爆笑問題 太田光がおすすめする作品まとめ 太田が褒めると本や人が売れる

 出版・マスコミ業界には、「太田売れ」という言葉が存在して、爆笑問題の太田さんがTVやラジオで良いと言った商品や役者が売れるという逸話があるらしい。
ぼくも爆笑問題の事務所の名前の由来となった「タイタンの妖女」や太宰の作品なんか、太田さんがラジオでおすすめしてたものを買ってよく読んでいた。
太田さんが過去褒めていたものをまとめてみる。

日本文学

角田光代「八日目の蝉」

爆笑問題日曜サンデー、角田光代出演回にて

太田:これは…もうここ10年、20年かなあ…読んだ中でも最高傑作だと言っています。方方で言っています。
角田:もう、本当にありがとうございます。本当にありがとうございます!もう。
田中:こう見えてもね、本はめちゃくちゃ読んでますのでね!
友近:私も、太田さんに薦めていただいて、私、普段、本はあんまり読まないんですけど、すぐ読めまして、次が見たい!次が!って本当にぞくぞくしましたね。

太田:僕は、「対岸の彼女」から、エッセイなんかもずっと読んでるんですけど、ちょっと!また違いますよね「八日目の蝉」というのは。サスペンスの部分が入ってきてて。それはなにかあったんですか!?
角田:えっと、あれ新聞の連載だったんですね。初めての新聞連載なので、今までと違うことをしようというのがまずあって。今まで割と生活の描写が私は非常に得意で、「大根が安いとか、高いとか」書くのが得意で、生活と対極にあるもので、なにか書こうと思って「犯罪」かなっと。
太田:僕は、理想の小説はこれだ!って思ったんですよ。小説を描くときに色んなキャラクターとか、小説っていうのは、必ず悩んで、どうやってその問題を解決していくかっていうのが、大体のところですよね。あんまり言っちゃうとなんですけど、どっかで反則をしなきゃならない部分があると思うんですね。この主人公を生かすために、こっちのキャラをおとさなきゃならないっていう。本来の理想的な小説って、それがないものだと思う。八日目の蝉はすべてのキャラクターが「人間」なんだってことで。それは、悪いこともすれば、いいこともするんですけど。そこに共感もできるっていう全てのキャラクターに納得できる形で埋め込めてるところが一番いい描き方だと思うんですね。物語としてもサスペンスとしても楽しめる。
田中:角田さん、どうですか?(笑)
角田:いや…私ちょっと泣くかもしれない(笑)本当にありがとうございます。

川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」

爆笑問題、日曜サンデー、川上未映子出演回にて

太田 ぼくはねえ、角田さんが来た時も言ったけど、小説ってね、今ここが幸福っていうところが表現されてると、もうそれだけで参っちゃうんだよ。その後どうなるかどうかは別として、こういうとき、この瞬間が幸福ですよねっていうのがリアルに表現されてるともうめろめろになっちゃて後はもう捨てちゃう。
田中 捨てちゃうじゃねえよ、読めよ。
川上 あははは(笑)

川上 いま太田さんがおっしゃったように、今その瞬間の方向性、この後どうなるとか、例えば結婚してそのあと子供ができてとかいわゆる物語の幸せとかじゃなしに、あんまそういうことに興味ないんですよ。その一瞬で誰にも説明できなくても誰に共感してもらえなくても、その時、どわーときらめいたものみたいなのが私は一番大事だと思っているところがあるので、今頂いたご感想すっごく嬉しいです。ほんとこの小説書いてよかったなと思いました。
太田 でしょう。
田中 でしょうじゃねーよ。そこは謙遜するところだろ!(笑)

太田 おれなんかさ、おんなじことを表現したいと思うんだけど、もう乱暴なんだよね、言葉が。例えばひとつのこの柿ピーをさ表現するときに、柿ピーっていっちゃうんだよ。でも川上さんはさ、やっぱり言葉に愛されてるから、柿ピーって言わずにこれを細かくひとつひとつ数字に直していく要するにフォトンとかそういうことを積み重ねていって文学表現に構築しているんだよね。その丁寧さがおれにはとてもできない。こういう人が芥川賞をとって、そのうち色んな賞もとると思うんだけど、そのことはすごく幸せ。村上春樹みたいなのが売れてるのはすごく気に入らないけど
田中 はははは(笑)

村上龍「半島を出よ」

村上春樹とは全然、真逆だって感じがするのね。龍さんのは、まさに現実を今起きていることを、例えば「半島を出よ」でも、一時期から経済っていうことを抜きには小説書けないってことで、どんどん取り込んでいくじゃないですか!?現実がこうなんだから、それにどうするか。自意識のゆれから飛び出して、現実、今の社会でどう生きるってとこで、もがいたり、転んだり血だらけになったりするんですよ。(爆笑問題 日曜サンデー 村上龍出演回2013年 より)

