庵野秀明を支え続けたジブリという存在、知られざる深い関係まとめ

 庵野秀明という映画作家を、影から支え続けてきたスタジオジブリという存在、そして宮崎駿や鈴木敏夫との知られる関係についてまとめてみる。

「風の谷のナウシカ」制作現場での出会い

庵野が作画を務めた巨神兵

 大阪芸術大学在学中に、岡田斗司夫らとともにオープニング映像を制作した第20回日本SF大会(DAICON3)が大成功した庵野は、自身の作品を持って、「風の谷のナウシカ」制作中のトップクラフトをふらりと訪ねてきたのだという。人手が圧倒的に足りなく困っていた宮崎は、庵野の絵を見て、すぐに原画担当に採用。鈴木敏夫は、テロリストのような庵野の出で立ちと、家がないため、スタジオの机の下で寝る様子を見て、あまり近づかないようにしていたのだとか(笑)鈴木は、庵野との出会いについて、こう振り返っている。

鈴木:見た目からしてテロリストみたいでしたよね(笑)。それはものすごく強烈に覚えてます。その次に会うのがね、押井守の原作で「とどのつまり…」というマンガをやってたときに、そこのスタジオに居候していたのが庵野。ごそごそと机の下から出てきて「庵野です」って言われて(笑)。(映画ナタリー 「鈴木敏夫、庵野秀明を語る」 より)

庵野は「ラピュタ」も「となりのトトロ」の制作も断っていた


 日本SF大会も終わり、庵野ら制作メンバーが、「ナウシカ」をはじめ様々な作品で修行をしながら、満を持してガイナックスが設立された。ガイナックス制作の劇場長編アニメ映画「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の制作が決った頃、岡田斗司夫(当時、ガイナックス社長)は庵野を制作メンバーの中心に据えたが、「天空の城 ラピュタ」制作中の宮崎駿からちょっかいを出されたのだという。当時の様子を岡田斗司夫は自身のYOUTUBEチャンネルでこう語っている。

岡田:「風の谷のナウシカ」の巨神兵のシーンを庵野にまるまるやらせて、こいつ使えると思って、「ラピュタ」でも庵野秀明の見せ場をつくっていたら(笑)庵野は大学の時の友達である俺たちに誘われて「王立宇宙軍 オネアミスの翼」っていう作品に連れて行かれてしまったと。で、宮崎駿先生、よっぽど悔しかったか、一時期集に1、2回ガイナックスに夜中に来て、(庵野秀明を)スカウトするという業界の掟破りなことをしだして(笑)

 さらに「となりのトトロ」では、宮崎駿は、庵野に描かせるためのオープニングシーンを準備していたにも関わらず、庵野は、高畑勲の演出に興味を持ち、「トトロ」を断り、「火垂るの墓」の制作に加わったのだという(笑)

宮崎駿が「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の制作を後押しした

庵野が手掛けた伝説のロケット発射シーン

 宮崎駿は前述の「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の企画を庵野らがしていることを知り、出資元となったバンダイに自らかけあい、制作が決まるまで後押ししたのだという。
 宮崎は、「オネアミスの翼」の感想を「キネマ旬報」の対談でこう語っている。

宮崎:内容については、ものすごく感心した所と、これでいいのかという部分があるけれど、この映画が、若い同業者の諸君に、非常に大きな刺激になると思ったんです。賛否両論、激しく分かれるかと思うけど、それでも刺激になる。アニメブームの最後の隙間を見事に利用して、やったなとね。それと、映画をつくる時に一番大事なものは、表現したいものと情熱を持つことだと思う。当然、やりとげるには試行錯誤はあっただろうけど、こうしたいというのが、途中で崩れず最後まで持ちこたえてたんで、気持ちよかった。(キネマ旬報「山賀博之VS宮崎駿」から)

「新世紀エヴァンゲリオン」でのエピソード

宮崎駿が「エヴァ」でボロボロになった庵野へ激励の電話

 庵野は、多くのメディアで「エヴァンゲリオン」アニメ版が終わった後、ボロボロになっていた時に、宮崎駿からの電話で何とか生きることができた。と感謝を言葉にしている。

庵野:エヴァンゲリオンのテレビが終わって、僕はボロボロで、一回そこでぐっと落ちて、そこからはね上げてくれたのも、宮さんのおかげ。引きこもって、本当にあの時は、このまま生きていてもしょうがないなあ。と思っているときに電話一本くれて、「とにかく、休め。半年くらい休んだって大丈夫だから」って。そういえば、宮さんも3年くらい休んでたなあって(笑)それで立ち直りましたよ。やっぱりアニメが好きだったんです。
鈴木:宮さんのところに是非きてください。だって、宮さん、庵野のこと好きだったもんね。今も本当によく話すよ?どうしてる?って
庵野:また遊びに行きます。
(ラジオ「鈴木敏夫のジブリの汗まみれ」より

