新海誠監督作『すずめの戸締まり』岡田斗司夫の批評まとめ

新海誠監督作『すずめの戸締まり』の岡田斗司夫の批評をまとめてみた。

Febriより

岡田は『すずめの戸締まり』を88点と今どきアニメの頂点だと高評価しながらも、新海誠から狂気が全くなくなってしまったことと、リアリティの無さが残念だと語っている。

新海誠はメジャー作家への自分自身の改造に成功した

 岡田は、『すずめの戸締まり』の批評の前に、新海誠の才能あふれる作家としての処女作『ほしのこえ』から『君の名は』で作家としてではなくメジャー作品を撮れる監督へと自分自身を改造した歴史に触れている。

岡田:『君の名は』はスピルバーグにとっての『JAWS』ジョージ・ルーカスにとっての『スター・ウォーズ』みたいなもので、メジャーへの大転換点ですね。作家的なこじんまりとした人になるのかなと思ったらメジャーできるじゃん!凄いじゃん!って。メジャーになると作家性はやや減るんだけど、予算使えるから凄いスケールの大きい作品が撮れて。(2022年11月20日すずめの戸締まりは何点? 僕の映画採点評 2022秋 岡田斗司夫ゼミ#464(2022.11.20) - YouTube

岡田:『天気の子』あたりからね、作家性を意図的に我慢して、ずらして国民作家へと自分自身を魔改造しているような気がするんですよね。(2022年11月20日すずめの戸締まりは何点? 僕の映画採点評 2022秋 岡田斗司夫ゼミ#464(2022.11.20) - YouTube

もともと新海誠は作家性の強い監督でしたもんね

国民映画として大成功だが、新海誠の狂気はどこにも無い

岡田:(すずめの戸締まりは)ほとんどの日本人にとってぴったりの映画。『鬼滅の刃』とかと同じですね。僕にとっては、新海誠は自分を魔改造して国民作家にしたのは大成功だなあと。でも新海誠の狂気、頭のおかしい部分はもうどこにもないなあと思っちゃうんすよ。頭のおかしい作家の方が、僕は好きなんですよ(笑)宮崎駿とか庵野秀明とか『HUNTER×HUNTER』の冨樫さんとか、藤本タツキとか。(2022年11月20日すずめの戸締まりは何点? 僕の映画採点評 2022秋 岡田斗司夫ゼミ#464(2022.11.20) - YouTube

新海誠ファンの成田悠輔も同じことを言ってましたね。全方向に気をつかった映画だと。

ストーリーは完全に『うしおととら』の男女逆転もの

岡田:ストーリーは完全に『うしおととら』ですね。『うしおととら』のことを僕は日本全国妖怪ナンパ紀行って言ってるんですが、妖怪を退治するために日本全国行って、その土地の女の子に好きになってもらって、最後どうなるのかと言うとラスボスの凄え怖い狐の妖怪みたいなやつとっていう話なんですけど。それを主人公を女の子にしたような話。いろんな場所の傷ついた人を救いながら日本全国の戸締まりをしていくっていうようなものだと思ってください。(2022年11月20日すずめの戸締まりは何点? 僕の映画採点評 2022秋 岡田斗司夫ゼミ#464(2022.11.20) - YouTube

『うしおととら』

 岡田斗司夫がかねてより『少年漫画の頂点』と大絶賛している漫画である。

内容:蔵の中に、500年も閉じこめられていた妖怪。ヤツはその昔、人を食い、悪業の限りを尽くしていた。ひょんなことからヤツを解き放ったのが、蒼月潮(あおつきうしお)。うしおはヤツにとらと名づけた……。うしおととらの伝説が、いま、幕を開ける!(BOOKデータベースより)

不満点はリアリティの無さ

岡田:不満点は山のようにあります。とにかくリアリティが無い!綺麗事が多くてリアリティが無い。すずめの体力が無限なんですよ!(笑)こんなことある?とにかく山の上の方に何かがあって走っていって間に合わない!っていうシーンが多いんですよ!未来少年コナンより体力あるんですよ(笑)嘘つけ!!なんですよ。背景をリアルに描けば描くほどこういう嘘ってバレちゃうんですよ。山の上をのぼるのが一回ならいんですけど、何回も何回も登るんですよ!(笑)普通の女子高生っていう設定なのにこんなことできねえよ!!って(2022年11月20日すずめの戸締まりは何点? 僕の映画採点評 2022秋 岡田斗司夫ゼミ#464(2022.11.20) - YouTube

たしかに最初からすずめは体力無尽蔵の超人でしたね(笑)

ダイジンの痛みに全く共感が無い

岡田:ダイジンっていう猫みたいなやつが出てくるんですけど、これが地震とかを止める要石なんですね。それを抜いちゃったのでっていうのが騒動の発端なんですけど。人柱として、地震とかを鎮めるためになってくれてるんですけど、その痛みに全く共感がないんですよね。主人公が好きな男の子が人柱になってしまった時はあんなに悲しんで助けるためにって頑張るのに、猫(ダイジン)が代わりにもう一度人柱になってくれるのは、もう無視なんですよ。(2022年11月20日すずめの戸締まりは何点? 僕の映画採点評 2022秋 岡田斗司夫ゼミ#464(2022.11.20) - YouTube

ダイジンをすずめの母親にすべきだった

ダイジンの痛みから観客の目を逸らすために、過去の自分との出会いみたいなエピソードをねじこんでるんですよね。2つのダイジンのうちどちらかをですね、すずめの母親にすべきだったと僕は思うんですけど。初期設定だったらそうなってたのかもしれないけど、それぐらいのことをやらないと、つまり「自分はもう一度母親を失ってでも、好きな人と一緒にいたいのか?」という、いわゆる何かのためには何かを犠牲にしなければいけないという。そういう痛みを物語作家は作品に込めないと思想性は出ないんですよね。(2022年11月20日すずめの戸締まりは何点? 僕の映画採点評 2022秋 岡田斗司夫ゼミ#464(2022.11.20) - YouTube

面白かったが「思想」はなにも感じなかった映画でしたね