五木寛之「青年は荒野をめざす」

ナチスがユダヤ人の少女の皮を剥いでランプのシェードにした。そんな残虐なことをやった連中の演奏した音楽に、ユダヤ人が感動してしまうという場面が出てくる。僕は、こういうことは、よく起こり得ることだと思うんです。感動というのは善悪を超越したところで起こるものだし、僕らはそれを体験してきたと思う。(太田光・中沢新一「憲法九条を世界遺産に」より)

三島由紀夫 「金閣寺」

 金閣寺放火事件を題材に、犯人である寺の僧の内面を分析し、描いた三島由紀夫の傑作。
爆笑問題カーボーイでの太田の解説。

太田:主人公は寺の息子なんですよ。父親から、この世界で一番美しいものは金閣寺である、と。
田中:うんうん。
太田:もちろん金閣寺の息子じゃないんですよ。要するにお寺のお坊さんからしたら、金閣寺っていうのは頂点なわけですよ。
田中:まあね。
太田:寺の息子だから、ずっとそう言われてくるわけですよ。もちろん、パンフレットなんかで金閣寺の写真は見たことがあるけど実際に金閣寺を見たことのない少年が、ずっと頭の中に金閣寺を思い描くっていう始まりなの。
田中:うんうん。
太田:そっから、息子が金閣寺に実際、お坊さんとして、見習いとして行き、金閣寺を見るってとこになるわけだけど。その主人公の青年は、頭の中で描いている金閣寺っていうのは、全く汚れのない究極の美なんですよ。初めて金閣寺を実際に見ると、頭の中の金閣寺の方が綺麗なんですよ。
田中:ああ、でもそれわかる。
太田:簡単にわかるなよ!(笑)

太田:こっちが本当の金閣寺になんだと。これが美しくなきゃおかしいと思うんですね。でも、実際の金閣寺はどう見てもつまらないんですよ。金閣寺で生活するようになってから、一体、「美」とは何なのか?その追求が始まるんですよ。
田中:うん。
太田:ある瞬間、ある瞬間で、頭の中の金閣寺より本物の金閣寺が輝き出すことがあるんですね。それは音楽が鳴っている時。尺八なんですけど。音楽が流れ出すと、突然、金閣寺が輝き出すんですよ。三島は、「音楽っていうのは、すぐに消えていくものだ」と言ってるんですよ。メロディ、旋律っていうものは聞いたそばから消えていきますよね。「絵」っていうのは、ずっとありますよね。金閣寺はずっとあるという点で「絵」と同じ。つまり、「音楽」っていうのは「時間」なんですよ。そうすると、金閣寺っていう何百年も静止して立ち続けている「不滅」の金閣寺に音楽が流れた瞬間、「有限」になるんですよ。
田中:ふんふんふん!はい。
太田:つまり、そこに「時間」が足され、「滅びゆくもの」になったんだよ。その瞬間、輝き出すんです!
田中:深いね。

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」

太田:この「銀河鉄道の夜」は、僕は小説っていうのは1回読むと読まないんだけれど、なぜか何年かに一度か読み返すんですよ。凄いんですよ、これが。要するに、地球だ宇宙だ、生き物だ動物だなんだって、全部いいなって思える、すばらしいなって思える、きれいな文章。僕が日本の文学の中で信頼できる作家っていうと、太宰治と宮沢賢治、日本の文学だとこの二人なんですね!(「爆笑問題のススメ」最終回 「死ぬまでに読め!のススメ より)

太宰治「晩年」

 太田は、太宰治を「ものすごい才能の塊のような人」と激賞する。太田自身が誰にも言わずに秘密にしていた自意識のことが、「晩年」に描かれていて、衝撃を受けたと語っている。

読んだときに、ここに書かれていることはまさか誰も知っているはずがない事だと思っていた。自分のことが書かれているような気がした”こんなことを他に知っている人がいるの?と。
どんなことかと言うと、例えば子どもが人にうけようとするために、我々みたいに、勉強もスポーツもできない人間は、わざとしくじったり、知っているのに知らない振りしたり、無意識のうちに僕は、子どもの頃にやっていたんです。それは、「こうすれば大人に、仲間に受けるだろう」というのを自分の中だけの秘密にして、絶対にこれは誰にも言えない、おそらく他の人はこんなことをしてないだろうと思って、ずっと自分だけの秘密にしてきた。でも意識的にしていない無意識のことが、「晩年」を読んだら、まさに太宰治がそこに全部告白していたのね。太宰は「道化」と言いますけれど、”自分はそうやって他人に受けてきた”と、”そうやって他人の注目を浴びてきた”と。「そんな自分のいやらしさが嫌で僕は死ぬんだ」と書いてあったんです。(「爆笑問題のススメ」最終回 「死ぬまでに読め!のススメ より)