エヴァンゲリオンで上がった収益の使い方を鈴木へ相談

 庵野秀明は、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫へ、「エヴァンゲリオン」で上がった収益の使い方の相談に言っていたのだという。

鈴木:気が付くと彼はジブリに定期的に来ていたんです。半年か1年に1回。あるとき「エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)」のテレビ版が大成功してよかったなと思っていたら、庵野がふらりと遊びに来たんですよ。「実を言うと『エヴァ』で金銭が手元に入った」「それをスタッフに分けたいから合理的なやり方を鈴木さんに教えてほしい」と。俺にそんなこと言われてもと思いましたし、最初に決めておかないで途中から変えるのは大変だし。とはいえ、いろいろ意見は言いました。役に立ったかわからないですけど。そんなことを定期的にやってたんですよ。契約の話なんかが多かったのは、僕のことをそういう立場の人間であると思っていたからなんでしょうね。(映画ナタリー「鈴木敏夫、庵野秀明を語る」より)

エヴァンゲリオンの海外展開を相談

 スタジオジブリ プロデューサーの鈴木敏夫は、海外展開がうまくいっていない「エヴァンゲリオン」の相談を受け、2014年東京国際映画祭での「庵野秀明の世界」を企画したのだという。
 鈴木は記者会見で庵野への期待の言葉を口にしている。

鈴木:宮崎駿なき後は庵野。少なく見積もっても10年、本人は20年って言うかもしれないけど、日本のアニメを牽引していく存在(アニメ!アニメ!「宮崎駿なき後は庵野」より)

鈴木:世界の人が集まる映画祭で彼を紹介するのはいいことなんじゃないかなと考えて。あれは面白い特集になりましたよね、僕も楽しかったですけど。これも……時効かなと思うんですけど、(キャロライン・)ケネディ大使の息子さんが庵野秀明の、というか「エヴァ」の大ファンでね。ケネディ大使が息子さんと一緒にその催しに何回も顔を出すという出来事があったんですよ。外国にも大好きな人はやっぱりいるんだなと思いましたね。(映画ナタリー「鈴木敏夫、庵野秀明を語る」より)

庵野に実写を撮らせるために、スタジオを新設

 エヴァンゲリオン終了後、休んでいた庵野へ実写映画を撮らせたいと考えた鈴木敏夫が、庵野の作家性を考えて、スタジオジブリ名義で制作するのはさすがにまずいと考え、新たに設立したのが「スタジオカジノ」。そこで制作されたのが、「式日」である。

式日

「風立ちぬ」で庵野を主役の声優に起用

 「風立ちぬ」主人公の声優がなかなか決まらない中、鈴木敏夫が「庵野は?」と提案し、宮崎駿は「庵野…面白いかもね」と(笑)

庵野面白いねと言い出す宮崎駿

宮崎:庵野、面白いね…真面目にやってみたいね。変な声だもんね。
鈴木:(動画で庵野の声を聞きながら)誠実なんですよね。
宮崎:そう、こいつはものすごい誠実な男なんです!!

まさかの庵野の起用にうなだれるスタッフ

東宝へ、「シン・ゴジラ」は庵野にやらせろとすすめる

 「シン・ゴジラ」のプロデューサー、東宝の市川南は、ジブリ作品の宣伝プロデューサーを務めており、鈴木敏夫とかねてより深い付き合いがあった。そんな、市川へ「シン・ゴジラ」の監督は庵野はどうかと勧めたのが、鈴木敏夫なのである。

鈴木:庵野と東宝の関係性を作ったのは、どうも僕みたいなんですよ。それで庵野が「シン・ゴジラ」をやることになったらしく、「これ作れるようになったきっかけは、鈴木さんですよ」ってお礼を言われたんだけど、僕は忘れててね。あ、そうだったのかと(笑)。(映画ナタリー「鈴木敏夫、庵野秀明を語る」)

「シン・エヴァンゲリオン」でジブリが画面協力

 「シン・エヴァンゲリオン」では、スタジオジブリがクレジットロールに「画面協力」として載っており、スタジオカラー公式Twitterはこうつぶやいている。

 社会現象にまでなったアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を読み解くための基本文献。庵野秀明監督への超ロング・インタビューなど読みどころ抜群の名著はこちら

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