ノンスタイル石田が、2021年12月23日放送の「ナインティナインのオールナイトニッポン」でM-1グランプリの解説でゲスト出演していた。石田が語るのは、ランジャタイの2番手登場とネタの完成度のために、いかに大会の流れを変わってしまったかということである。
モグライダー
個人的ベスト3。ジェラシーすら感じる良設定
石田:うわあ、こんな設定残ってたかあ!っていう。
岡村:うん。
石田:僕はその時、笑い飯の哲夫と銀シャリの橋本さんと番組で見てて、出た瞬間に「うわあ…ジェラシー」という。あんな気持ちいい設定ってないですよね。
岡村:トップバッターであそこまでウケたというのもなかなかないと思いましたけど。
石田:そうですね。個人的になんですけど決勝の10組の中では僕はベスト3に入ってました。
コンプライアンス的に一瞬引かれる入りの凄さ
岡村:若いお客さんがいる中で、美川さんって出すのも怖いじゃないですか?
石田:はい、そうなんですけど。これがまた何が素敵かというと、最初に「美川憲一さんってかわいそうですよね」っていう入りじゃないですか?これがね、コンプライアンスでけっこう皆ピリッと。
岡村:ああ。そんなんいうてええの?笑われへんな、ここって。
石田:あんま知らない芸人が、「え?そんなんいうてええの?」ってなったら、歌の話になって、凄いキュートじゃないですか?それで、みんな笑いやすくなったっていうのは、あるんですよ。
岡村:なるほど。一瞬、ピリッとなった?
石田:なったでしょ?みんな。ああいう入りは凄いなって思って。
岡村:ずっと、でもウケてたでしょ、コンスタントに。
石田:はい。
ランジャタイ
ランジャタイが抑止力となり、今回のM-1の流れをつくった
石田:ランジャタイは凄かったですね…
岡村:ちょっと早すぎたんじゃないですか!?
石田:これは、絶対後半の方がいいコンビなんですよ。ランジャタイは。なんですけど、ランジャタイが実は後半ハネきらないという(今回の)M-1をつくったんですよ。
岡村:おお!
石田:ここで、「おバカMAX」もやって、「スピード」も結構早いのやって、「熱量」も出したんですよ。なので、この後、「熱量」を出す漫才師も実はそんなパワーがあるように見えなかったし、「おバカ」をやるのも、あれほどおバカには見えへんし。「スピード」もそこまで早く見えなかったっていうのが。
岡村:だした!!
石田:そう、ランジャタイが抑止力になったというか、後半の。
岡村:ああ~~!ここで、もうやってしもうた?
石田:ここで、もうお笑いの感度ビンビンの人からすると、めちゃくちゃ面白いネタなんで。まあ、色んなことがここでやられているという。
岡村:2番手でやられてしまったんや!だから、通常、M-1グランプリってだんだん上がってきて、「来た来た!優勝するかも!」っていうのの重しになってしまった。
石田:そう、そうなんですよ。だからなかなかハネきらないという。
矢部:3番以降が。
石田:そう。
実は組み立てがしっかりしている
石田:ランジャタイは賛否両論あるんですけど、M-1に寄せてきたというか、めちゃくちゃ向き合ったなと思って。
岡村:本当はもっとぶっ壊れてる感じなんや?
石田:そうですね。実はめちゃくちゃ組み立てもしっかりしてましたし。合わしにきてましたね。
岡村:でもランジャタイというスタイルは崩さずに、M-1に向き合ったと?
石田:はい。
圧倒的な表現力の高さ
石田:何より、あの表現力の高さ!一瞬一瞬で、あんなわかりにくい設定なのに、そんな細かくジェスチャーしないのに、ワンポイント、ワンポイントで何が起きているか分かったじゃないですか?
岡村:わかった!!