太宰治 「右大臣実朝」

太宰が得意なのは、パロディーなんですよ。『新ハムレット』はハムレットのパロディーで、『お伽草紙』ではカチカチ山や舌切り雀、浦島太郎などをパロディーとして書き直している。『右大臣実朝』もパロディー路線というか、源実朝が暗殺されたことを書いた歴史書の『吾妻鑑』を現代語訳して、どういう背景があってこの人が暗殺されたのかを物語としてすごく引き込む感じで書いている。(太田光を変えた5冊 News weekより)

太宰治「駆込み訴え」

たとえば、「駆込み訴え」という短編に登場するのはキリストとユダ。延々とユダの独白が続いていくんだけど、要は、なぜユダがキリストを裏切らざるをえなかったのかという物語なのね。作者である太宰はユダの側に立っていて「キリストは無垢で美しくて理想的だけれども同時に残酷でもある」みたいなことをユダに言わせる。そんなユダを許したい気持ちが太宰にあることを読者は感じ取る。「人間失格」もそうなんだけど、太宰は未熟な人間を描くと同時に、その憧れである無垢な人物も登場させて、そのふたつの振り幅で人間というものを表現している。(太田光「しごとのはなし」より)

太宰治「富嶽百景」

未熟な人間として自分を描き、ピュアさの象徴として富士山を描いているほどだから。「富士はよくやってるな」と、その無垢さに憧れながらも、自分の嫌らしさを嫌悪するんだけど、俺にはすごく共感できた。(太田光「しごとのはなし」より)

島尾敏雄「死の棘」

 夫の不倫を糾弾するうちに精神に異常をきたした妻。夫婦の絆を問う作者の実体験に立脚した壮絶な記録。三島由紀夫は本作を激賞し、小栗康平監督による映画は、カンヌ国際映画祭審査員グランプリを受賞した。

太田:よくうちだけがこんなって思うじゃないですか。でもこういう夫婦もいたと思うとちょっと気が楽になる。多かれ少なかれどこの夫婦でも、修羅場というものはある。(2014年11月5日 NHK あさイチ「知らなきゃ損する!?変わる“本の世界”)

司馬遼太郎「竜馬がゆく」

司馬さんの考え方は抜けがいいというかね。読んでいて気持ちいいですよ。(情熱大陸出演時)

島崎藤村「家」

 太田が、ひとりも友達ができなかった高校時代、島崎藤村にハマり全作読み尽くしたのだという。ただ、なぜそこまで藤村にハマったのかは今ではよくわからないと語ってもいる。

太田:当時も今も島崎藤村の作品を全部読み尽くした高校生って珍しいと思いますよ。だってツマんない内容だから(笑)。たとえば「夜明け前」にしても、舞台は明治維新なんだけど、坂本龍馬すら出てこないような、地味なストーリーなワケです。ー中略ー
ーそんな藤村作品になぜ、ハマったんでしょう?
太田:島崎藤村に「家」っていう作品があるんです。主人公が家長を継がなければならないってことを悩むってだけの話で、要はどうでもいいことで悩んでるんです。その頃の俺が藤村に共感したのは、「どうでもいい悩みごとでもこうやって作品になり得るんだ」ってところだったんです。(爆笑問題 太田光自伝 より)

島崎藤村「新生」

上下巻の大作で、ここでの藤村は初めから終わりまで、自分の姪を愛してしまった事で悩み続ける。ちなみにこれは出た当時「告白文学」といわれ、話題になったらしいが、現代の高校生が読んでワクワクするような内容では決してない。(太田光「三三七拍子」より)

亀井勝一郎「青春について」

「青春について」は俺のバイブル的存在なんだけど、その恋愛論も素晴らしくて、いわく「失恋した人というのは、遺族と同じだ」と。当時、中学生だった俺は、まだ失恋の経験なんてないくせに「そういうもんなのか!」って思ったのをいまだに覚えている。(太田光「しごとのはなし」より)

同書において、亀井勝一郎はこんな言葉を綴っていた。「失恋した人は遺族と同じなんだから、それを癒やす方法などありはしない。ただひとつ言えるのは、とにかく体を疲れさせて毎日眠ることだ」恋愛相談に対するノウハウの章でもあったはずなのに、「癒やす方法はない」と言い切っちゃうのもすごいけど、中学生の俺は、それって真理だよなと思った。要は、失恋の痛手は遺族になるのと同じぐらい深くて時間しか解決してくれない。(太田光「しごとのはなし」より)

