松本人志の黒歴史とも呼ばれる映画への挑戦。2007年「大日本人」から2013年「R100」まで、4作品を監督し興行的な成功はなく、海外の映画祭でも評価を得られなかった。そんな松本作品に対する批評をまとめてみる。
みうらじゅん
松本人志が「お笑い」に関して、最も信頼できる批評家は、ナンシー関とみうらじゅんと公言しているように、みうらは、ダウンタウン松本をデビュー当時から、天才だと賞賛してきた。みうらは、松本人志作品「R100」について、こう評している。
その魅力がすぐに分かりました
みうら:実に面白かったです。(世間では理解できない、という声もあるようですが、)ボクはタランティーノやロドリゲス監督作品が大好きだから、その魅力がすぐに分かりました」とみうらさん。賛否両論ある同作品の感想については、平安時代末期から鎌倉時代に活躍した“天才仏師”運慶を引き合いに出し、「リアルを超えた作風で天才と呼ばれた仏師・運慶の作品の少なさを見てもわかるように、(昔から)突飛な人って世間が対処に困るもんです」と語る。(東京ウォーカー インタビューより)
町山智浩
映画評論家の町山智浩は、ツイッターで、松本人志の「大日本人」のアメリカでの評価はどうだったのかという問いに対して、悪くなかったと回答している。
僕は嫌いではありません。
正直、「大日本人」のアメリカでの批評は悪くなかったです。僕は嫌いではありません。
正直「大日本人」のアメリカでの批評は悪くなかったです。僕は嫌いではありません。 RT @soMpoM: 松本人志監督は自身の映画について「海外では高評価」と興奮して語ってらっしゃいますが、町山さんからはどう見えますか?
— 町山智浩 (@TomoMachi) June 7, 2011
岡田斗司夫
オタキング岡田斗司夫は、松本人志作品に処女作「大日本人」から好意的であり、「R100」については、ツイッターでこう発言している。
世間では評判最悪だそうです。わかんないなー。どこがダメなんだろう?
松本人志監督の『R100』、やっと見ました。
— 岡田斗司夫@オタキング (@ToshioOkada) October 16, 2013
途中までは「つまんないなー」って正直思ってたけど、大地真央が出たあたりからもう大爆笑!
最後まで楽しく見れました。
でも世間では評判最悪だそうです。
わかんないなー。
どこがダメなんだろう?
ホリエモン(堀江貴文)
正直、ぜんぜん面白くなかった
堀江:正直、ダウンタウンの松本さんの映画は全然おもしろくなくて。聞く所によると本当に吉本興業は松本さんの映画で結構損をしてるらしいと聞いたりもするんですけど、まあ見る人を選ぶ映画だと思います。僕はちょっとよくわかんなかったんですけれども。(【ホリエモン切り抜き】松本人志の映画について..忖度無しでぶった切る!!【堀江貴文 ダウンタウン】 #shorts - YouTube)
箕輪厚介
「松本人志が映画を撮る」ということに松本自身が囚われすぎた
箕輪:勝手な分析だけど、松本人志が映画を撮るっていうものに、松本さん自身が囚われすぎた気はするよね。囚われすぎて、お笑いを扱ったり、逆に囚われすぎて囚われないように撮ったりしたんだけど。やっぱり松本人志がどんな映画を撮るんだ?っていうことが、純粋な面白さを追求するっていうことの邪魔をしている気がするけど。(【箕輪厚介】松本人志の映画について【インスタライブ】 #切り抜き #箕輪厚介 #松本人志 #映画 #歴史 #ビートたけし #監督 #お笑い - YouTube)
箕輪:たけしさんとか、最初は急遽、監督になったじゃん。たけしが何をどう撮るんだっていうことに言い訳があったと思うんだよね。何か急遽撮らされたっていう。満を持して撮るっていう風になるとみんな松本人志はどんな映画を撮るんだって。松本さんの世界をみんなスタッフが応援するっていう座組だから。難しいと思うんだけど。(【箕輪厚介】松本人志の映画について【インスタライブ】 #切り抜き #箕輪厚介 #松本人志 #映画 #歴史 #ビートたけし #監督 #お笑い - YouTube)
