくなった。

(あらすじ)中国の四大民間説話のひとつ『白蛇伝』を題材にした、日本最初のカラー長編アニメ。西湖のほとりに住む許仙の元に美しい娘・白娘が現れる。一目で恋に落ちる許仙。しかし、白娘の正体は許仙が昔かわいがっていた蛇、白蛇の精だったのだ。高僧・法海は法力で彼女の正体を知り、許仙を妖怪から救おうと白蛇と法術で対決する。

「白蛇伝」は、宮崎駿が、アニメーションを志したきっかけとなった作品である。「白蛇伝」公開当時、高校3年の受験生であった宮崎駿は不覚にもヒロインに恋をしてしまったのだという(笑)

宮崎:彼女たちのひたむきさに較べ、自分のぶざまな有様が情けなくて、ひと晩炬燵にうずくまって涙を流した。受験期の鬱屈した心理とか、発育不全の思春期とか、安っぽい三文メロドラマとか・・・。分析するのも片付けるのも簡単なのだが、未熟なそのときのぼくには、「白蛇伝」との出会いは強烈な衝撃を残していった。(出発点 1979~1996)

宮崎:マンガ家を志望して、流行の不条理劇でも描こうとしていた自分の愚かさを思い知らされたのだった。口をつく不信の言葉と裏腹に本心は、あの三文メロドラマの安っぽくても、ひたむきで純粋な世界に憧れている自分に気づかされてしまった。世界を肯定したくてたまらない自分がいるのをもう否定できなくなっていた。(出発点 1979~1996)

雪の女王

アニメーションは他のジャンルの最高の作品たちに少しも負けずに、人の心を打つのだと証明していた

(あらすじ)北の国に暮らす幼なじみのゲルダとカイ.。しかし、冬をつかさどる「雪の女王」がカイを連れて行ってしまう。大人たちは「カイは死んだ」と言うが、ゲルダはカイをさがして、ひとり旅立つ。しかし、その行く手には、数々の出会いと試練が待ちかまえていた。

当時、東映動画にアニメーターとして就職した宮崎。制作する作品の企画に納得ができないまま仕事をし、アニメへのモチベーションはいつの日か、薄れてしまっていたのだという。そんな宮崎がもう一度、アニメーションの力を信じられるようになったのが、この「雪の女王」である。

宮崎:「雪の女王」は、絵を動かす作業にどれほど愛惜の念が込められるか、絵の動きがどれほど演技に消化し得るかを立証していた。ひたむきに純粋に、素朴に強く、貫く想いを描くとき、アニメーションは他のジャンルの最高の作品たちに少しも負けずに、人の心を打つのだと証明していた。(出発点 1979~1996)

この作品と出会い、宮崎は、自身がアニメーターであることに再度感謝し、モチベーションを取り戻したのだという。


黒澤明「七人の侍」・「生きる」

(あらすじ)数多くの傑出した黒澤監督作品の中でも、特に観客のみならず世界中の映画人に多大な影響を与えた代表作。これ以降「荒野の七人」「宇宙の七人」など、この映画を手本とした作品が多く作られたのは周知の事実。時は戦国時代のとある貧しい農村。農民たちは野盗と化した野武士たちの襲撃を恐れ、おののいていた。そこで村を守るために用心棒を雇うことを決意、食うに窮する七人の侍を探し出し、彼らとともに野武士に対抗すべく立ち上がる……。複数のカメラワークによる迫力ある立ち回りのシーンは見事。(映画.comより)

黒澤明の映画に非常に大きな影響を受けた宮崎駿は、「七人の侍」についてこう賞賛している。

宮崎駿:僕はとてもいい映画だと思ってるんですよ。好きな映画なんです。(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

