宮崎駿と押井守の知られざる関係まとめ

 押井守は宮崎駿のことを「敵だ」と公言し、差別化するために王道のファンタジーではなくマイナーな作品をつくってきた。鈴木敏夫は、宮崎駿にとって押井守は、数少ない宮崎に認められ、対等に議論できる人間であると語っている。若い頃、押井と宮崎、鈴木で行った旅行のエピソードや、お互いの作品に関して言及したエピソードを中心にまとめてみる。

宮崎駿、押井守、鈴木敏夫らで行った旅行に関して

宮崎駿、押井守、鈴木敏夫らで行ったアイルランド旅行

 宮崎、鈴木は、当時、若手で力を発揮していた押井守を連れて、1986年、「天空の城ラピュタ」の公開後、ケルト文化の遺跡が多く残るアイルランド地方へ旅行をしたのだという。当時のエピソードをLINE LIVEで鈴木敏夫と押井守が語っていた。

旅行のきっかけは、世界初のドキュメンタリー映画を観て

鈴木:旅行のきっかけは、押井さんなの。「MAN OF ARAN」っていうね、世界初のドキュメンタリー.
押井:あれ、宮さんが持ってきたの。「ここに行きましょう!」っつって。
鈴木:そうだっけ?
押井:あ、ちがう。宮さんが言ってたのを私がどこからかビデオを見つけだしたんだ。
鈴木:そうだよね。それで、みんなで観た覚えがあるよ。

旅行で見た風景が、押井作品に大きな影響をもたらした

スカイ・クロラ」や、「ガルム・ウォーズ」の舞台設定は、アイルランド旅行で見たケルト文化の影響でつくられているという。

鈴木:あれで、押井さんが取り憑かれるんだもん。
押井:完璧にそう。感謝してる。岩と強風。
鈴木:押井さんのネタってあそこだけだよね?(笑)
押井:ふふふ(笑)
鈴木:要するに近代をつくったキリスト教文化?それにひどい目にあわされた人たちでしょう?そういうの好きなんですよ!すぐ、「滅びゆく」とか(笑)馬鹿じゃないかなって(笑)
押井:ふふふ(笑)あの、ストーンヘンジを見に行ったじゃない?

ストーンヘンジ

鈴木:あの、ストーンヘンジもさ(笑)ひとりで、見てるんだもん(笑)
押井:・・・
鈴木:押井さんが一人で見てるのを、みんなで、よくあんなの見るなあって言ってたんですよ(笑)
押井:ストーンヘンジを見に行くっていうのが、ずっと願望だったの。ああいう古代遺跡みたいなのが好きだったの。遠くに見えてきたときは本当に感動したけど、近くに行ったら、小学生が走り回ってたり、羊のうんこだらけで(笑)

宮崎駿が幽霊を連れてきた

押井:宮さんが幽霊連れてきたっていってさ(笑)
鈴木:宮さん、よく連れてくるんだよ(笑)なんっていうかね、まだ来ないうちから、来てるっていってねえ。
押井:夜中に起きて、みんなで大騒ぎしてて、私はベッドに入ると2,3分で寝ちゃう男だから。
鈴木:あの時、俺と宮さんが同じ部屋なんだもん・・・真夜中に、いきなり電気全部つけるんだもん(笑)何だって思うと、宮さんが「・・・・起きたんですか?鈴木さんも?(幽霊ですよね?)」って言うんだよね。
押井:あんたが起こしたんだろ!って。
スタッフ:どうなったんですか?
押井:宮さんは朝まで起きてたみたいよ。
鈴木:起きてた(笑)
押井:ベッドも湿っぽかったし、幽霊が出そうな場所ではあったよ。

宮崎、酔っ払った鈴木に怒る

押井:どっかのレストランで食事した時に、間違えて酒飲んじゃったじゃん!?エビのカクテルかなんかで。
鈴木:あれは、ホテルのそばだったのよ。
スタッフ:鈴木さんはお酒飲めないですもんね。
鈴木:そう、あれウォッカが入ってたのよ。美味しくて!いっぺんに飲んじゃったら、手が動かなくなったから。ああいう時、宮さんはいい人だよね。俺のこと抱えて、ベッドまで連れて行ってくれた。
押井:それは、私です!
スタッフ:宮崎さんは笑ってた?
押井:いや、怒ってた!(笑)飲み干して、街中にひびき渡るゲップを始めるんだもん!(笑)宮さんは、ずっと怒ってたもん(笑)「日本人の恥だ!!」とか言って

