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北野武 映画は一体何が凄いのか?押井守が語る世界的評価の理由

北野武の映画は一体何が凄いのか?その根本に迫っている映画監督 押井守と映画評論家の町山智浩の発言をまとめてみた。

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その男、凶暴につき

映画的記憶から逃れて自在に撮っている。

 「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」で同じく日本で大衆には受けなかったが、世界的評価を獲得したクリエイターズクリエイター、押井守は北野武映画に対して、賞賛を惜しまない。監督処女作「その男、凶暴につき」を見た時の衝撃は、映画的記憶から逃れて自在な作品であることだったという。しかもそれを、明らかにわざとやっているということを著書「押井守の映画50年50本」で語っている。

明らかに意識して、映画的記憶から逃れて撮っている。

現場の思いつきでは撮ってないと思う。この映画の中盤で、逃げる犯人を刑事が追いかける場面があるんだけど。延々と走っている。互いに疲弊してさ。ひと休みしたりして。最後はボコボコにするんだけど。車で轢いて。それでも立ち上がってくる。あの場面だけでも充分スゴイよね。既存の映画の表現にいっさい囚われてないんだよ。(押井守の映画50年50本より)

 ハリウッドの映画の逃走シーンなら、必ず、塀を乗り越えるし、日本なら、飲み屋の汚い路地を走り抜けるのに、たけしは、なぜそんな映画的記憶から、逃れ、延々と走るなんて、見たことがないシーンが撮れるのか?それが押井の疑問だ。たけしの映画では、犯人のほうが、圧倒的に身体能力が高いせいで、刑事が、追いつかないのだ。

映画という表現に対して、自在。こんな監督は今まで見たことがない。

押井:こういうことを前々から考えていたというか、逆に言うと「なんでいままでの映画はこうなんだ?」という疑問をそのままかたちにしたんだろうね。
普通は、みんなどっかしらいままで見てきた映画をコピーしちゃうもんなんだよ。それこそハリウッド映画で塀を乗り越える場面をいまも繰り返しているように、無意識にコピーしちゃう。僕の「オンリー・ユー」もそうだった。でも、武はそうじゃなかった。映画という表現に対して自在だった。しかも監督デビュー作で、いきなりそれをかたちにしてしまった。こんな監督、いままで見たことない。デビュー作だからね。(押井守の映画50年50本より)

 映画評論家の町山智浩は、「その男、凶暴につき」に関して、WOWOWの解説番組で、押井と同じように、観たことがない奇妙な感覚の映画だと語る。

町山:これ、何がびっくりしたかっていうと、映画に詳しかったり、映画の現場にいる人が撮る映像じゃないんですよ。なんだろう、これ?っていう撮り方。なんだろう、これ?っていう編集の仕方。

物語上、必要のないカットが多い。

町山:例えば、たけしが刑事なんで、警察署の階段を登るシーンがあるんですけど。階段を登るシーンを下から撮ってて、それを追っかけて途中で切れてしまったり。他には、自動販売機でジュースを買うみたいなシーンがあるんですけど。全然、意味がないんですよ!素人が撮ったみたいなんですよ。そのシーンの意味の無さ。撮り方においての意味の無さ?正直、(編集で)切っちゃえばいいんですよ!(笑)切っても、全然話が通じるんですよ。

北野武でなければ、撮れなかった

町山:物語上、本当に必要のないシーンが多いんですよ!!これは、本当に、たけしさんじゃないと撮れなかった!!!これは、普通の映画監督だったら、もしくは編集とか業界に慣れている人がやったら、絶対に切っちゃうシーン!!そういうのが連続してて、非常に奇妙な奇妙な感覚なんですよ!!

暴力描写の独創性について

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 北野武映画の独創性は、暴力描写にあると押井は著書「勝つために戦え!監督稼業めった斬り」で語っている。

ーそれまでの深作(欣二)さんとか、日本の暴力映画の系譜から見ても・・・・。

押井:全然異質だと思うね。たけしの映画からは怒りとかそういうものをいっさい感じないし、むしろものすごく虚無的だよね。あの呆気なさというか、情もなければ怒りもない。人間の生な暴力っていうか。「ソナチネ」だったかな?エレベーターのなかでボカンボカンというのがあったけど「すげえな」と思ったもん。ああいうのはやっぱり日本映画の系譜には全然ないよね。ペキンパーとも違うと思う。(「勝つために戦え!監督稼業めった斬り」より)

ペキンパーの場合はもっと情緒みたいなのが出るからね。暴力そのものに悲しさみたいなのが出てくるけど、たけしにはないもん。ずっと虚無的なまんま。なんか風景のようにというか、みんな日常行為と同じように撮っているというかさ。もちろん明らかに意識的にやってる。あえてロングで撮ったりとかね。あるいはワンショット入ったりとかね。すごく「風景」なんだよね。だから、いわゆる日本映画の系譜外の人だよ、間違いなく。たぶん役者としていろんな監督の作品に出たって経験が、そういう部分で生きてるんだと思うよ。(「勝つために戦え!監督稼業めった斬り」より)

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