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100倍怖い「火垂るの墓」岡田斗司夫や押井守の考察まとめ

 高畑勲監督の名作「火垂るの墓」。だが、高畑勲は、ことあるごとに、「これは反戦メッセージの映画ではない」、「火垂るの墓を見ても、戦争反対の意思が芽生えるはずがない」と言い続けている。高畑は一体、「火垂るの墓」で何を描いたのか。岡田斗司夫や押井守の考察を中心にまとめてみた。

成仏できない清太が永遠に過去を思い出し続けている

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「昭和20年9月21日夜僕は死んだ。」
という清太のモノローグから始まるこの映画。映画の冒頭、現代の神戸の町に立つ清太の亡霊シーンから、昭和20年、過去の清太の死のシーンへと移動する。なぜ、清太は40年もの間、成仏せずさまよっているのか、映画はこの謎をとくためのミステリーの構造をとっているのだという。倒叙ミステリーと呼ばれる結論を先に提示して、そこに至る過程を描く手法と同様である。
 昭和20年に移動した後も、何度か現れる冒頭と同じ赤い画面は、清太と節子の亡霊が過去に現れたシーンとして、演出したと高畑は後にインタビューで語っている。
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「戦争の悲惨さ」を訴えるためではなく清太と節子の「心中もの」として構造をつくった

 高畑は原作の「火垂るの墓」がもつ「心中もの」としての構造に強く興味を持ち、映画をつくったと語っている。心中ものとは、思いの叶わぬ男女が互いに手を取って死の道を選び、あの世で結ばれることを願うもの。その根底には現世では結ばれなくとも来世で結ばれると固く信じられた仏教的教えと世相があるそうだ。近松門左衛門によって元禄期に書かれた『曽根崎心中』が「心中もの」の元祖であり、当時、大ブームを起こしたのだという。
 高畑は、「心中もの」への興味をこう語っている。

高畑:そんなにぼくは、野坂昭如を知ってたわけじゃないんですよね。プロデューサーをやっていた鈴木敏夫って人は、そういう世代なんです。それに対してぼくは、何に惹かれたかというと、独特の求心力なんですね。野坂さんの原作は、心中モノの構造をもっていてね。しかも、非常に閉じた世界なんですよ。
その心中モノみたいな構造っていうのは、これはひょっとしたらアニメーションというものの表現で、意味のあるものが作れるんじゃないかと思った。いわば、表現上の野心のほうが強いんですよ。それから、もうひとつは、自分が空襲を経験しているということですね。(ジブリのせかい 高畑勲 インタビューより)

 火垂るの墓」原作者の野坂昭如自身も、本作が、心中ものであると高畑との対談で語っているのだ。母を失った清太が、妹を守ろうと思い詰めることを

野坂:かなりの悲劇であると同時に、一方ではたいへん幸せな境遇でもある。清太としては、世界中で二人っきりの天国を築こうとしてるわけです。

高畑:主人公たちが死ぬことを前提にして、その死に至る道筋をずっと追っている。ただその、いま天国っておっしゃったのはその通りだと思うんです。映画でもそこをきちんと描きたいと思っています。

高畑勲がこだわった異常なリアリズム主義

 栄養失調で死にかけている節子。清太はお金をおろし、食料を買ってくる。雑炊を作り始めるが、途中で節子は死んでしまうという悲しいシーン。節子が死んでしまった翌朝、カメラは現実を写し取る。
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 清太が、悲しみの中も空腹に耐えれず、おかゆをたいらげ空になっている絵、スイカを節子の分以外すべて食べてしまった絵である。普通の人は演出しないし、見たくもないリアリズムを見せてしまう高畑演出の極みである。

押井守:「怖いどころか気持ち悪い」

押井:僕が「火垂る」でもっとも印象的だったのは、兄妹で電車に乗るシーン。あれは明らかに三途の川に向かって走っているという表現だよね。「千と千尋」のなかでも宮さんがやっていたけど、あれは「火垂る」のこの市電のリフレイン。

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ーその電車のなかで、せっちゃんがサクマ式ドロップスの缶をカラカラいわせてた・・・・何か怖いと思ったんですけど。
押井:あれは骨壷。「火垂る」はその種の暗喩に満ちていて、怖いどころか気持ち悪いくらい。

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押井:で、「生」のほうだけど、これは微妙に「性」になっている。だから「死とエロス」になるわけで、そのエロスは何かといえば近親相姦になる。あの兄妹の関係は明らかに近親相姦でしょう。見る人が見たら、相当に気持ち悪い映画だよ。
ー画に力があるだけに、生理的な何かを感じましたが、それが近親相姦とは。
押井:ディテールの迫力があるから。通り一遍に描いていたら、そういう生理は絶対に生まれない。高畑さんの演出家としての緻密な計算があり、表現に周年が宿っているからこそですよ。あの世の匂いがプンプンするし、近親相姦の匂いも。
ー高畑さんは何を描きたかったんですか。
押井:死とエロス。死生観ですよ。あれは高畑勲の死生観。監督が一度は自分の作品のなかで追求するテーマだよ。どんなアリバイ、どんなウソを並べても、間違いなく高畑勲という映画監督の作家主義100%の作品に違いないんだから。監督の強い意志があるからこそ、そういう表現ができた。

岡田斗司夫の解説、完全版はこちら

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