【考察】岡田斗司夫が語る「ハウルの動く城」がわかるようになる13のポイント

ジブリ映画史上、最も賛否が分かれ、宮崎駿が最も自分の中でトゲのように残っている作品という「ハウルの動く城」について、岡田斗司夫がYOUTUBEチャンネルで語った考察を中心にまとめてみる。

「ハウルの動く城」は、なぜわかりづらいのか

 岡田斗司夫は、「カリオストロの城」をクラリス視点で整理した場合、わけのわからないストーリーになってしまうことを例に出し、「ハウルの動く城」は、徹底的にソフィーの視点で描かれており、
背景にある設定を読み解かないと、わけがわからない映画としか見えないと語っている。「エヴァンゲリオン新劇場版:Q」も碇シンジの視点のみで、描かれているため、簡単なストーリーのはずなのに、やけに難しくなっていると指摘する。「ハウル」でも同様の現象がおきている。

「ハウルの動く城」のプロット完全整理

 プロットとは、ストーリーとは違い、設定を時系列で並べたものだ。本来、脚本はプロットをつくり、それをストーリーに展開していくのだという。
「ハウル」の場合、実はプロットが徹底的に練り込まれているのだという。以下は、10のポイント(プロット)を時系列に並べたものだ。

①隣の国の魔法使いが魔法王国をつくる
②ハウルの叔父が魔法書を書きかけて死ぬ

 ハウルの子ども時代に、ソフィーがタイムスリップするシーンの絵コンテを見てみると、机の上には、書きかけの草稿という文字がある。(草稿とはまだ出版されていない原稿)恐らく、魔法書を書いて出版しようとしていたハウルの叔父を隣の国の者が殺した。理由は、魔法を文字として出版されると、隣の国(魔法王国)には優位性がなくなってしまうから。この結果、ハウルは隣の国を憎むようになる。ハウルが、どちらの味方かわからず全ての人を攻撃するのは、隣の国も憎いし、自分を縛ろうとするサリマン先生も憎いからだ。

③ハウル、魔法学校へ入学

 国王が隣の国の魔法の力を警戒して、サリマン先生に魔法学校を作らせる。ハウルは、そこへ入学することとなる。

④星の子(カルシファー)を助けて、契約する

 空から地上に降ってくるが、すぐに死んでしまう運命にある星の子(悪魔)をかわいそうに思ったハウル。ハウルは契約を交わし、自分の心臓を与えるかわりに星の子(悪魔)を助け、自身は強大な魔法の力を得ることとなった。心臓を与えたため、ハウルと星の子(悪魔)は生死を共にする運命にあり、強大な力はやがて、ハウルを化け物にしてしまうものだった。
 タイムスリップしてきたソフィーは、この契約の瞬間に立ち会い、ハウルとカルシファーの名前を呼んだことで、星の子(悪魔)へカルシファーという名前を与えたこととなる。

⑤ハウルはサリマンと戦い、魔法学校から逃亡

 力を得たハウルはサリマンから自由になることを望み、サリマンと戦い逃亡する。その結果、サリマンは車椅子生活となるほどのダメージを負う。ハウルに対する憎しみは、ここから生まれていると考えられる。

サリマン:素晴らしい才能の持ち主でした。ようやく跡継ぎにめぐりあえたと本当に嬉しかったのです。ところが・・・あの子は悪魔に心を奪われ、私のもとを去りました。魔法を自分のためだけに使うようになったのです。

サリマン:あの子はとても危険です。心を無くしたのに、力がありすぎるのです

⑥サリマンは、後の「荒れ地の魔女」を追い出す

 ハウルと同じく悪魔に魂を売り、力を得た魔法使いを追い出す。その魔法使いが後に荒れ地の魔女となる。

⑦ハウル、荒れ地の魔女を惚れさせて逃げる

ハウル:面白そうな人だなって思って僕から近づいたんだ。それで逃げ出した。恐ろしい人だった……

ジブリの鈴木敏夫プロデューサーは著書『風に吹かれて』で、ハウルと荒れ地の魔女の関係をこう明言している。

鈴木:簡単に言うとハウルの童貞を奪ったのは荒地の魔女です

⑧サリマン、隣の国の王子を魔法で攻撃し、カカシにする

 これは、第一次世界大戦の引き金となった「サラエボ事件」をモチーフとしているようだ。サラエボ事件とは、オーストリア・ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナント大公夫妻が暗殺された事件である。

⑨隣の国との戦争(第一次大戦)が開始

 サリマンは、ハウルに戦争に力を貸さなければ、魔法の力を奪うと脅す。

⑩指輪の導きで、ハウルがソフィーと会う

 「探したよ」とソフィーに声をかけるハウル。子どもの頃にタイムスリップしてきたソフィーをずっとハウルは探していたからこそのセリフである。実は、このシーンでハウルの指輪が光っていることがわかる。


 指輪はその後、ハウルがソフィーへお守りとして渡す。この指輪は「心の中で呼んだ者のもとへ案内する」能力を持っており、映画のクライマックスで、ハウルを探し求めるソフィーの願いにより、少年時代のハウルのもとへタイムスリップが起きる。この指輪の導きで、ソフィーは少年時代のハウルと出会え、ハウルは、少年時代に出会ったソフィーを指輪の力で探しつづけていたのである。


ここから本編が始まり、プロット⑪~⑬ではラストの展開のみまとめる。

⑪隣の国の王子(カブ)が戻り、サリマン降伏文書に調印。ハウルたちは故郷を捨てて空へ
⑫数年後、再びサリマンは戦争(第二次大戦)を開始

 最後のシーンは、戦争が終わって平和になったかのように見えるが、戦争で焼き尽くされたはずの大地に緑が戻っている。これは、実は戦争後、数年たっているシーンなのである。

 そして、雲の下にはまたしても爆撃機が見える。また、戦争が始まったことを表しているシーンなのだ。このシーンをわかりづらくしているのは、魔法使いであるハウルとソフィーが年をとっていないからである。

⑬魔女のソフィーと魔法使いのハウルは、空飛ぶ城で自分たちは年を取らず優雅に暮らす。地上には干渉しない。

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