ジブリ鈴木敏夫のほぼ仏教思想に近い名言や仕事哲学まとめ

 数々のヒットを打ち立てた稀代の名プロデューサー、スタジオジブリの鈴木敏夫。その弟子筋にあたり、若手の頃は仕事がうまくいかず、クビを言い渡される寸前だったというジブリ石井朋彦プロデューサーへおくった名言や、宮崎駿、高畑勲という2人の天才と付き合う上での仕事哲学をまとめてみる。

とにかく自分の意見を1回捨てなさい

 当時、ジブリの制作進行を務めていたが、協調性がなく、クビ寸前だったジブリ石井朋彦プロデューサーに言った言葉。

石井:ちゃんと自分の意見を捨てて、ノートにみんなが言うことを全部書いて。身振り手振り、すべて書き残して、会議が終わった後読み返せ。寝る前に読み返せ。しかも「それを俺に送れ」というふうにおっしゃって。その議事録を毎晩送ってたんですよね。
それをしてるうちに、だんだんみなさんが言っていることが入ってくるわけです。そうすると、「こんなに仕事っておもしろいんだ」という一方で、「自分にこだわるとこんなにちっちゃい世界しか見えてなかったんだ」ってことがわかってきたんですよね。(ログミー スタジオジブリ名プロデューサーに学ぶ「仕事術」より)

何か言われたらすぐ返事するな

 ジブリのスタッフから「日本一の知識人」と呼ばれる東大卒のインテリ高畑勲監督と話すときのコツとして、鈴木敏夫が石井朋彦におくった言葉。

石井:高畑さんは本当に日本一の知識人なので。
藤巻:東大出なんですけどね。『火垂るの墓』とかね。『おもひでぽろぽろ』とかの監督です。
石井:宮崎駿さんの先輩なんですけど。「何か言われたらすぐ返事するな」と。本当に頭のいい人はすぐ返事するとね、「お前、ちゃんと俺の言ったことわかってないだろう」と思うんだと。「わかってなくてもいいから、斜め上を見て3秒考えたふりをしろ」って言われたんですよ(笑)。
(会場笑)
鈴木:有効だねえ(笑)。なるほどー(笑)。
石井:それをやってから高畑さんが僕のことを評価してくれるようになった(笑)。(ログミー スタジオジブリ名プロデューサーに学ぶ「仕事術」より)

なにかしてる間に、メールとか文章は頭の中で作っておけ

 難しい顔をして、机で仕事をしていた石井へ鈴木が送った言葉。
 仕事は公私混同でやれ、という鈴木敏夫の考えから、歩いてる時とか移動してる時に、どのメールを返事を書くとか、文章を書くとか頭の中で書いておいて、いわゆる仕事の時間はそれをもうバーっと書けば仕事なんかすぐ終わるんだと教えたのだという。
 仕事とプライベートってはっきり分けて、一生懸命やってるから仕事が終わんないんだ、という考えが鈴木の仕事哲学の根本にあるのだという。

石井:そうそう、オンオフなんかない、っていう。
鈴木:僕あれ間違いだと思うんですよね。要するに、ここまでがオンで、ここからがオフって考え方ってね、やっぱり疲れちゃうと思うんですよ。そうじゃなくて、そんな区分けはないっていう方が、毎日楽しくなりますよね。藤巻さんそうじゃないですか。
藤巻:俺ほとんどオフです。
一同:(笑)。(ログミー スタジオジブリ名プロデューサーに学ぶ「仕事術」より)

やりたいことなんてなくて、当たり前

 ジブリのスタッフが、将来の夢、目標にこだわりすぎて、やめていってしまうことに対しての言葉。人生は皮肉なもので、やりたいことを追った人間より、成り行きや感覚で流されたほうが、結果的に成功していることを語る。
 鈴木は、高畑勲が東映動画に入ったエピソードを例に語っている。高畑勲ですら、強い気持ちでアニメの世界に入ったのではないのだという。

鈴木:それで言うと高畑さんは実写好きってこともあったけど、あの人は学者に向いてる。
石井:はあー。
鈴木:高畑勲って人はなんと、東映動画、今の東映アニメーションって会社に入る時、実を言うと自分の親友が東映アニメーション受ける、それにくっついていったんですよ。
藤巻:ええー? そうなんですか!
石井:それは知らなかった。
鈴木:くっついてって、ただ待ってるのつまんないから、ついでに応募してたんですよ。
一同:(笑)。(ログミー スタジオジブリ名プロデューサーに学ぶ「仕事術」より)