「生きる」について、宮崎はこう絶賛している。

宮崎:書類の山の前で、主人公の市民課の課長が書類をくり、判を押している。書類をくり、判を押し、処理済の書類に重ねる。次の書類を取り上げ、チラッと目を走らせるが、読むほどの必要がない事は先刻わかっている。また判をとりあげ押す。その男の背後に積み上げられた厖大な書類の山。陰影の濃い画面、悲しい仕事を正確に律儀にくり返す男の所作。胸を衝く美しい緊張感と存在感溢れる映像である。これは正座して観なければならない映画だと、その瞬間に思った。ひとりの映画監督が生涯に何本とつくれないフィルムに、今出会っているのだと実感したのだった。(出発点 1979~1996)

宮崎:「生きる」には名場面といわれるシーンがいくつもある。けれども、自分にとっての「生きる」は、書類の山と判を押す男の、このショットに凝縮されている。本当に、なんて美しい映像だろう。なんという映像を、かつて日本の映画を持っていたのだろう。くり返し思い出す。何度も自問してみる。どうして、そんなに感動したのか。あのショットの力の秘密は何処にあるのだろうかと。(出発点 1979~1996)

↓「七人の侍」は、こちらから視聴できます。


宮崎駿と黒澤明の対談はこちらから↓
fc0373.hatenablog.com


ファンタスティック・プラネット

(あらすじ)アニメーション作品として史上初めてカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞したSFアニメ。フランスのSF作家ステファン・ウルの原作をもとに、漫画家・イラストレーターのローラン・トポールが4年の歳月をかけて描いた幻想的な原画を、ルネ・ラルー監督が切り絵アニメーションという手法で完成させた。地球ではないどこかの惑星。その星には真っ青な肌に赤い目をした巨人ドラーグ族と、彼らから虫けらのように虐げられている人類オム族が住んでいた。(映画.comより)

宮崎駿は本作を観て、自身の作品の「美術の不在」について、いろいろと考えさせられたという。

あの映画自体については、おもしろい作品だが好きな作品ではありません。技術的水準に感嘆しましたが、共鳴は出来なかった・・・・観てとてもよかったが、二度観る気はおこりません。とても良く出来ているが、粗雑な物語だと思いました。まずトポールの世界があって、それを展開させるに適当な原作を探したのではないのでしょうか。あのフィルムで主題が成功しているとはおもえない。ただトポールの世界はまぎれもなくフィルムの中に創り出されていました。(出発点 1979~1996)

タルコフスキー「ストーカー」

(あらすじ)とある小国に、謎に包まれた“ゾーン”と呼ばれる地域があった。立入禁止になっていたが、そこには、人間にとって一番大切な望みがかなえられる“部屋”があるというのだ。そして“ゾーン”に踏み込むという大胆な行動をとる者が出現した。案内役はストーカー(アレクサンドル・カイダノフスキー)と呼ばれている男だ。止める妻(アリーサ・フレインドリフ)を説得し、今“ゾーン”へと出発するストーカー。(映画.comより)

宮崎駿はテレビでたまたま観た「ストーカー」にいたく感動したのだと様々なインタビューで語っている。後半の1/3しか観ていないのに、それだけで十分で、それ以上、望まないと絶賛する作品だ。

宮崎駿:あのー、訳のわかんない映画は嫌いじゃないです。「ストーカー」なんてのは、ヨレヨレって帰ってテレビをつけたときにたまたまやってたから観たんですけどね。要するに後半しか観てないんだけど「うーん、これはすごい映画だなあ!」って、やっぱり本当に思ってるんですよ(笑)」(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

宮崎駿:やっぱり映像のちからみたいなものが半端じゃないっていう、それだけで尊敬します。で、半端なものは、どんなにテーマ性が優れてても、やっぱり観るに足りないものだと思ってるから。(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

宮崎駿:やっぱり作品というのは、本当はワンショットを観た瞬間にね。つまり、その「ストーカー」なんかがそうであるように、目の前で浅い水がゴミを含んでスーッと流れていくショットを観ただけでね、「これは正座して観なきゃいけない映画だ」というふう(笑)」(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

