あらゆるクリエイターに大きな影響を与えた漫画家 諸星大二郎の凄さまとめ

 あらゆるクリエイターに大きな影響を与えた漫画家 諸星大二郎の凄さについて、まとめてみた。

諸星大二郎を賞賛する声

庵野秀明(映画監督)

『映画ナタリー』より

 

庵野:『暗黒神話』って今考えると、元祖 セカイ系 ですね。僕は諸星先生の漫画で自分の基礎ができている自覚がありまして。そういった意味でも、自分が セカイ系 へ行くことになったのは『暗黒神話』があったからだと思っています。ひとりの少年が世界を背負う=アートマンになる。ああ、そういうのもありなんだって、ものすごく惹かれました。(画楽.mag 2014年 庵野秀明と諸星大二郎の対談より)

庵野:前の劇場版のラストシーンのイメージは『暗黒神話』のラストの馬頭観音像の印象を引きずってますね。像の前に主人公がたたずんでいるシーンです」
 ―あのエヴァのラストの海のシーンは『マッドメン』のラストシーンの雰囲気と共通したものがありますね。(画楽.mag 2014年 庵野秀明と諸星大二郎の対談より)

庵野:そうですね。あ、それと前のエヴァの時、綾波の顔がギューと伸びるのは、僕の中では『妖怪ハンター・海竜祭の夜』のあんとく様ですね。あんとく様の破壊力はすごかったです。あれに遭遇したら “お許しを〜!” ってなりますね。あれは本当に怖かったです(画楽.mag 2014年 庵野秀明と諸星大二郎の対談より)

『妖怪ハンター』海竜祭の夜
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』諸星の影響を受けたシーン

宮崎駿(映画監督)

朝日新聞デジタルより

 駆け出しのライターだった竹熊健太郎氏が、とあるムック本で諸星大二郎特集をすることになり、宮崎駿にインタビュー依頼をしたときに、取材嫌いな宮崎がノリノリで2時間喋り倒したという衝撃のエピソードが残っている。

当時「天空の城ラピュタ」の追い込みで修羅場の真っ只中だった宮崎駿は、竹熊氏の依頼電話に対して「もう断る時間ももったいないので、とりあえず仕事場に来てください。少しだけ時間を取りましょう」と言われたそう。こわごわ仕事場に出向いた竹熊氏は、そこで宮崎駿から、延々二時間以上にわたって、いかに諸星大二郎が偉大であるかについての大演説を聞かされるはめになったとか。(2021年8月17日『遊刊エディスト』よりhttps://edist.isis.ne.jp/dust/manga34_moroboshi/

筒井康隆(小説家)

NHKより

 小説家の筒井康隆は、諸星大二郎の初期作品である『生物都市』の出来に驚愕したと語っている。

筒井:週刊誌「少年ジャンプ」には「手塚賞」というマンガ賞があり、手塚治虫氏が委員長で、ぼくも選考委員のひとりである。委員の顔ぶれのためか、SFマンガの優秀なものが多く投稿されてくる。この「生物都市」は、ほとんど全員一致で入選にしたものだが、あまり面白いので「SFに似た話があるのではないか」という質問がぼくに集中したくらいだ。(筒井康隆『'74日本SFベスト集成』作品解説より)

『生物都市』より

筒井:これはおそろしい話である。たとえこの話を小説にしたところで、このマンガの迫力には及ばないだろう。絵の強みである。サルバトール・ダリの絵にストーリーが付け加わったかのような、不思議な喜びと驚きをぼくは感じた。(筒井康隆『'74日本SFベスト集成』作品解説より)

 生物都市が収録された短編集はこちらから

諸星大二郎の創作哲学

異様なものの中に、見たことのあるものが含まれているから怖くなる

——しかし、これだけ多様なジャンルで、数多くの作品を描いていらっしゃると、「これは前にも描いた気がする」と思うことはないでしょうか?

諸星 それでいうと、大きな顔をした女は何回も描いてきたから、似たものを知らず知らずに描いてしまっているかもしれない。

——カラダは怪物なのに、顔は人間という造形のキャラクターは、諸星作品の代名詞でもありますね。

諸星 気が付くと、大体そうなってしまうんですよ。

——それはなぜだと?

諸星 一度も見たことがないものだけで怪物を作ったとしても、それは怖くないと思うんですよね。異様なものの中に、見たことのあるものが含まれている。怪物のカラダに人間の顔というバランスだから怖くなるんじゃないでしょうか。
(2021年10月9日異端の漫画家・諸星大二郎が自作を語る より)

オチは重視せず、絵のイメージが最優先

——先生の漫画はオチがなく、謎が謎のまま終わることが珍しくない。それが商業誌では決して多くはないというか。作家によってはオチを印象づけるために結末から逆算して描く人もいるくらい、読後感は商業誌では重視されるので、必然的に先生の作品が異端になっているのだと思うんです。

諸星 オチですか。確かに、オチを決めて描くっていうことはないかな。変なものが好きではあるから、ストーリー自体は宙ぶらりんのままにしてしまうことがけっこうありますね。

——では、作品の中で重視している要素は?

諸星 絵のイメージでしょうね。描きたい絵が思い浮かんで、そこに向かって描いていくことが多いと思います。(2021年10月9日異端の漫画家・諸星大二郎が自作を語る より)

 上記の諸星大二郎インタビュー全文はこちらから
https://news.biglobe.ne.jp/trend/1009/spl_211009_6654042017.html


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