芸人が語るダウンタウンの本当の凄さまとめ

 ダウンタウンに影響を受けて、尖ってました。のような薄い後輩芸人のエピソードは多いが、ダウンタウンの凄さを具体的に語っている芸人の声は意外と少ないのでまとめてみた。


爆笑問題 太田光

 かつて松本人志と犬猿の仲で共演NGだった爆笑問題太田光は、吉本興業 110周年特別公演『伝説の一日』でのダウンタウンのアドリブ30分漫才を見てその凄さを語っていたことを後輩の鬼越トマホークが暴露している。

俺らにはできないスタイルの漫才

金ちゃん:バカなフリして伝説の1日観ました?みたいな。そしたら、「観たよ、FANYで2,400円のチケット買って観たよ」って言って「凄いな!あんなに立ち話みたいな感じで漫才をやるっていうのが、俺らにはできないスタイルだからめちゃくちゃ面白かった、あれが本当の漫才のスタイルだな」って。やっぱり、いろいろあったんで、聞きづらかったんですけど、太田さんとかが観るぐらいの反響で。

東京03飯塚:シビれる話だなあ!!

小木:凄いよ!!!

金ちゃん:(二人になにがあったか)いろいろ知ってるから。ぐっとこみ上げるものが、凄く(太田が松本を)認めてましたね!

飯塚:へええ。

鬼越 坂井:ずっと漫才やり続けた爆笑問題さん的にもダウンタウンさんが漫才に帰ってきたことが凄く嬉しいって言ってました。(2021年9月 「ゴッドタン」より)

 
 おぎやはぎ、東京03、劇団ひとりが、このエピソードに真剣に感動している様子が、いかに太田がダウンタウンの凄さを語るというのが異例であることがよくわかる。

ナイツ塙

漫才を「作品」にまで高めてくれた。

ナイツ塙は、著書「言い訳」でダウンタウンの凄さとは、フリートークではなく、「ネタ」にこそあると語っている。

ナイツ塙:二人がすごいのは、やっぱりネタです。ダウンタウン以前の漫才は「こいつゴルフ好きなんです」とか「お前んところの嫁さんは恐ろしいからな」などフリートークの要素が少なからず入っていました。横山やすし西川きよし師匠もそうでした。昔は芸人がフリートークできる場がありませんでした。ネタ番組しかなかったので、それもありだったのでしょう。ところがダウンタウンがその型をぶち壊しました。ストイックにネタを作り込み、漫才を「作品」にまで高めてくれた。ドラマ、映画、音楽に並ぶようなエンターテイメントにしてくれたと言ってもいいと思います。(「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」より)

 ちなみに、ナイツ塙の「言い訳」は、M-1出場者のネタ分析や、関東芸人と関西芸人の言葉や文化の違いにより分かれるネタの傾向など、読み応え抜群です。

 吉本興業 110周年特別公演『伝説の一日』でのダウンタウンの漫才を見た塙はその凄さをこう語っている。

塙:何が凄いかというと、誰も傷つけてないんですよね。ダウンタウンDXとかひな壇で皆いる時はわりとさ、人の名前出したり、時事ネタとかいろいろ言うじゃん。なんかニュースの人を松本さんがオトす手法ってあるじゃん。でも漫才の時、全然それがなかったでしょ。本当に「発想」とイジるとしても浜田さんのこと。俺たち(ナイツ)とかもう何人出てくるかと(笑)不倫した芸能人とか、誰かが捕まった時とか「おし!」って思ってるからね。そもそもが、全然ちがう。(2022年4月16日『ナイツ塙の自由時間』https://www.youtube.com/watch?v=pEBYxxGJD9w

 そして、ダウンタウンのネタに同じく驚愕したと語っているのが、島田紳助である。

島田紳助


 島田紳助は、漫才コンビ「紳助隆介」として活動していた頃、ダウンタウン漫才を見て、コンビ解散を決断したという。

明らかに負けてる。これは、やったらいかんと。

紳助:うめだ花月の袖で、サブロー・シローとダウンタウンの漫才を見てたときに、「アカン」と。サブロー・シローにもダウンタウンにも明らかに負けてる。これは、やったらいかんと。醜態をさらすだけやと。すぐに(吉本)本社へ言って、(紳助竜介)辞めます、って。師匠のところに行って。だから、君らやで。引き金になったのは。
松本:ハハハ(笑)

ピカソの粋に入ってるやんか?