すべての会社に好きな人を作れ

 鈴木敏夫が、新人の頃の石井へ、ジブリも、ほかの取引先へも好きな人をつくれば、毎日定時に出社したくなるし、取引先に行くのも楽しみになるということを教えた時の言葉。

仲間を増やせ

 団塊ジュニアで自意識過剰な石井朋彦へ、お前の得意技はたぶん、「AさんからBさんになにかを伝えることである」と伝え、いろんな得意技をもつ人と仕事をすることで、毎日が楽しくなると話した言葉。

石井:「お前に無いものを持っている人って必ずいるから、そいつと組め」って言われたんですよね。それで、得意技の見つけ方を教えてやろうって話になったんですよ。「宮崎駿の得意技はなんだ?」って言われたんですよね。「アニメーションの天才ですよね」、「でもアニメーションの天才っていっぱいいるだろう」と。
「スピルバーグもいれば高畑さんだって天才かもしれないじゃないか。そんなんじゃだめだ、もっと細分化しろ」って言われて。「宮さんの得意技は実はストーリーでも企画でもなく、誰も見たことがないおもしろいキャラクターを思いつく名人なんだ。これだけは世界で唯一、宮さんしかない突出した特技だ」と。(ログミー スタジオジブリ名プロデューサーに学ぶ「仕事術」より)

オリジナリティーなんて、ない

 世界の宮崎駿ですら、オリジナリティはないと言い切り、そこに固執するなと鈴木は語っている。

石井:あとオリジナリティー。「自分の創造性にこだわるとか、自分にしかないアイデアとか、そんなのはないんだから、そういうことを考えるのはやめな」というのは鈴木さんから。
藤巻:僕は宮崎駿さんもすごいなと思うんですけど、久石さんもそうです、「俺のオリジナルなんかなにもねーよ」と。それは生きてきた中で吸収したものを自分なりにどうアウトプットしているかだけで。世界の宮崎駿が「俺のオリジナルはないよ」なんて言うんだと思って。すごいなって。
石井:宮崎さんはバトンのようなものだといっていますよね。人からもらったバトンをしばらく持って走って、それを人に渡すのが俺の仕事だといっていましたね。(ログミー スタジオジブリ名プロデューサーに学ぶ「仕事術」より)

間違っても、自己表現だとか、自分のこだわりに走っちゃいけない。いつも受け取る相手のことを考える。

 鈴木は、芸術も、自己表現や自己実現ということが言われ始めてつまらなくなったと語る。レオナルドダ・ヴィンチやミケランジェロが、注文に応じて作品をつくっていた時は、作品に「自分」はなかったはずだと。
 宮崎駿も、「自分は町工場のオヤジ」と言っている。

何でも真似(まね)すりゃいいんだよ

 ゲド戦記で、初めて監督の仕事についた宮崎吾郎へ、鈴木がおくった言葉。
 次に何をすればいいのか?と鈴木に不安そうに聞いてくる吾郎へ、今まで観てきた映画を真似ればいいんだよと、習うより慣れろという意味でさとしたのだという。
 鈴木は本当の意味でのオリジナリティなどないと語り、宮崎駿ですら元ネタだらけだとも語っている。

付き合う人とは教養を共有したい

 鈴木の著書「仕事道楽 スタジオジブリの現場」からの名言。「アニメージュ」の編集者の時代に、高畑勲、宮崎駿に出会った鈴木敏夫がまず圧倒されたのは、2人の教養の深さだったという。高畑勲は、東大出の超インテリであり、宮崎駿といえば、中尾佐助の「栽培植物と農耕の起源」を読んだ?と聞いてきて、読んでないと答えると、「無知ですね」の一言だったという(笑)鈴木は、なんとしても2人と教養を共有して、2人が話したことはすべてノートにとり、読んでない本は全て読んだのだという。鈴木は、高畑が勧めたアンドレ・バザンの「映画とは何か」を読み、スタンリー・キューブリックの「バリー・リンドン」の映画の面白さがやっとわかったのだとも話している。

わかりもしないのに、わかったように相槌を打つのは弱さである。

 鈴木の著書「仕事道楽 スタジオジブリの現場」からの名言。前述の宮崎、高畑と教養を共有するために本を読みまくった経験から、相槌の打ち方の大切さに気づいたという。「へえ、なるほど」を繰り返すのは、相手のことを勉強していないという証拠であり、相手の言ってることがわからなければ、どういう意味なのかをちゃんと聞けとジブリの社員研修で教えるそうだ。わかってないのに、わかったように相槌を打つのは、本人の弱さであると。

スタジオジブリ鈴木敏夫の圧倒的な仕事哲学、名言はこちらの著書から

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