石田:あれは、本当に化け物ですね…あれは…凄いです。あんなスピードで、あんなに展開できないですもん。
岡村:猫が動かしてるとか、エレベーターが通っていってるとか。石田:そう、エレベーター降りていくとか、あれを説明できるジェスチャーとかないわけですよ。
石田:最後、もう一匹猫が出てくるとか。最近のM-1をちゃんと使ってるんですよ!!あとから出てくるやつもやってるから、結構全部やってるんですよ。
ゆにばーす
モグライダーとの比較にしかならなかった
石田:今回のネタは「熱量」だよりの所があるわけですよ。その前にMAX値を出している人がいたんで、本来もっとハネてそうな所が、ハネてない。
岡村:うん!
石田:となってきた時に、モグライダーとの比較にしかならなかったんですよ。だから、そんなに点数が上がらなかったんですね。モグライダーより良かったか悪かったかで、審査員が1点差、2点差しかつけてないんですよ。
岡村:ランジャタイ飛ばしのモグライダーとの点の比較でしかない?
石田:そうなんですよ。本当はここで、2番目がインディアンスとかだったら、ちゃんと点数つけれたりするんですけど。
矢部:比較対象がモグライダーだけやから。
石田:そうなんですよ。ナビバグったみたいな!(笑)現在地わからんくなった(笑)みたいな。
ランジャタイのネタ順の影響
石田:僕は今回、一番懸念してたんですよ。ランジャタイが1番、2番に来た時に。
岡村:順番、順番!言ってたもんな、石田は。
石田:ランジャタイとかが前半に来ると、なかなか停滞する時間が長くなるので、パコン!とウケた人が抜けていく大会になるだろうみたいなことを。
岡村:インディアンスとかは最後の方やったから良かったんかな?
石田:これは…インディアンスの前に、唯一ランジャタイがやっていない雰囲気を持っているオズワルドが変えたんですよ。全く違う感じやった。だから、これオズワルドとロングコートダディが反対やったら、ロングコートダディの方が、ハネた可能性がなくはないかなと思ってます。
岡村:おお!!
ハライチ
ハライチの芸人人生自体をフリにした
石田:敗者復活のネタがほんまに面白かったんですよ。
岡村:うん!うん!
石田:なので、僕はあれで行くんかなと思ったら、岩井君がやりたかったというあのネタになったと。いい作戦やと思うんですよ。今まで見せてなかったハライチの芸人人生をフリにしたボケということで、知ってれば、知ってるほど面白いということで。
岡村:そうやなあ。
石田:あれは、一回作戦としては勝ったんですけど、岩井が発狂するみたいなボケが1パターンしかなかったじゃないですか。
岡村:ああ~、そうね。
石田:発狂することがゴールみたいな。違うパターンとか見せてもらえると、多分もっとあったんじゃないかと。
真空ジェシカ
近年増えてきた「共闘型」
石田:面白かったですね。僕も凄く期待していたコンビなので。おしゃれですし、今回一番ファンを増やしたといっても過言ではないんじゃないですかね。凄い見やすい漫才コント。
岡村:面白かった!!
石田:近年増えてきた「共闘型」というか。共に笑いを作っていくタイプのコンビですね。対立構造ではなく、常に「共闘」。だから、木村拓哉さんのハンバーガーの持ち方みたいなことって、普通にやってたらスルーできるやつなんですよね。別にツッコむ必要がないんですよ。誰も気づかないから。でも、あそこで言うことにより、笑いが起きる。
岡村:ほうほう!