紳助:16ビートの間を減らして、一人がいっぱい喋るっていう漫才ブームが終わって、ダウンタウンが出てきた。ダウンタウンの漫才はテンポが遅かった。おもろいけど、これで売れるか?って疑問だった。本人目の前にしてるから、言うわけじゃないけど、一番おもろいと思うねん、今。ピカソの粋に入ってるやんか?ちゃんとできるのに、それを崩してリアリティをつくっていって、わざとリズム外すかっていう。松本のボケなんて、チェンジアップやんか?まっすぐ速い球投げれるのに、そこでワンポイントずらして投げる。そこで、「気持ち悪い笑い」が起きるやんか?ああいうのってすごく高度な技術やんか?俺は、あれ見た瞬間にダメや!って思ったんや。絶対辞めようと。こんなもんと比べられてやったら、芸能界で、お笑いの世界で、俺は生き残っていけへんと。比べられた瞬間に。だから!辞めなアカンと。

オール巨人

NSC1期生の発表会で、他と全然違った

巨人:NSC1期生の発表会があって、紳助と見に行きましたけど、他と全然ちゃいましたね。しゃべりはもちろん下手でしたけど、ネタの切り込み方がね。確かしょうもないネタでしたけど、紳助と目を見合わせて『これは売れるな』と言いましたねオール巨人が島田紳助さん、さんま、ダウンタウンのすごさを語る M―1審査員後任は千原ジュニア推し(2/3ページ) - サンスポ

誰がやっても普通にしゃべれたら、めちゃめちゃおもろいネタ

――なぜ売れると

巨人:直感やね。例えば歌なんかでも『この歌売れそうやな』ってあるじゃないですか。ネタ的には誰がやっても普通にしゃべれたら、笑いが取れるネタでした。めちゃめちゃおもろいネタがあったら誰でも売れるんですよね。おもしろくないネタをめちゃめちゃうまい漫才師がやってもおもしろくなれへんのですよ。一番大事なのはネタなんです。だから24時間お笑いのことを考えておきなさいと。お笑いは偶然できるものではない。偶然思いついたと思っても、それは24時間考えているから出てきたこと。オール巨人が島田紳助さん、さんま、ダウンタウンのすごさを語る M―1審査員後任は千原ジュニア推し(2/3ページ) - サンスポ

立川談志

 立川談志は、ごっつええ感じ終了後、松本人志が細部にこだわり企画したビデオ作品「HITOSI MATUMOTO VISUALBUM」を鑑賞し、賞賛の言葉を贈っている。

松本が支持されるということは、日本の文化のレベルが高いということ。

談志:見事ですよ!これは見事です!やっぱり、俺がやってることと同じ…って言ったら、あいつ(松本)は怒るかもしれないけどね。見事なイリュージョンやってる!

談志:注文はある。ほんの、わずかだけどね。それは彼も百も承知だと思うけどね。フィニッシュをどこかで決めてもいいんじゃないかと思うんだけどね。まあ、これはああいうものの宿命なんじゃないかと思うけどね。だけどね、長いとか色々あるけど、基本的には見事。

談志:ああいうものが、支持されているってことは、文化のレベルが高いと思ったの、日本は。俺、バカにしてた。俺以外のやつは全員バカにしてた。

紛争が、非常に不愉快な紛争ですよね?なんか、寿司つぶすとかね。あれ、やってて、よくわかるんです。本人も知ってるでしょ。不愉快なこと。愉快だったら、ドリフターズになっちゃうから。なにが一番いいたいかって、俺がすぱーんと見て、俺は間違ってないと思った。映画でこれに近いことを撮ってる人はいるかもしれない。でもここまで言葉として、不完全な言葉のやりとり。とってもよくわかるんですよ。

談志:いくらか俺の方が先輩だし、ものがわかってるから、余計に生きてるから、エールを送ってるけどね。本来ならね。エールなんて、送ってる場合じゃないんですよ。あいつ、つぶしにいく芸をやらなきゃいけないんですよ。

遺書

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水道橋博士

 浅草キッドの水道橋博士は、ビートたけしに憧れ、たけし軍団に入ったのだが、ダウンタウンと共演した際、あまりの凄さに圧倒され、25年間、共演を断り続けてきたことを著書「藝人春秋」で語っている。

