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宮崎駿と黒澤明の知られざる関係性まとめ

 世界に大きな影響力を持った映画監督 黒澤明と、ジブリで世界のアニメーション、ファンタジーに影響を与え続けている宮崎駿宮崎駿は、黒澤明作品に多大な影響を受けたと述べる一方、晩年の作品はこきおろしている。そんな両者の関係性についてまとめてみる。

宮崎駿は、黒澤明の「七人の侍」と「生きる」に多大な影響を受けた

黒澤明の映画に非常に大きな影響を受けた宮崎駿は、「七人の侍」についてこう賞賛している。

宮崎駿:僕はとてもいい映画だと思ってるんですよ。好きな映画なんです。(「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」より)

「生きる」について、宮崎はこう絶賛している。

宮崎:書類の山の前で、主人公の市民課の課長が書類をくり、判を押している。書類をくり、判を押し、処理済の書類に重ねる。次の書類を取り上げ、チラッと目を走らせるが、読むほどの必要がない事は先刻わかっている。また判をとりあげ押す。その男の背後に積み上げられた厖大な書類の山。陰影の濃い画面、悲しい仕事を正確に律儀にくり返す男の所作。胸を衝く美しい緊張感と存在感溢れる映像である。これは正座して観なければならない映画だと、その瞬間に思った。ひとりの映画監督が生涯に何本とつくれないフィルムに、今出会っているのだと実感したのだった。(出発点 1979~1996)

宮崎:「生きる」には名場面といわれるシーンがいくつもある。けれども、自分にとっての「生きる」は、書類の山と判を押す男の、このショットに凝縮されている。本当に、なんて美しい映像だろう。なんという映像を、かつて日本の映画を持っていたのだろう。くり返し思い出す。何度も自問してみる。どうして、そんなに感動したのか。あのショットの力の秘密は何処にあるのだろうかと。(出発点 1979~1996)

黒澤明宮崎駿の対談

 黒澤明宮崎駿は、1993年に直接対談も行っている。行われた対談の模様は『何が映画か―「七人の侍」と「まぁだだよ」をめぐって』という一冊の本にまとめられている。宮崎駿が萎縮し、黒澤明から話を聞き出すインタビュアーのように接しているのが、印象的だ。 

宮崎駿黒澤明の絵を上手だと褒める

宮崎:(黒澤明の絵コンテ集を見て)お上手ですね。
黒澤:え!?
宮崎:お上手ですね。
黒澤:え
宮崎:上手ですね。
黒澤:いやぁ、うまいとは思わない。まあでも、昔は絵描きになるつもりだったでしょ?で、絵の勉強をしていて夢はパリで、個展を開くことだったわけ。影武者でこういうものを書いたら、梅原さんが褒めてくれて、ピエールカルダンが気に入ってくれて、向こうで個展をしたわけですよ。で、ルーブル美術館から人が来て、講演してくださいって(笑)え、僕は絵描きじゃないですよ!って。変なことで夢がかなって(笑)
宮崎:そうですね(笑)

黒澤が否定する映画の作り方「モンタージュ理論

黒澤:モンタージュ理論っていうのは、多分に欠陥があるんですよ。間違ってるところがね。
宮崎:あの、モンタージュ理論ができあがってくる過程で、できたものは凄かったですけどね。
黒澤:うん。やっぱりね俳優さんが演じてるんですよ。そうじゃなくて、俳優を物体みたいに考えてることが、まず。共産主義体制の人間を認めてないでしょ?それと同じですよ。それをルビッチかなんかが痛烈に批判してますけどね。
宮崎:う~ん、なるほど。
黒澤:そこからにじみ出るものが、面白いわけで、俳優は物体じゃないんですよ。

モンタージュ理論とは、前後の映像(カット)を入れ替えることで、観客が感じる「意味」が変わってくるという映像理論である。黒澤、宮崎ともに、モンタージュ理論には否定的。対談の中にもあるが、黒澤は、モンタージュ理論的に、俳優を物体として、とらえ、指示する助監督を現場で、怒鳴りつけたというエピソードもある。
モンタージュ理論の詳しい説明はこちら↓
swingroot.com

黒澤は「となりのトトロ」がお気に入り

黒澤:トトロのバスなんか、好きだったなあ
宮崎:あっ(恐縮し照れている)
黒澤:あれは面白くって。
宮崎:いやぁ。
黒澤:ああいうことは僕みたいに(実写の)映画を撮ってる限りできないことですからね。
宮崎:ああ、そうですね。
宮崎:自分は都会育ちなもんですからね。自分が若い頃には、戦争は終わったばかりでしたから。子ども時代に日本は貧乏でどうしようもない国だっていうのが(笑)そればかり聞かされて、そう思って生きてきた。外国に行って初めて、自分が日本の自然が好きだなってことに気がついた状態でした。アニメーションでも外国を舞台にしたものばかりでしたから。一度、日本を舞台にしなきゃいけないなって、それで「トトロ」をつくったんです。