石田:昔は全然なかった、近年増えているタイプ。僕の頃とかでやると上の人からギャーギャー言われてたようなことが、今は主流になりつつある。
オズワルド
今までとまったく空気が変わりました
石田:オズワルドは良かったですね!1本目は。
岡村:来た!!っていう感じでした。
石田:今までとまったく空気が変わりましたから。
矢部:はい、優勝!って思わすぐらいのねえ。
石田:そうですね。上手かったですね…もともとは本当に荒いハードパンチャーやったんですけど。M-1を経験して、すごくポイント制もうまくなったというか。
岡村:初めてオズワルドがM-1出たときは、この引き芸では獲れんのとちゃうかと思って。全然、変わっててね。
矢部:押し引きもうまく使ってるよね。
石田:上手く使ってますし、やっぱりもともとの2人のタイプがいいんですよね。陰と陽がしっかりしてて。ワード自体がハード目なんですけど、伊藤自体が実はポップな人間なので。気持ちよく見れたりするんですね。
岡村:変化してってるんやな。
石田:だって、「ビッグピースじゃあ~~~~ん!」ですよ(笑)
ロングコートダディ
コント師ならではの「間」
石田:ロングコートダディは本当に見事です。やはり、あのコント師ならではの「間」というか。やっぱり漫才師はあの間、耐えられないので。漫才師で耐えられるのはスリムクラブぐらいしかいないので。
岡村:ノンスタイルとか、余計ババババ!と行くタイプやから、余計見てて怖いやろうな。
石田:そうですね。あんなに堂々と出来るっていうのは凄いですね。本当にコントも漫才も面白いので。
岡村:たぶん、かなりこのネタかけてきてて、かけて、崩してってしてきている感じが少ししたんですけどね。
石田:そうですね。だからやっぱり今回、師匠方も言ってましたけど、サンパチマイクの使い方っていう。確かに、これはもったいないんですよ!サンパチマイクを上手く使ったほうが、単純にお客さんも見やすいし、移動がなければ、ボケももっと入れれたし。
岡村:そうか。
石田:僕がちょっと思ったのは、「二文字タイム」って急に来たじゃないですか?僕がつくるんやったら、二文字タイムは前半ぐらいで使って、スルー一回する時間があって、その後、もう一回あると、「うわ来た!」っていう盛り上がりがあると思うんですけどね。
石田:こちらも共闘タイプですね。漫才これからだと思うんで、言うんですけど、コント内のツッコミなのか、漫才師としてツッコんでるのか微妙なところがちょこちょこあるんですよ。
岡村:おお。
石田:あの、コント風のツッコミしてるのに、手をこう触ってしまってたりとか。凄い中途半端なんですよね。
岡村:あ、コントやったら、そんなんせえへんもんな?
石田:そう、しないです!
矢部:漫才というコントをしているような。
石田:あ、そうです!コント師からすると、コントから漫才に近づけていくんで。漫才師は、漫才師から外れていこうとしてるじゃないですか?コント師は逆に漫才に入っていこうとしてて、同じようなことをしてるんですけど、入り口が違うから、見え方が違うんですね。
錦鯉
ここに来て「人間力」に勝るものはない
岡村:そして、錦鯉ですよ。
石田:いや~、面白かったですね。なんか、やはりここに来て、「人間力」に勝るものはないなと思いましたね。
矢部:だから、子どもが凄い笑うんよね。長谷川君は50やけど。
石田:今回はやはりインディーズ、小さいライブに出てた人がいっぱい出てたんで、出させてもらえる所が多かった、そこで皆上がってきたって感じがしますね。
岡村:ただただ面白かったわ。
石田:ここにきて、最近システムがどうだとかいう時代だったんですけど、今回でもしかしたらシステム漫才がちょっと弱くなっていくかもしれないなっていうのを感じましたね。めちゃくちゃオールドスタイル。スタンダードな漫才なんですね。敗者復活でも、マユリカとか男性ブランコとか、普通のドライブデート、旅館に行くとかいう設定なんですけど、めちゃくちゃボケが強いっていうのが上に上がってきてたりするんですよ。
岡村:デートのパターンとかってまだあるん?
石田:あるんですよね。みんながシステムとかで迷子になってた時に、ただ筋肉をつけてきた人たちが、上がってきてたりするんで。
岡村:正直、力技でがーって持っていくってことやろ?
