とうとう公開された宮崎駿監督作『君たちはどう生きるか』。宣伝ゼロでベールに包まれた作品が公開されるやいなや、真っ二つに分かれる評価。
そんな『君たちはどう生きるか』を識者はどう評価したのか?まとめてみた。
- 岡田斗司夫(評論家)
- 村上隆(現代美術家)
- 東浩紀(哲学者)
- 高橋源一郎(小説家)
- 川上量生(KADOKAWA取締役、株式会社カラー取締役)
- 柳下毅一郎(映画評論家・特殊翻訳家)
- 高橋ヨシキ(アートディレクター・映画ライター)
- 奥浩哉(漫画家)
テキスト
岡田斗司夫(評論家)
腰抜けるほど凄いから、絶対に見たほうがいい
岡田は本作を絶対に見に行った方がいいと薦め、特に冒頭シーンの神がかった演出には腰を抜かしたと言う。
岡田:冒頭のシーン映画始まって5分か10分は腰抜けるほどすごい(2023/7/16 岡田斗司夫のYoutubeチャンネル)
エンタメではなくアート
岡田は、これまでエンタメの枠から外れなかった宮崎駿が、とうとうアートの表現をしてしまったのが、本作『君たちはどう生きるか』であると言う。
それが観客の評価が真っ二つに分かれている大きな要因である。
岡田:純粋に楽しめるエンタメだけを求める人には正直、向いてないとは思います。これはある程度難しい映画という風に覚悟決めたら、見に行けるのか?と。予備知識ゼロで僕は見てほしいと僕は思うんですけども、正直しんどい人が半分ぐらいいると思います。(2023/7/16 岡田斗司夫のYoutubeチャンネル)
映画のテーマは『死』、高畑勲『火垂るの墓』へのアンサー
岡田:テーマはその多分『死』なんですよね。『死ぬこと』なんですよ。だから、『火垂るの墓』で高畑勲がやったことに対するチャレンジというか、アンサーと言ってもいいんですけど。こういうことをテーマにするのは新、宮﨑駿だなというふうに僕は思うんですね 新宮﨑駿だから、改名したんじゃないか なというなんとなく思ってるんですけども。(2023/7/16 岡田斗司夫のYoutubeチャンネル)
今回、エンドロールで表示された宮崎駿のテロップが旧字の『宮﨑駿』で表記されていた。
これまでとは違う新しい宮崎駿の作品であるという決意の現れだろう。
村上隆(現代美術家)
絵描きの僕にとっては最高の作品
「君たちはどう生きるか」
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
絵描きの僕にとっては最高の作品でした。
以下、ネタバレにもならないであろう、私の個人的な解釈ですが、ネタバレかもしれませんので、それが嫌や人は読まないでください。 pic.twitter.com/h8Yo8vcba8
母への強烈な執着から解放され、新しい駿に爆誕し直したという話
80歳を超え、駿さんは、やっと母への強烈な執着から解放され、新しい駿さんに爆誕し直した。
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
そう言うお話でした。
本作の参照絵画はベックリンの「死の島」
今回、目立って出てきた参照絵画はベックリンの「死の島」です。他にもたくさんの芸術の参照例があったと思いますが、それらを、作った芸術家の脳内のシナプシスの電極のスパークに全身全霊を委ね、己の脳のクリエイティブな瞬間のスパークに結びつけ、駿さんの会いたい、元気な頃の彼の母親に会いに pic.twitter.com/jdLFBssInO
— takashi murakami (@takashipom) July 15, 2023
東浩紀(哲学者)
たいへん寂しい映画だった。
たいへん寂しい映画であった。
— 東浩紀 Hiroki Azuma (@hazuma) July 15, 2023
高橋源一郎(小説家)
控えめにいって、最高だと思った。
高橋は、息子と本作を鑑賞して「控えめにいって、最高だと思った。」と評している。
『君たちはどう生きるか』は「わからないこと」が多いため、自分の固定観念を壊して無意識まで入り込んでくる表現であったと高橋は語っている。
さっき「君たちはどう生きるか」のレイトショーを、辻堂まで長男(18歳)と観に行った。終わったら、最終電車が行ってしまっていたのでタクシーで戻った。そのタクシーの中で、長男が感に耐えかねたように「いやあものすごく良かった」といった。同感だ。控えめにいって、最高だと思った。
— 高橋源一郎 (@takagengen) July 15, 2023