ちなみに、黒澤明は、高畑勲監督作「火垂るの墓」を鑑賞し、感動して、宮崎駿に間違って手紙を書いたのだという。宮崎駿作品だと勘違いしていたのだ。
手紙には、ラピュタも、トトロも素晴らしいが、「火垂るの墓」が最も良い。と書かれてあったという(笑)
↓詳しくは、鈴木敏夫と、黒澤明の娘の対談から
radiotalkrecording.blog.fc2.com

宮崎、時代劇のつくり方を黒澤に相談

 宮崎が対談当時に構想していた時代劇、これは後に「もののけ姫」として公開されることになる作品の相談をしている貴重なエピソード。

宮崎:時代劇を一度、つくってみたいと思うんですけどね。
黒澤:え?
宮崎:時代劇を一度つくってみたいんですけど、難しいですね。これはどうしたらいいかわからない。
黒澤:あれはね。僕がとっても面白いと思うのは、戦国時代っていうのはね殿様に対して忠義を尽くさないといけないとかね、モラルがあるでしょ?
宮崎:はい。
黒澤:あれは徳川時代になって、自分のためにつくっていったもんで。あ、この主人だめだってなったら、「裏切り、ごめん」っていって。平気でやってるんだよ。そういう考え方が大事なんですよ。それを描いたのが、面白いと思うんですよね。よくシェイクスピアを上手く翻案してっていわれるkど、違う、マクベスみたいな人がいたんです!と日本にも。だから、わりとすんなりシェイクスピアみたいになりますね。日本の話。

黒澤:シェイクスピアやったらどうですか?面白いのたくさんありますよ。
宮崎:あ。いや。・・・・あのまず何を着て、何を食べてたのかっていうところから入らないと。
黒澤:それはね、割とありますよ。献立に書いたものとかね。
宮崎:室町っていうのはどうですか?
黒澤:室町はね、いい時代だけどね。
宮崎:南北朝でむちゃくちゃになりますよね。あの時代はどうなのかなとか。
黒澤:そうだね。あんまり遠くなるとね、よくわかんなくなるけど。やっぱり平家だったら、そっくり残ってるわけだから。
宮崎:そうですね。あの時代の平安末期の京都の惨状っていいますかね。方丈記にかいてある。死屍累々、大火は起こり、地震は起こり、あわてて戻ってきたら、屋敷が荒れ放題とか。
黒澤:「羅生門」の時代は面白いですよね。
宮崎:あれは、子どもの時にみたら、こわかったですね!!(笑)映画っていうのは、記憶に残っているのは、楽しい映画っていうより生きるに大変だっていうもののほうが、記憶に残るもんですね。

後に宮崎駿黒澤明をこきおろす

終始、宮崎駿黒澤明に気をつかいまくっている対談であったが、後に宮崎は、別の対談本で黒澤明をこき下ろしている。
宮崎が批判したのは、黒澤から多大な影響を受けたフランシス・フォード・コッポラジョージ・ルーカスが外国語プロデューサーとして、企画した「影武者」カンヌ国際映画祭でもグランプリを受賞した作品である。
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(影武者あらすじ)巨匠・黒澤明監督が手がけた戦国スペクタクル巨編。武田信玄の影武者として生きた男の悲喜劇を荘厳にして絢爛な映像で描く。戦国時代。家康の野田城攻めの折り、鉄砲で撃たれこの世を去った武田信玄。弟信廉は信玄死すの報を打ち消すため信玄の影武者を立てる。男は盗みの罪から処刑されるところを信玄と瓜二つだったことから助けられたのだった。だが男にとって戦国の雄・信玄として生きることはあまりにも過酷だった......。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞

そんな、作品を宮崎はこう評している。

「影武者」からやめればよかったのに

宮崎:作るのやめればよかったのになんて・・・・「影武者」からやめればよかったのにって思ってるんです。本当に。僕は「椿三十郎」でもちょっとヤバいな。って思ってたぐらいですから。
インタビュアー:あれでヤバいんですか?
宮崎:ヤバいですよ。絶対ヤバいと思う。映画を作る人たちっていうのは、近代人だったんですよ。それが、近代人の心じゃなくなったっていう。いや、僕の妄想かもしれませんけど・・・・・。だから、日本の映画のモノクロ時代の頂点っていうのは、その次代の知識人だとか、近代人であろうとした人たちが映画作ってたんじゃないかって、そういう気がすますけどね。そう思いませんか?(「風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡」より)

日本的なものをやろうとしてたわけじゃないと思うんですよ。むしろ日本的じゃないものをやろうとしてたってことがあるんじゃないかな、って勝手に思ってますけど。それは、例えば、黒澤さんにとってはロシア文学であったり、シェイクスピアであったり。まあ、そんな話はどうでもいいいんですけど。だから、今の映画人は基本的にそうじゃなくなってるんじゃないかなって・・・・・(「風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡」より)

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