客前で、他を支配する圧力が強い

芸人なら誰しも同じ舞台に立てば自明なのだが一瞬にして、それが理解できた。 彼らは若くして既に自分たちの「伝説」が始まっている、その確信が漂っていた。 かつて故・ナンシー関がダウンタウンを「(お笑いの能力の)地肩が強い」と評していたが、このコンビは客前(カメラ前)において、他を支配する圧力(この人が何か表現を発すれば面白いに決まっているという同調圧力)がお笑いとして強い。 これは同じ舞台(競技)を踏んだ芸人なら誰もがわかる皮膚感なのだ。 (「藝人春秋より」

当時、東京で始めたレギュラー番組『ガキの使いやあらへんで!!』の異次元レベルのフリートーク、そして『ごっつええ感じ』で90年代に週間単位で作り続けたコントのクオリティは今でも後進が凌駕できない高い壁として立ちはだかっている。(「藝人春秋」より)

 「北野武と松本人志を巡る50年」など、水道橋博士の名著「藝人春秋」はこちら

東野幸治

俺の世界線には、ダウンタウンって存在してないねん。

 高校生時代からダウンタウンと共演し、あまりの凄さに芸能界におけるダウンタウンという存在を頭の中から消していることを「酒と話と徳井と芸人 」で語っていた。

徳井:ラジオでも東野さん、言ってたじゃないですか?ダウンタウンは無いものだと考えてるって。
東野:そうそうそう。俺の仕事の地球上、世界線には、ダウンタウンって存在してないねん(笑)勝手に頭の中から、消して芸能界生きてると、こんな芸能界って楽なんやと。
徳井:あの東野さんでもダウンタウンってそんなにヤバいと思ってるんだと思って。俺らからしたら、20年くらい先輩なんで、そりゃ凄いじゃないですか?
東野:うんうんうん。
徳井:でも3年くらいですか?それで桁違いの感覚って凄いですよね。
東野:そりゃ凄いよ!だから、もう圧倒的やから。

東野:吉本に多額の収益をもたらしてるやん?作品もしかり、みんな気づいてないけど、NSCの入学金って、ダウンタウンさんのギャラやからな。ダウンタウンさんの頑張りによって1年間1億~2億があたり前に入ってきてるしさあ。それが20年っていったらな。だから、後にも先にもそんな存在は「売上」っていう面では。

東野:さんまさんも凄いけど、さんまさんの凄さって、TVで面白いことをやり続ける凄さやん?ダウンタウンさん、特に松本さんはサザンオールスターズ的なところあるやん?曲も作るし、詩も書くし、歌うし。

東野:よく会議とかしてるじゃないですか?ごっつの会議とか。どうしようどうしようってなってる時に、急に松本さんがぽろぽろぽろっていったことがものすごい面白いんですよ。自分が何か言うことより、絶対面白いから、何も言いたくなくなってくんねん。で、スピードが凄いねん。ほんで、1時間半ぐらいの会議が終わった後、いっつも悲しい気持ちになって帰るから、何回か車で事故りそうになったもん。すみませんね。ほんと。なかなか(松本さんに)会えへんから。

キングコング西野亮廣

 キングコングの西野亮廣は、2020年4月30日、「西野亮廣エンタメ研究所」で、松本人志は、万人に支持されるハードを生み出している点が、他の大物芸人と一線を画する点であると語っている。

万人に支持されるハードをつくっている

西野:他の大物芸人さんと、松本さんって何が違うんだろうって考えた時に、一番は、ハードをつくっているということですね。皆せっせとソフトを作っているのに、例えるならドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーを作っているのに、松本さんだけファミリーコンピュータを作ってしまったということです。そして、「ハード」という例えが暗に発信しているメッセージは、「ソフトを作るならこの差込口に合うようにお願いします」ということで、みんなその口にならざるを得ないということです。それでご本人は、そういうハードを作りながら、スーパーマリオ的なソフトを作られるわけじゃないですか。

西野:もう一人で任天堂みたいなことをずっとされていると。『大喜利』にしても、『すべらない話』にしても、ハードを作る人は過去にもいたのですが、松本さんのハード作りで、本当にすごいなあと思うところがあります。

松本が発明したフリップ大喜利の凄さ

セット費がかからないということです。大喜利はフリップとペンでいけるし、『すべらない話』はサイコロ、「写真で一言」なら写真です。セット費がかからないので、若手ライブでも引用されるし、お笑いが好きな中学生や高校生、父ちゃんも母ちゃんもプレーできます。本当に、ファミリーコンピューターみたいなことをされています。