石田:そうです。単純にずっと面白いっていう。
インディアンス
石田:インディアンスはねえ…
岡村:僕は毎回インディアンスはもしかしたら!って思ってるんですけど。
石田:そうすねえ…ウケてましたねえ。
岡村:でも、やっぱり錦鯉の後っていうのが大きかったんや?
石田:そうですね。あと、スピードもランジャタイと比べてそこまで速くなくて。インディアンスは結構、言葉で攻めてて、ランジャタイは動きで、実は変化していってるところがわかりやすい。インディアンスは言葉で、たぶっちゃんはもともと流れやすいところがあるので、聞き取りにくかったりとか。
岡村:早いぶん、聞き取りにくかったりはするよね。
石田:そうなんですよ。やっぱりインディアンスも本気だったと思うので、ウケやすいボケをいっぱい放り込んでたので。ボケ終わったよっていう音とか、顔とかをわかりやすくしてたんで。それがお客さんからしたら、わかりやすいポイント。
矢部:もう、今インディアンスは「やめて!」って恥ずかしくなってる(笑)
石田:実は決勝の決勝で、インディアンスは漫才モラルを逸脱してる時があるんですよ。やはり、もう中をだした、とかM-1愛がある人からすると、「あれ、無しじゃない?」っていうところがあるんですよ。でも、これは確信犯なんですよ。ノンスタイルで言うと、リップクリームを使ったとか。あれも確信犯なんですよ。そこからはみ出してでも、今年獲りたかったっていうのがあるんでしょうね。
もも
ちょっと緊張顔やったんですよ。
石田:面白いですけどね!いつハネてもおかしくなかったんですけど、オズワルドから始まり、大ベテランもいて、インディアンスときて、そうなった時に、最初に出てきた時の硬さ。
岡村:うん、4年目やもんね!
石田:そうなんですよ。多少やっぱり緊張がにじんだ顔で、ちょっと緊張顔やったんですよ。
岡村:そりゃ教授、仕方ないですよ!
石田:そう、仕方ないんですよ。オズワルドとかも1年目、見てられないほど緊張してたんですよ。もっと出番が違ったら、また違うんですけど。インディアンスの後で、あんな漫才をバカにしたようなスタンスの漫才師の後で、出ると固くなるし。
決勝
オズワルド
石田:オズワルドがあと3個ぐらい大きな笑いがとれれば、行けたかもしれないので、逃げ切れる感じもあったにも関わらずですね。
岡村:3つ足りなかった!?
石田:はい…まあ、これはタイプがあって、1回戦でやって決勝でやるみたいな、一日で2回やる時に、「おせおせムード」になるタイプと「じっくり、どんな面白いネタやるんやろ?」って見られるタイプに分かれて。オズワルドは、じっくり見られるタイプなんですよ。
矢部:そうやな。
石田:インディアンスと錦鯉さんは、やっぱり前のパワーが残った状態で行けるんですけど。それもありましたね。
インディアンス
岡村:インディアンスは?めちゃくちゃ速くおりたよね?舞台。4分使えたところを3分半も行ってなかったんちゃう?
石田:まあ、僕も何度か言ったことあるんですけど、弱いボケ入れるぐらいなら、速く上がって来た方がいいっていうのは。
岡村:おお~。
石田:はい、ウケ逃げしたほうがいいと。インディアンスが今後どう勝ち上がるかっていうと、インディアンスはもう側はしっかりしてるんですよ。あの、本ネタの部分で、例えばキムだけは本ネタの部分をキープしようというところがあれば、もっとハネていくと思うんですけど、やはりたぶっちゃんに少し譲り過ぎてるところがあって、対立構造に見せといて、共闘タイプっていう、ややこしいやつなんですよ。
岡村:そうなのかあ…
石田:次は本ネタをもう少し肉付けして、周りで遊ぶといいかなっていう風に思いますね。
錦鯉
石田:力技でしたね。ほんまに後半はたまらんかったですもんね。勘弁してって(笑)ほんまに生で見てほしいですね。みなさんに。
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