ウォン・カーウァイの『天使の涙』を再見。やっぱり僕にとって最高の映画だ。
そもそも僕がウォン・カーウァイを知ったきっかけは『恋する惑星』を賞賛するタランティーノの言葉だった。
個人的分析によると、僕はこの映画を愛している。僕は自分が泣いているのに気づいた。別に人を感動させようとして作られた映画じゃない。泣かせるようなシーンがあったわけでもない。ジョークに引っ繰り返るほど笑わされたわけでもない。じゃあなぜかって? それは……ちょっと自分がゲイになったような気がしたけど……それは、こんなにも僕がこの映画を愛してるってことが嬉しすぎて、泣いたんだ。(場内爆笑&拍手)」
別に人を感動させようとして作られた映画ではないのに、愛しているというのは僕の中では断トツで『パルプ・フィクション』だ。わけのわからない会話、意味の無いエピソードの多いこの映画。もちろん僕はこの映画の内容に感動したわけではない。だが理由も分からず好きなのだ。
そんな敬愛するタランティーノがこんなに言ってるなら観なきゃしょうがねえよ!ってなわけで僕は『恋する惑星』を観た。とにかくブットンだ。動きまくるカメラ、延々と繰り返される音楽、ちょっと抜けてるキャラクター、全てが自分のツボだった。正直、観る前はウォン・カーウァイという作家がゴダールやらヌーヴェルバーグの系列にあると思っていた。しかし、映画が始まってすぐに気づいた。これは違う、全然ちがうと。ゴダールの映画のようなスノッブ臭が全く無いのだ。
ストーリー上、もともと『恋する惑星』の一部であったのが『天使の涙』である。『恋する惑星』のように二部構成ではなく、単体の恋愛群像劇といった感じだ。殺し屋、エージェント、口の聞けない男、それぞれが出会いと別れを繰り返す。
5歳の時に期限切れのパイン缶を食べて以来、口がきけなくなった男を演じるのが金城武。彼のキャリア最高演技といわれているだけのことはある。喋れないという設定の中、表情、動き、モノローグ全てパーフェクトだった。とにかく金城武が愛おしく、孤独な彼の幸せを願ってしまう。
ラスト、初恋の人に会うも、完全に忘れられていた金城武が出会うのが、エージェントのミシェル・リー。二度と出会うことはないと思っていた女。出会いと別れは永遠に続くが、彼女をバイクに乗せて走る一瞬は永遠のよう。
エンディングの曲はFlying PicketsのOnly Youだ。
上の窓から外を見ていると
なんかラブストーリーみたいだ
僕の声は聞こえる?
昨日帰ってきたばかりなのに
君が遠くに離れていくようだ
そばにいて欲しいのに
僕はただ君に愛されたかっただけ
もう少し時間が欲しかっただけ
それにずっと分かっていた
僕には君しかいないってこと
男と女。いつも時間は少し足りない。
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