押井守と宮崎駿の超貴重な対談

 押井守と宮崎駿の貴重な対談をまとめてみる。当時の押井守の劇場長編初監督作「うる星やつら オンリー・ユー」に関しての対談である。

若かりし頃の宮崎駿と押井守

 宮崎駿の過去のインタビューなどをまとめた「出発点」にて、1983年公開の押井守、劇場用長編映画初監督作品「うる星やつら オンリー・ユー」に関しての両者の対談が載っている。

パロディというのは二番煎じでしょう

宮崎:まずパロディについてなんですけど、パロディというのは二番煎じでしょう、二番煎じで意味を変えるということですね、だから二番煎じに甘んじるけど、そのかわり違う見せ方をします、という、なんていうか、斬られて斬るというところがあるわけなんだけど、斬られていないと思うんですよ。設定を楽にしているという印象しかない。
押井:たぶん実写映画「卒業」のことをいわれていると思うんだけど……。
宮崎:いや「卒業」のということより、映像のひとつひとつなんです。たとえば宇宙船が下りてくるとか、デザインは違っていますけど。あるいは時計塔が出てきて、その中に見覚えのある歯車が回っていたり(笑)。それがパロディとは思えないから、むしろ設定を盗んだという感じしかしない。パロディにするなら、それは中途半端にやっちゃいけないことじゃないかと思う。もっと自分たちの映像を大事にしなきゃいけないと・・・・年寄りじみていますけど。それが随所にあって。
押井:ただ、シリーズのほうもそうなんですけど、ぼくも含めて演出はそれほどパロディを入れることを意識していなかったんです。ぼくがいつも考えているのは、映画的なセンスというか、アニメーションだけじゃなく、色んな映画で蓄積されてきたセンスとか、そういったものは反映させたいと考えているだけで、パロディとわかる形でパロディをやったというのはほとんどないんじゃないかと思うんです。パロディというのは本来(見る人が)元ネタを知らないと成立しないものだと思うんですけど……。(宮崎駿 「出発点」より)

 見覚えのある歯車とは、宮崎駿の「カリオストロの城」の時計塔のことだろう。

カリオストロの城

ディテールの甘さについて

 宮崎:キツイ言葉いっているかもしれないけど。ぼくはこういうことも気になったんです。ー部屋からみんな見ている、ああ戦争だなあ、おもしろいなあと。これ窓から見ているでしょう。テレビスクリーンじゃなかったと思うんです。ところが格納庫に入っている宇宙船のどこに窓があるんですか?格納庫の扉が開いたらその窓が宇宙船のハナ面だったとか…そういうことを大事にしなきゃいけないと思うんですよ。なんとなく、感じで映画を作っちゃいけないんで、その世界というものはドタバタでもちゃんと作るべきじゃないかな。(宮崎駿 「出発点」より)

一回やったことやりたくないですか?

 宮崎がこうした方が良かったという案に対して、押井がそれは、TVシリーズの第一話でやってるから、やりたくなかったと答えた時のエピソード。

宮崎:一回やったこと、やりたくないですか。
押井:やっぱりいやですね、
宮崎:オレ、何度でもやるけどな。手を替え品を替え(笑)
押井:手を替え品を替えならまだいいですけど、手を替えていなかったので、それがイヤだったんですけど・・・・。いつか宮崎さんが書かれていたでしょう。「スター・ウォーズ」がはやったときに、宇宙船がカメラをなめていくシーン、あっちでもこっちでもマネしはじめて。やる人間も見る人間もどっちもどっちだってぼくもそう思うんですけど。(宮崎駿 「出発点」より)

押井さんなら、次はもっといい条件で撮れるよ

宮崎:ところで、もう一本、劇場用の「うる星」作るんでしょう?
押井:まだ正式じゃないんですけど、話はあります。
宮崎:完成度が高いからいいんじゃなくて、熱気があふれていたほうがいいこともあるし・・・・。最初熱気でやって、次にはかならずクソっという形で開花するから、押井さんの場合でも、次はもっといい条件を取れると思うんですよ。スケジュールとかスタッフとか。それはなるべくもぎ取ったほうがいいですね。いずとなればスタッフにも遠慮しないで、死屍累々でもいいから・・・・・(笑)。
押井:そのへんがむずかしいですけれど。
宮崎:むずかしくてもやるんじゃないかと思うけどな。むずかしいですね、といっているからやるんじゃないかな。
押井:ぼくにとって次のが一本目という気持ちでやりたいです。自分としては何としてもリターン・マッチをやらずにはおかないという気持ちです。(宮崎駿 「出発点」より)

 対談の全文や、宮崎駿が、創作の極意、アニメーションとは一体なんなのか、手塚治虫と決別した理由など、全てこちらの宮崎駿の著作にすべてまとめられており、必見です。

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