ビクトル・エリセ「ミツバチのささやき」

(あらすじ)スペインの名匠ビクトル・エリセが1973年に発表した長編監督第1作。スペインの小さな村を舞台に、ひとりの少女の現実と空想の世界が交錯した体験を、主人公の少女を演じた子役アナ・トレントの名演と繊細なタッチで描き出した。スペイン内戦が終結した翌年の1940年、6歳の少女アナが暮らす村に映画「フランケンシュタイン」の巡回上映がやってくる。映画の中の怪物を精霊だと思うアナは、姉から村はずれの一軒家に怪物が潜んでいると聞き、その家を訪れる。するとこそには謎めいたひとりの負傷兵がおり……。(映画.comより)

↓こちらから視聴できます。

チャールズ・チャップリン作品

宮崎駿:でも、チャップリンのものなんかはとても好きですね。観直したやつもあるし、それから観たときは大したことないと思ったけど、今観たら、たぶんこういう映画のほうがビビンッとくるんだろうっていうふうなものもチャップリンはありますからね。「ライムライト」なんか若いときはつらくてジジイのナルシズムなんて思ったりしましたけどね。でも、今は自分もジジイになってるから(笑)(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

僕がチャップリンの映画が一番好きなのは、なんか間口が広いんだけど、入っていくうちにいつの間にか階段を昇っちゃうんですよね。なんかこう妙に清められた気持ちになったりね(笑)。だんか厳粛な気持ちになったりね、するでしょう?あれが僕は、やっぱりエンターテイメントの理想じゃないかと思うんです。

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宮沢賢治「どんぐりと山猫」


トトロの原型となったのは、宮沢賢治の「どんぐりと山猫」であると、宮崎は語る。

宮崎駿:最初はなんとなく、バス停で待ってたらオバケが来たっていう、それだけ思いついたんですけどね。それで、どういうオバケだかわかんないから、
絵本で描いてるときは闇のような黒いもんが来て、ヒョッと見たら爪が生えてたとか毛が生えてたとかね、全体像を必ずしも見せなくていいと思ってやったんですけど、え~い面倒くさいってこう、このくらいのことしか思いつかないっていうふうにして描いたら出てきたのが、あのトトロだったんです。だから、革新をもって絶対こういう格好をしてなきゃいけないんだっていうものじゃなくて、原形になってるのは、やっぱり「どんぐりと山猫」を読んだときに、山猫が呆然と立っていて、その足下でドングリがキーキー言ってるっていうところなんですよね。それは宮沢賢治の解釈として間違いだと言ってる人もいるけれど、それはどうでもいいことで(笑)。そうやってイメージしたものが自分の中で強烈だったことは、もう間違いないですね。大~きくて、呆然と立ってるっていう。(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

サン=テグジュペリ「人間の土地」

宮崎駿が人生で最も影響を受けたと語るのがサンテグジュペリである。東洋経済で、評論家の呉智英と文学者の加藤博子は宮崎とサンテグジュペリの共通点を語っている。

呉:宮崎駿(1941〜/映画監督、アニメーター)は、サン=テグジュペリを尊敬している。

加藤:はい、『天空の城ラピュタ』の「君をのせて」という曲の作詞は、宮崎駿です。「あの地平線 輝くのは どこかに君をかくしているから」の「かくしているから」は、『星の王子さま』の「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」という言葉からきています。

呉:確かに美しい。

加藤:『人間の土地』(新潮文庫、1998新装改版、2012再改版)の表紙も宮崎の絵で、あとがき「空のいけにえ」も彼が書いています。(東洋経済:宮崎駿の人生を変えた「ある有名作家」の正体より)

加藤:人の役に立って死んでゆく喜びは、何ものにも代えがたい愉悦だというところでしょうか。金や名誉とはまったく関係なく、命がけで飛行機に乗って手紙を届けることに快楽を感じると表明してしまうところが、宮崎とサン=テグジュペリは共通していると思います。

呉:なるほど。

加藤:宮崎も飛行機が好きです。以前、宮崎はNHKのドキュメンタリー番組『世界・わが心の旅』で、サン=テグジュペリが飛んでいたフランスからアフリカに渡る航路をプロペラ機でたどるという、いわば聖地巡礼をしています。感動の涙を流してサハラ砂漠に降り立ち、もう自分はサン=テグジュペリみたいな理想を持つことはできない、しょせん地べたを這い回る白アリにすぎないとつぶやくのです。(東洋経済:宮崎駿の人生を変えた「ある有名作家」の正体より)