ロンドンでは、皆で一緒に寝た

鈴木:ロンドンで泊まるところがなくなっちゃって、ガイドさんが見つけてきたのが、いわゆるラブホテルなのよ。亀山っていう男もいてね、興奮していきなり押井さんを押し倒したの(笑)で、嫌がる押井さんを羽交い締めにして、おっぱいを一生懸命触ってたよね?押井さんが「やめろ!やめろ!」って言って(笑)
押井:(笑)
鈴木:その亀山っていう男がね、そのうちに気持ちくなるから我慢しろ!とか言ってね(笑)
押井:宮さんと寝たんだよ、だって!!(笑)ステテコでさ。朝起きたら、異様な雰囲気。
鈴木:だって部屋がないんだもん!!

お互いの作品に言及したエピソード

宮崎駿が語る押井作品

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊

ー「攻殻機動隊」も観てらっしゃらないんですか?
宮崎:観てないです。ー中略ーそんなに犬が好きなら、「愛犬物語作れ」って。くだらないもの作ってないでね。人間の脳みそが、電脳がどうのこうのなんて、そんなんじゃなくてね。
ー観てるじゃないですか(笑)
宮崎:いや観てないんですけど。わかるんですよ。士郎正宗の「攻殻機動隊」は読みましたもん。これ全部入らないから、どうせ適当に全部意味ありげに語るんだろうって。(風の帰る場所 ナウシカから千尋まで より)

機動警察パトレイバー2the Movie

宮崎:「機動警察パトレイバー2the Movie」のときなんか、まいりましたもん。なんか意味ありげだなあと思っていたら、「しょせん意味などないんだ」ってね(笑)おかしいなあと思うと、先回りして、言うんですよね。実に語り口は巧妙なんですけど、要するに押井さんが言ってるのは、東京はもういいやってことなんだろう、だから、伊豆に行って犬飼うんだろうって。自分が短足だからって、短足の犬飼うなってね。(風の帰る場所 ナウシカから千尋まで より)

うる星やつら オンリー・ユー

 押井守の長編初監督作「うる星やつら オンリーユー」に関して、宮崎駿は、押井との対談で、批判しつつも次回作を頑張れと叱咤激励している。

宮崎:ところで、もう一本、劇場用の「うる星」作るんでしょう?
押井:まだ正式じゃないんですけど、話はあります。
宮崎:完成度が高いからいいんじゃなくて、熱気があふれていたほうがいいこともあるし・・・・。最初熱気でやって、次にはかならずクソっという形で開花するから、押井さんの場合でも、次はもっといい条件を取れると思うんですよ。スケジュールとかスタッフとか。それはなるべくもぎ取ったほうがいいですね。いずとなればスタッフにも遠慮しないで、死屍累々でもいいから・・・・・(笑)。
押井:そのへんがむずかしいですけれど。
宮崎:むずかしくてもやるんじゃないかと思うけどな。むずかしいですね、といっているからやるんじゃないかな。
押井:ぼくにとって次のが一本目という気持ちでやりたいです。自分としては何としてもリターン・マッチをやらずにはおかないという気持ちです。(宮崎駿 「出発点」より)

 宮崎駿と押井守の対談はこちら
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押井守の犬好きに関して

──押井守さんから、宮崎さんについては、いろいろ面白いコメントをいただいてるんですけど、宮崎さんからはどうなんですか?
宮崎:いや、なにを犬に狂ってるんだ、バカってね(笑)
──(笑)よく知ってますね。
宮崎:知ってますよ。人の犬に悪口言ってきてね、それで、喧嘩したんですから(笑)汁かけ飯がなぜ悪いってね。僕は汁かけ飯で犬飼ってたんですよ。それで十七年も生きましたからね。だけど、押井守は、なんか犬のために伊豆に引っ越ししたでしょう。家の周りに犬の通路作ったりしてね、そのバカ犬をさ、雑菌に対する抵抗力がないから外に出さないとかね。それを聞いたとき、なにやってんだこいつ、って思ったんですよ。大体、ブリーダーってみんな胡散臭い顔してるでしょ(笑)。(風の帰る場所 ナウシカから千尋まで より)

 宮崎は「ハウルの動く城」で、押井をモデルにした犬を登場させている(笑)

押井守をモデルとした犬「ヒン」


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