竹熊健太郎
「サルでも描けるまんが教室」などで知られる竹熊健太郎は、松本人志の「大日本人」を駄作とも傑作とも凡作ともいえないと評している。
駄作とも傑作ともいえない。
駄作とも傑作ともいえない。かといって凡作でもない。なんとも言えない。その意味ではこんな映画見たのって初めてであります。ダウンタウンの漫才やしゃべくりを見ているこっちとしては、100%ピュアモルツな「松本人志の世界」に違いなく、その意味での完成度はとても高かったと思います。(たけくまメモ「ようやく「大日本人」見たけども」より)
松本のボケは、浜田のツッコミがあって初めて生きる
ただ、えんえんと続く「ボケ」の映像を見ているうちに、「浜田はどこにおる?」と思ってしまったのも事実。これまで、あまり浜ちゃんのことを面白いと思ってなかったんだけど、松本のボケは、浜田のツッコミがあって初めて生きるのだなあ、という事実を思い知らされました。(たけくまメモ「ようやく「大日本人」見たけども」より)
ボケとして隙がなさすぎ。観客はツッコミようがないんです
なんというか、ボケとして隙がなさすぎ。観客はツッコミようがないんですよ。「面白い」とか「つまらない」とか、観客のどんな反応であっても松本にはたぶん折り込み済みで、「俺は俺やからな」と、「自分の世界」に対するゆらぎが微塵もない。松本だけが舞台に出てきて、完成度がやたらと高いボケを2時間聴いていた感じであります。(たけくまメモ「ようやく「大日本人」見たけども」より)
かわら長介
ダウンタウンDXなどの放送作家で知られるかわら長介は、松本人志の「大日本人」に関して、仲間として批評しづらいけれど、松本に向けてどうしても書かなければならないとブログに長い感想を綴っている。
僕だけが書けることを書かねばならない義務がある
・・・これを書くには少なからぬ覚悟が要る。その殆どは勿論対松本人志であるが、それがどの程度で、如何なるものかは、例えば不遜や非礼を感じながらそれでも書くということである。
更にこの映画には僕が長年一緒に仕事をして来た人達が深く関わっている。中でも‘放送作家’たち。倉本美津留、高須光聖、そして、出演もした長谷川朝二くん。羨望はある。そして、この映画について彼らが書けることは間違いなくあるだろう。しかしこの映画を評しようという時、恐らく彼らの立場は微妙だ。だが僕は彼らほど微妙ではない。それは有り難いことでもあり、その権利を行使しなければいけないという事でもある。
僕は、彼らには書けない、僕だけが書けることを書かねばならない義務がある・・・(かわら長介 たらくだ堂より)
笑いは随所に込められているが、それが物語の結末に向かって収斂していない
※終った。終ってみて、いや、書いている途中から、これは「映画評」ではないなと思った。これは、僕の心中吐露、ま、勝手な感想文だ。
※そして、この映画を総括するなら、問題点はふたつ。「Qの存在とそのことから来る松本人志の演技量の少なさ」。そして「笑いは随所に込められているが、それが物語りの結末に向かって収斂していない」ことだ。この映画はまぎれもなく松本人志の映画であるが、松本人志がテレビを出てまで作った映画だという価値を僕は見つけ得ないのだ。
※勿論、僕は次回の松本監督作品に(偉そうに)期待する。だが、もっと本音を言えば、結局、そしてまたしても「松本人志がテレビでコントをやる日」を待望するのみだ。(かわら長介 たらくだ堂より)
北野武
同じ芸人として、映画を撮り始め、日本では評価されなかったが、世界的評価を得た北野武は、松本人志の映画に関して「ニュースキャスター」でこう評している。
映画はちょっと下手だと思うけど。