全文は下記より
toyokeizai.net

メビウス「アルザック」

「風の谷のナウシカ」は、メビウスの「アルザック」に大きな影響を受けて描かれた。メビウス本人との対談の際に、宮崎駿は自身がとてつもない影響を受けたことを語っている。
メビウスが日本のエンタテインメントに与えた影響に関しては、下記の記事が詳しいです。
http://www.albatro.jp/birdyard/illustration-art/arzach-moebius-art-comic/index.htmwww.albatro.jp

諸星大二郎「マッドメン」

マッドメン

マッドメン

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手塚治虫に「唯一、真似できない」と言われ、宮崎駿や庵野秀明にも多大な影響を与えたのが諸星大二郎である。いわゆるクリエイターズクリエイターだろう。「マッドメン」は特に「もののけ姫」のキャラクターデザイン、世界観に大きな影響を与えている。
 あらゆるクリエイターに大きな影響を与えた漫画家 諸星大二郎の凄さまとめはこちら
fc0373.hatenablog.com

リュック・ベッソン「グレート・ブルー」

「レオン」「フィフス・エレメント」のリュック・ベッソン監督の出世作。幼い頃からイタリア少年エンゾにライバル扱いされていたフランス少年ジャック。大人になったエンゾは、ジャックを探し出し再び勝負を挑むのだった。素潜りで深度を競うフリーダイビングにかける男たちの物語。(映画.comより)

宮崎駿:最近観たのでは「グレート・ブルー」っている、あれなんかちょっと驚きましたね。やっぱり半端じゃなく映画を作ってるっていうふうに思って。(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

↓こちらから視聴できます。

中尾佐助「栽培植物と農耕の起源」

 特にもののけ姫の作劇に最も影響を与えたといわれる中尾佐助の著作に宮崎は大いに影響を受けている。

読み進むうちに、ぼくは自分の目が遥かな高みに引き上げられるのを感じた。風が吹きぬけていく。国家の枠も、民族の壁も、歴史の重苦しさも足下に遠ざかり、照葉樹林の森の生命のいぶきが、モチや納豆のネバネバ好きの自分に流れ込んでくる。散策するのが好きだった明治神宮の森や、縄文中期に信州では農耕があったという仮設を唱え続けた藤森栄一への尊敬や、語り部の素質のある母親がくりかえし聞かせてくれた山梨の山村の日常のことどもが、すべて一本に織りなされて、自分が何者の末裔なのかを教えてくれたのだった。ぼくに、ものの見方の出発点をこの本は与えてくれた。歴史についても、国土についても、国家についても、以前よりずっとわかるようになった。

宮崎駿が影響を与えた作品

ジェームスキャメロン「アバター」

その世界観は、どこか宮崎アニメを彷彿させるという声も多い。という質問に対して

「僕はもちろん宮崎アニメのファンだ。だから、そう言っていただいてうれしいよ。まあでも、人の反応はそれぞれだから、みなさん、とにかく映画を観てください」。

ディズニー モアナと伝説の海

──クライマックスシーンも宮崎監督作品『千と千尋の神隠し』を連想させるところがありました。宮崎作品の影響を受けているのでしょうか。
マスカー 多少なりとも、ありますね。ボスのジョン・ラセターを含めて、われわれは宮崎作品が本当に大好きですから。彼の作品の多くに自然の力強さや自然を擬人化したような表現がありますが、そのような影響を受けたところが表れたのかもしれません。(ダイヤモンドオンライン)

テリーギリアム作品

 モンティ・パイソンのアニメーション担当で、映画監督となり、「未来戦争ブラジル」・「フィッシャー・キング」でカルト的人気を誇るテリー・ギリアムも宮崎駿の作品に影響を受けた一人だ。自身の作品の宣伝で来日し、爆笑問題太田光と対談した際に、宮崎駿の作品は、amazing。と一言で賞賛している。テリーギリアムは、とくに宮崎の作品の理屈では、理解できないところに魅力を感じているとのこと。もののけ姫のダイダラボッチの演出は圧倒的だったと興奮して語っていた。  