一切の情報を出さなかったことは、「観客への最高のサービス」となった
また、高橋は公開前にメインビジュアルを除いて一切の情報を出さなかったことは、「観客への最高のサービスとなった」と語っている。
一つだけはっきりしていたのは、情報を一切出さなかったのは、作る側からの最高のプレゼント、心配りだったということだ。垂れ流される情報が、どれほど作品との出会いを棄損してきたことだろう。ほんとうの経験は「未知との遭遇」から生まれる。事前に何も知らされないって、ほんとうにありがたい。
— 高橋源一郎 (@takagengen) July 15, 2023
高橋は、公開前に垂れ流される情報が作品の本当の価値を毀損する原因であり、本当の経験は「未知との遭遇」からこそ生まれるとしている。
一切情報を出さない手法は、宮崎の実績と力があるからこそできるものだとしている。
川上量生(KADOKAWA取締役、株式会社カラー取締役)
大傑作、最後の映画までサービス満点の映画をつくった
いま、午前の回で、君たちはどう生きるかを見てきました。あとでもう一度書くけど、とりあえず一言。大傑作でした。結局、最後の映画までサービス満点の映画を作ったんだな。そう思いました。(2023/7/14 川上量生のTwitter)
いま、午前の回で、君たちはどう生きるかを見てきました。
— かわんご (@gweoipfsd) July 15, 2023
あとでもう一度書くけど、とりあえず一言。大傑作でした。
結局、最後の映画までサービス満点の映画を作ったんだな。そう思いました。
柳下毅一郎(映画評論家・特殊翻訳家)
大変面白かったけど、やっぱり年には勝てない
柳下:私は大変面白かったです。ただ、結構つらいところもあって。ポニョも風立ちぬも感じたことなんですけど。やっぱり年とったよね。なんか後半が雑になってくるんだよ。一番、雑だと思ったのは『ハウル』ですけど。(2023/7/16 Youtube BLACKHOLE 『君たちはどう生きるか』を、私たちはどう観たのか)
柳下:後半の巻き方がちょっと雑で、やっぱり疲れで粘りがなくなってるのかなって。たとえ宮崎駿といえども、寄る年波には勝てない。あそこがもうちょっと粘ってたら、もうちょっと凄かったんじゃないかっていうのは思ったな。でも面白かったし、もういっぺん見に行こうと思ってます。(2023/7/16 Youtube BLACKHOLE 『君たちはどう生きるか』を、私たちはどう観たのか)
高橋ヨシキ(アートディレクター・映画ライター)
面白かったけど、青サギ以外のキャラクターが弱い
高橋:面白かったんですよ。特に青サギのキャラクターも面白いし。ただ他のキャラクターがなんか全体的に弱い。ポテンシャルはみんなあるのに。そこが一種の弱みかなって。後半がちょっと弱いかなって。もっととんでもないことになってもいいはずだし。大叔父さんのところも、急に終わりになってきたなっていうのがあるし(笑)(2023/7/16 Youtube BLACKHOLE 『君たちはどう生きるか』を、私たちはどう観たのか)
高橋:映画の最初で、サイレンが鳴って、戦車も出てきてて、宮崎さんミリオタだから、これも含めてヤバいことになるかと思ったら、そんなことはなかったっていう(笑)(2023/7/16 Youtube BLACKHOLE 『君たちはどう生きるか』を、私たちはどう観たのか)
柳下毅一郎、高橋ヨシキの映画の感想はこちらの動画から
『君たちはどう生きるか』を、私たちはどう観たのか【完全ネタバレ感想大会】 高橋ヨシキ+柳下毅一郎+てらさわホーク #blackholetv - YouTube
奥浩哉(漫画家)
抽象的で観念的、全てが唐突でとりとめのない印象
君たちはどう生きるか、観た。後期の宮崎作品の通り抽象的で観念的な映画。手癖で演出してるため、観てる人はああいつもの宮崎さんだなと思うだろう。何かすべて暗喩で出来てるんだろう。普通にストーリーを追うような見かたをしてると、全てが唐突でとりとめのない印象を覚える。(2023/7/14 奥浩哉のTwitter)
君たちはどう生きるか、観た。後期の宮崎作品の通り抽象的で観念的な映画。手癖で演出してるため、観てる人はああいつもの宮崎さんだなと思うだろう。何かすべて暗喩で出来てるんだろう。普通にストーリーを追うような見かたをしてると、全てが唐突でとりとめのない印象を覚える。 pic.twitter.com/7UrvIwPnrJ
— 奥 浩哉 (@hiroya_oku) July 14, 2023