セット費の延長になるのですが、プレーに必要なものを極限まで減らしているので「古くならない」ということです。古くならないということは、本当に大きいんです。フリップの大喜利って、古くなっていないじゃないですか。落語や漫才ぐらいの伝統芸能感がありますよね。操作感という言い方をしたりしますが、スマホ画面を横にスライドする時に、若干の引っかかりがあったほうがユーザーには喜ばれたりするんですね。

ガチャガチャなども、すぐに出てくるのではなく、ガリッガリッガリッと、3回くらい回して出てきてくれた方が、なんか嬉しいじゃないすか。それに近いものがこの大喜利にもあって、フリップをひっくり返す時に「どうだっ」という快感がある。つまり、なぜかやりたくなるんです。これは、子供の時からずっとそうなんです。

かまいたち

すべての挙動が『笑い』のため

濱家:全部お笑いっていう感じがしてて。全部お笑いのテクニックみたいに見えちゃって。松本さんが喋る時に『うう……ス…スタジオの』とか、ホンマは1言目の1文字目に『スタジオの』って言えるんすけど、ちょっと『うう…』って言うことによって時間置いたり、その間にみんなが頭の中整理して、こっち向いて、聞きやすい状態になってるように仕向けてたりっていうのは、絶対俺あると思ってんすよ。勝手に思ってるだけなんすけど(2022年3月22日 NHK 『笑いの正体』より)

ウケるシステムを発明して、すぐ捨てる

山内:ちょっと前ですけど、びっくりしたのは松本さんがエピソードトークして『めっちゃハゲてんねん』『ホンマにハゲてんねん』と言って、で『ハゲてる人想像してみて。それよりハゲてる』って言った時に、(話を聞いている)こっちの頭まで使ってくんねやっていうのはそん時びっくりして。確定のウケるシステムじゃないですか。で、びっくりしたのにそこまで長く使わなかったんすよ。いやいらないなら欲しいなって(2022年3月22日 NHK 『笑いの正体』より)

ラリー遠田(お笑い評論家)

 吉本興業 110周年特別公演『伝説の一日』でのダウンタウンの漫才を見たラリー遠田はこう絶賛している。

フリートークと漫才の境界線を限りなく曖昧にした

今回のダウンタウンの漫才を見て、私が何よりも感動したのは、彼らが演じていたのが紛れもない「漫才」だったということだ。ダウンタウン以降、フリートークと漫才の境界線は限りなく曖昧になっている。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』で彼らが見せていたフリートークは、その場で作り上げる即興漫才のようなものだった。(2022年4月9日 AERA dot.よりhttps://dot.asahi.com/dot/2022040800007.html?page=2])

今回の漫才でも、ほとんど打ち合わせや事前準備のようなことは行われていないようだが、「クイズを出し合う」というネタの骨組みはしっかりしていた。ところどころで脱線を繰り返しながらも、その主題を軸にして話が展開していく。松本の恐ろしいほど切れ味鋭いボケと、浜田の緩急自在のツッコミ。見る側がそこに安心して身を委ねられる、至福の30分間だった。(2022年4月9日 AERA dot.よりhttps://dot.asahi.com/dot/2022040800007.html?page=2])

漫才、コント、大喜利……各分野でダウンタウンおよび松本人志が新しく発明したものを数え上げればきりがない。誰よりも伝統に反発していた2人が、新しい笑いの伝統を作ってきた。そんな彼らはこの歴史的な舞台に堂々と「新ネタ」を持ってきた。ダウンタウンの革命は今なお進行中なのだ。(2022年4月9日 AERA dot.よりhttps://dot.asahi.com/dot/2022040800007.html?page=2])

ひろゆき(西村博之)

ひろゆき:「すべらない話」って芸人さんいっぱい呼んできて、面白い話をしてくださいって振るじゃん?で、あれって司会はできるんだけど、松本人志さんは司会でありながらサイコロの中に自分の名前があるのよ。毎回出続けて、毎回サイコロで当たったら面白い話をしなきゃいけないって、めちゃくちゃなリスクなのよ!- YouTube

ひろゆき:『松本人志のすべらない話』だよ!どんな状態でも面白い話は俺はするよっていう覚悟があんのよ。あれ、天才っていう言い方するんだけど、僕は天才というより覚悟だと思うんだよね。毎回、面白い話ができるっていう覚悟がある人は、世の中たぶんいないと思うのよ。- YouTube