鳥山明「ドラゴンボール」

 鳥山明の「ドラゴンボール」初期が、宮崎駿の「未来少年コナン」に多大な影響を受けてつくられているといわれている。ジャンプの巻末インタビューで、鳥山明は、宮崎作品についてこう言及している。

ーおすきなアニメはなんですか
鳥山:アニメはほとんど見ていませんでしたが、ビデオで見た「未来少年コナン」には感激しました。以後わりと積極的に見るようになり、「ナウシカ」、「トトロ」、「銀河鉄道の夜」、「オネアミスの翼」などがすきです。

togetter.com

ジョン・ラセター作品

 「トイストーリー」シリーズなど言わずと知れた元ピクサーのジョン・ラセターも、宮崎駿から多大な影響を受けたことを語っている。ジョン・ラセターは、ジブリ作品のアメリカでの売り込みも務めるなど交友関係も深い。
 宮崎の「ルパン三世カリオストロの城」についてこう語っている。

「とにかくびっくりし、何度も何度も見ました。特にすばらしいのは、冒頭のカーチェイス。日本独自の節約の美学とクレバーさに興奮し、これぞ僕がやりたいことだと強く感じました」。トークショーでも、そのシーンが上映され「今見ても、『That's Awesome!(本当に素晴らしい)』としか言いようがない」と大はしゃぎだった。(映画.comインタビューより)

 ラセターは、宮崎作品の魅力は、静と動のコントラストであるとも語っている。

「宮崎さんの作品には“静かな時間”を祝福するような描写があります。それがあるからこそ、そのコントラストでアクションのシーンのスリルが増すのです。ここからはオタクとして話をさせてもらいますが(笑)、『カリオストロの城』の冒頭でフィアットがパンクし、(ルパンと次元が)ジャンケンをして負けた方がタイヤを交換するのですが、(次元が)タイヤを交換する間、(ルパンは)ゆっくりと空を見上げ雲を観察し、風が草をなびかせます。そして次の瞬間、急に別の車がやってきてカーチェイスが展開する。そのコントラストが最高です! (ピクサーを創設した)初期の頃、スタジオの重役からは『もっと早く描かないと、みんなポップコーンを買いに行っちゃうぞ』と言われたものですが、宮崎作品を観ていた私は『違うだろ!』と言いました(笑)。ピクサーの作品もまた特別であるのは、きちんとそうした瞬間を描いているからなのです」。(シネマカフェインタビューより)

ウェス・アンダーソン「ファンタスティックMr.FOX」・「犬ヶ島」

 天才的な画面レイアウトと色彩感覚、センスの塊で熱烈なファンがいるウェス・アンダーソン監督が、宮崎駿作品を知ったのは、自身初のストップモーションアニメ「ファンタスティック Mr.FOX」の制作中だったという。来日した際に、ジブリ美術館でDVD全作を買ったのだという。ウェス・アンダーソンは、当時のことをこう語っている。

その映画をつくっている間、宮崎監督の映画にどんどん影響を受けていく感じだった。でもその映画では、ストーリーがすでに存在している段階だったので、それほど影響は色濃くないけれど、その映画製作中に彼の作品をよく観ていたのは確かだ。そして『犬ヶ島』をつくっているときは、すでに彼の作品全てを熟知していて……何度も繰り返し観ていたからね。今作のほうが、より宮崎監督作品に影響を受けていると思う」。(シネマトゥデイより)

特に、宮崎作品の、静寂と自然の描写に影響を受けているとのこと。ただ、本人が最も衝撃を受けたのは、庵野秀明のエヴァンゲリオンであるとも語っていた。

あと、一番大きな衝撃を受けた作品が、庵野(秀明)監督の『エヴァンゲリオン』。僕に強烈なインパクトを残した。本当に大好きなんだ(シネマトゥデイより)

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