『スラムダンク』井上雄彦の天才性がわかるエピソードまとめ

 『スラムダンク』の著者井上雄彦の天才性がわかるエピソードまとめてみた。

鳥山明(漫画家)

井上先生の絵のセンスはどんなに練習しても出来ない

鳥山:井上先生の絵のセンスはねえ、どんなに練習しても出来ないと思いますよ。デッサン力は勉強すれば身につくかもしれないけどセンスだけはどうしようもないところがあります。持って生まれたものに近いと思う。(週刊少年ジャンプ50周年記念対談 鳥山明×井上雄彦)

冨樫義博(漫画家)

HUNTER×HUNTER

 『幽遊白書』、『HUNTER×HUNTER』で知られる冨樫義博は、『スラムダンク』をこう評している。

『スラムダンク』は圧倒的に面白過ぎて殿堂入り

冨樫:僕も『SD』は大好き。仕事場に『今年面白かった本』のランキングを表にして貼っているんだけど、先日、全巻読み返した『SD』が圧倒的過ぎて殿堂入りに(笑)。特に後半からは絵のレベルがとてつもなく上がって…。

内田樹(思想家)

 思想家の内田樹は井上雄彦の顔を描くという技術は日本のみらならず世界で最高レベルとしながらも、本当に凄いのはそのキャラクターしか言えない言えない決定的な一言を見つけ出せることだと語っている。

そのキャラクターしか言えない言えない決定的な一言を見つける力の凄さ

『SLAM DUNK』流川楓の名言
『SLAM DUNK』安西先生の名言

今の井上さんの技術的な関心は、一人の登場人物の生身から絞り出されて来る決定的な一言をつかまえること、その語の奥行きと深さを担保する顔を描くこと、この二点に集中している。
「顔を描く」画力において、日本のみならず世界のマンガ家の中でも井上雄彦に伍する描き手はもういない。そのことは誰でもが認めるだろう。
でも、井上雄彦の天才性は、その「キャラ」以外の誰も口にすることがなく、それを口にしたことによって、その「キャラ」が「その人」自身になるような決定的な一言を探し求める真摯さのうちにむしろ存すると私は思う。
(内田樹の研究室よりhttp://blog.tatsru.com/2009/09/16_1011.html

夏目房之介(漫画批評家)

 漫画を学問のジャンルにまで昇華させた批評家、夏目房之介は、井上雄彦の漫画で後世に残るのは車いすバスケを描いた『リアル』であると激賞している。

『スラムダンク』にはすべてのテーマが入っている

夏目:本当にこの人、凄いなって思うのは、本当は『SLAM DUNK』に全部(テーマが)入ってるんですよ。武蔵(バガボンド)はさあ天才じゃん!で『SLAM DUNK』はさあ凡庸なやつが天才になる話じゃん。でも、(天才に)なる前は「欠けてる」んだよみんな。でね、この人が発展させられなかったテーマは「欠けてる」ってことなんだよ。『リアル』は欠けてることから始まるんだよ。で、ずっと欠けてるんだよ。これね、作家として自分が描くべきことを見つける力は凄い。しかもそれを同時に並行してやる力は普通はないと思う(笑)(NHK『漫画夜話』より)

『リアル』大衆的ではないテーマなのに、世間で売れる凄さ

夏目:結局、この人が描いてる世界の奥行きってこれ(『リアル』)が一番深いんですよ。この深さを立体的に僕らの体が感じられるように描けるとしたら、多分この形なんですよね。そういう漫画なのに、むちゃくちゃ売れてるんだよ。普通、そんなに売れないから。それだけの読者がこれを読んでるって、凄いことですよ。(NHK『漫画夜話』より)

山田玲司

 漫画家の山田玲司は、井上雄彦の『SLAM DUNK』での漫画の『描き方の変更』がその後にとてつもない影響を与えていると語っている。

『汗』と『目』の描き方を変えた

汗の描き方

『SLAM DUNK』特徴的な汗の描き方

山田:ご存知のようにこの点汗の描き方と

ーああ~~。

山田:それまでは「たら~り」っていう汗の描き方だったんだけど。

ーえ!初めてやったの!?

山田:初めてタケが始めた。

ーえ!!『刃牙』の表紙でもあったんですよ。めちゃくちゃ点汗全身って気持ち悪いやつ!

山田:あの2人は実はつながりはあるんで。対談の時に「ものすごい褒められた」って井上言ってたから。だから『刃牙』先生は井上の漫画大好きですね。(2018年1月10日『山田玲司のヤングサンデー』より)


目の描き方

山田玲司のヤングサンデーより
井上が発明した目の縁取り

山田:一番の問題点はここですね。目のところに縁取りが入るという。

ーはいはい。

山田:91年の『SLAM DUNK』以前にも無くはないんだけど、こんなになかった!これはさりげなく入れてるけど、もっとぐいっと入れると、永井豪になっちゃうんですよ。『デビルマン』の明君になっちゃうんですよ。でも、さりげなくここで抑えてたっていう。(2018年1月10日『山田玲司のヤングサンデー』より)

『デビルマン』(永井豪)

山田:あと、目は普通、白く抜くんだよ。でも、抜かない。全部、暗くするというね。『バガボンド』あたりで、ものすごく何度もやってるやつだけど。目を斜線で全部マットに陰にしてしまうっていうのも井上の革命で、これらがものすごくアニメの世界にも流行りとして続いていく。特に目の縁取りが続いていく。

(2018年1月10日『山田玲司のヤングサンデー』より)

『バガボンド』特徴的な目の描き方

 『山田玲司のヤングサンデー』井上雄彦の革命的な目の描き方についてはこちらの動画から
- YouTube

町山智浩(映画評論家)

読む時間と劇中の進行時間がほとんど同じ

花沢健吾の「アイアムアヒーロー」と奥浩哉の「GANTZ」は「スラムダンク」あたりから始まったリアルタイム(読む時間と劇中の進行時間がほとんど同じ)ドラマで、「24」の登場と関係あるのだろうか(町山智浩のツイッターより)

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