天才 漫画家 浦沢直樹の凄さと創作の秘密まとめ

天才 漫画家 浦沢直樹の凄さと創作の秘密をまとめてみた。

浦沢直樹の凄さ

ポン・ジュノ(映画監督)


 『パラサイト 半地下の家族』でカンヌ国際映画祭パルムドール受賞、アカデミー賞4冠に輝き、新作を切望されているポン・ジュノ監督は、かねてからの浦沢直樹ファンであり、浦沢作品の凄さをこう語っている。

映画を撮るたびに、浦沢作品を読んできた

ジュノ : 本当に以前から先生の作品は拝見してまして、約6年前に『ほえる犬は噛まない』のシナリオを書いてるときは、『HAPPY!』を片手に持って、読みながらシナリオを書いてました。前回の『殺人の追憶』のときは『MONSTER』を読んでいましたし、今作『グエムル/漢江〈ハンガン〉の怪物』は『20世紀少年』を片手にシナリオを書いていました。いつも楽しく拝見してます。今、お話を聞いたところだと、ずっと休まずにお仕事をされてるって感じなんですね。(ぴあ 浦沢直樹×ポン・ジュノ 対談より)


悪の描き方に共感を覚えた

ジュノ : 先生の漫画を拝見していて、特に暗闇の描写、夜や“悪”といった描き方に共感を覚えることが多くて。ヒューマニズムに根ざした作品でありながら、“善”と“悪”が対決するような時に“悪”のほうに力を入れて描かれているのかなと思ってました。私自身もけっこうそういうところがあるので、『MONSTER』を読んだときには特に強く感じました。(ぴあ 浦沢直樹×ポン・ジュノ 対談より)

『MONSTER』には圧倒された

ジュノ : 私が監督しました『殺人の追憶』も、犯人が分からない中で、それを追いかけていくような内容のものでした。『MONSTER』の第1巻で、ヨハンが成人して初めて登場するのが工事現場のシーンだったかと思うんですが、雨の中で主人公が出てくるっていうシーンでしたよね。あそこが衝撃的で圧倒されました。あと9巻も好きなんですけど、物語の中の物語っていう設定で子供の頃に読んでいた童話が出てきましたよね。その部分の暗闇の描写にも衝撃を受けました。悪や暗の部分ていうのは戦うためのものであると思うのですが、すごく印象的でした。

浦沢 : 悪みたいなものというのは、あまりにも力が強すぎる。監督の作品にもぼくの作品にも共通するのは、やたら食べてるシーンが多いんです(笑)。やたら食べて“悪”と対決しようとしてる感じがあるんですよ。僕も、とりあえず食べとけば対決できるかなとか思うんで(笑)。そういう感性が似てると思いますね。

(ぴあ 浦沢直樹×ポン・ジュノ 対談より)

北野武(芸人・映画監督)


 北野武は、自身の作品『TAKESHIS'』と浦沢の『20世紀少年』は似ているところがあると語っている。

北野 ペースというか、話の切りかえが同じだよね、この漫画、『20世紀少年』とおいらの映画。
浦沢 やっぱりビリビリきますよね。
北野 引っ張らないんだよ。展開ピュッと変わるじゃない。
浦沢 そうですね。
北野 この先どうなるんだろうというコマ、アップの顔で「………」が続いて、次のシーンにシュッと変わるでしょう。
浦沢 今回、武さんの映画を見て、これ、俺はわかるんだけど、お客さんはどうとるんだろうなあ、みたいなシーンが多くて。(2005年スピリッツ 北野武×浦沢直樹対談)

浦沢直樹の創作法

頭の中の壮大なものを描ききれないから未だ描き続ける

浦沢:描いた作品を友達に見せて『うまい』と言われても『分かっていないなあ……』と。プロと比べたら全然ダメですからね。今でもダメだな……と思っています。その頃からずっと、頭に浮かんだ面白い画面を描けば、面白くなるという確信はあるんですよ。でも、目標が高過ぎて、なかなか実現できない。頭の中はもっと壮大なんですよ。描き切れていない。だから描き続けているんじゃないかな」(2019年4月27日 『MANTAN WEB』より)

映画でも小説でも後半がどうなるか想像しながら見ていた

浦沢:「後半がどうなるかを想像するんです。見た人に僕が考えた後半の話をしたら、そっちの方が面白いと言われたことが何度かありますね(笑い)。映画でも小説でも、この始まりなら、こうなるかも、ああなるかもと常に自分なりのストーリーを考えながら見ています。子供の頃から純粋な客になったことがないのかもしれません。いつも作ることを考えているので」(2019年4月27日 『MANTAN WEB』より)

演技、感情表現を勉強した方がいい

浦沢:美術系の大学で漫画の描き方を教えていたことがあって、最初の授業で『描き方も大事だけど、同時に演劇学校に行った方がいい』『演技、感情表現を勉強した方がいい』と言っていたんです。感情というのは絵文字のように表現できるものじゃない。もっと複雑なんです。眉間(みけん)のしわの入り方、うつむき方、目線など微妙な演技によってキャラクターの感情をいかに伝えるか。演技を積み上げていくことで、感情が複雑になり、思ってもみないキャラクターになったり、ストーリーがふくらんだりします(2019年4月27日 『MANTAN WEB』より)

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