たけし:ただ、映画はちょっと下手だと思うけど。映画が下手なのか、俺がついていけないのか。あと一般の人もついていけないのか。当たっていないん。でも、もしかしたらあと何年かして松本人志の作った映画はすごかったって言われる時代が来るかもしれないよね。そうしたときには俺の感覚が違ってたんだって思うだけだけど、そのときはたぶん、俺はくたばっているから。いないと思うから、今のとこあんまり心配してないけど」と話していた。
ライムスター 宇多丸
ライムスター宇多丸は、「ウィークエンド・シャッフル」映画批評コーナーで、品川庄司の品川などと比べ、松本人志の映画は、心底期待して観に行くが、期待はずれに終わっていると語っている。
何か面白いことをやってくれそうな期待は心底ある。
やっぱ、松本さんっていうのは、大日本人っていうのは少なくともお笑い芸人ならではの、なにか面白いことをやろうという、新しいことをやろうという、その志。には溢れてる。文字通りね。僕はやっぱり松本さんの次回作が作られるんであれば、やっぱり同じようにそれなりの期待を持って、これ僕毎回そうなんです。前作にしろ今作にしろ心底期待を持って行ってるんです。全く、同じ。
ストーリーの推進力がないし、興味がない
宇多丸は、松本人志の傑作コント作品「VISUALBUM」を例に出し、松本の本質は、アイデアとディテールの細かさにあり、話をまとめるところにはなく、劇映画には向いていないと評している。
宇多丸:例えば不動産屋に行ってさ、浜田さんとやりとりして。あれは俺も好き。その、やりとりが面白いんですよ。で、最後は結局部屋に連れてって、窓をガラッて開けて終わるんだけど、「そこは別にどうでもええやん」っていうさ。「今までで十分面白かったでしょ?」「ああ、面白かったです」っていうそれはね、いいんですいいんです。コントならいいんです。ただそれ、せいぜいもって30分ですよね?つまり、お話を語る気がない、アイディアとディティールを細かくしていくっていう人なんだからやっぱりね、資質としては映画向きじゃあないんだよね。
立川談志も絶賛した松本人志の傑作「VISUALBUM」はこちらから
井筒和幸監督
映画監督の井筒和幸は、松本人志監督の「さや侍」について、こう評している。
彼に限らず誰のでも、見る前からわくわくしたためしがない
お笑いタレントの作ったモノは彼に限らず誰のでも、見る前からわくわくしたためしがない。
藤沢周平のクソがつくようなまじめな時代劇を作っている映画家や山田洋次さんは見ないほうが身のため。武士の一分さえ蹂躙される恐れがある。吉本芸人得意のすべらない話ならぬ「すべる芸」に延々つきあって三十日の業とやらを見ないことには映画は終わらんが、1日2日で若君がすぐ笑うようでは後がない。
藤沢周平も真っ青な苦痛ギャクに1時間半つきあうには切腹以上の忍耐が要る。主人公をやらされた素人さん、侍を演じる暇はついにナシ。哀れ、鞘だけ侍。芸の細かい芸人は腹でも切れってことか。芸人たちが映画を作ると見事に笑えない。それが空しい、つらい。(週刊現代2011年7月9日号より)
菊地成典
ジャズミュージシャンで、独特な視点での映画批評でも知られる菊地成孔が、TBSラジオ『粋な夜電波』で、松本人志監督作品について語っていた。
『R100』、よかったですよ。
菊地:『R100』、よかったですよ。ただ、こう佐藤江梨子さんのボンデッジ姿でキツい責めにあって燃え上がりたいっていったような殿方には、全く無効な映画ですけどね。これはあの、松本監督の腕が悪いとかそういうことでは一切ありませんで。一切ありませんっていうか、そこを狙ってると思うんですけども。
また、菊地成孔は、「さや侍」の音楽については絶賛している。
中村うさぎ
びっくりするほど、おもしろくなかった。
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