向田邦子「かわうそ」

この小説には、向田邦子作品のすべてが凝縮されている。全作品にちりばめられた、日常の残酷さ、滑稽さ、無邪気だからこそ怖いところ、ちょっとしたいやらしさなど、すべてが詰め込まれているのだ。 また、人間が触れられたくない、見たくない部分を創作にとりいれたのも向田さんならではだが、この小説では、旦那が倒れて奥さんが生き生きしているなんて、「人間にはこういうところがあって、そこを表現するんだな」と気づかされて驚いた。短い文章で隙がない。見事。(太田光「向田邦子の陽射し」より)

「かわうそ」は、13の短編集「思い出トランプ」に収録

向田邦子「三枚肉」

セリフがうまい。とくに「ダダダダ」はしびれる。テレビ的で、文字から生き生きと表情まで浮かぶ。その上、楽しくて、しかも一番怖いシーンだ。こういう場面を向田さんは、きれいに描く。演出家や女優なら誰しも、この場面に惹かれるだろう。私も自分がドラマを撮る人間だったら、ぜひ撮りたい。(太田光「向田邦子の陽射し」より)

「三枚肉」は、13の短編集「思い出トランプ」に収録

向田邦子「男眉」

手洗いの場面は、ドキドキする。妹が義兄に「嫌ねえ、義兄さん」と言いたげに目だけでうっすら笑うところが妙にエロティックだ。手洗い、要は下ネタで、男慣れしている妹としていない姉の対比やその場の人間模様を、向田さんは一瞬で描きだす。(太田光「向田邦子の陽射し」より)

「男眉」は、13の短編集「思い出トランプ」に収録

西田幾多郎「善の研究」

要するに、生きることと死ぬことと善と悪が同時に存在しているってこと。(情熱大陸出演時)

海外文学

J・Dサリンジャー「フラニーとゾーイー」

 シーモアを失ったグラース家の兄妹フラニーとゾーイーの「生きること」を巡って延々と議論する青春小説の傑作。

太田:「フラニーとゾーイー」というのは、グラース家の人々を題材にいくつか小説を書いているんです。それはグラース家サーガっていって、「ナインストーリーズ」最初の短編があるんですけれどそ、最初に「バナナフィッシュにうってつけの日」という短編があるのね。そこで、シーモア・グラースという少年が出てくるんです。彼は天才なんですね。それで少女と海辺で話すという、何のことはない小さい短編なんだけれど、その最後でシーモアが突然自殺するっていう衝撃的な幕切れの短編があって、そこから色々他の短編を読むと、全部グラース家の人々の、シーモアが海辺のホテルで自殺したって事の事件の後のグラース家の人達がどういう混乱をしたかっていうのを全部小説にしてあるんです。(「爆笑問題のススメ」最終回 「死ぬまでに読め!のススメ より)

あるレストランで(フラニーが)恋人と会話してるところから始まるんです。恋人はちょっと気取った奴なんです。そうするとフラニーは頭の中に、理想はシーモアと言う人が死んじゃったって人がずーっとあるわけで、そのトラウマみたいなものがあって、どうしても目の前にいる彼とおにいちゃんを比較しちゃうんだね。どうしても小さい人間、嫌らしい人間に見えてしまって嫌だと。だけど、こいつに怒るんじゃなくて、フラニーはそんな自分に怒っているわけ。なんで、私あのお兄ちゃんの事ばっかり考えているんだろう?。こんなんじゃ人と接する事が出来ない。あんな人はいないんだから”って思いつつも、どうしてもそれを人を好きになれないんだよ。(「爆笑問題のススメ」最終回 「死ぬまでに読め!のススメ より)

フラニーとゾーイの兄弟の会話っていうのが延々と続くんだね。それがもう、大論争なの。「人間の嫌らしさとは何か」やフラニーは「そんな事で寝込んでいるけれど、おまえの方が嫌らしい馬鹿野郎!」ってのから始まって、「彼氏はどうだか判らないけれど、シーモアなんてあんなのは糞だ。おまえはそんな事じゃ生きていけない」など延々、フラニーを責め続ける。フラニーは、「もういいからあっちへ行ってお兄ちゃん」って、もう、もの凄い喧嘩。この1冊全部それです。で、結局ね、最終的にどこまで行くかっていうと、シーモアって言ってみればフラニーにとっては『神』であり、ゾーイはそれを、一生懸命…自分もシーモアに影響受けているんですよ、自分も悩み抜いているわけですよ、ゾーイってのは、フラニーより先に。だけど、「それはダメなんだ」と。「シーモアってのはそんな奴じゃなかったよ、そんな綺麗な奴じゃなかったんだよ」。(「爆笑問題のススメ」最終回 「死ぬまでに読め!のススメ より)

ジョン・アーヴィング 「ガープの世界」・「サイダーハウス・ルール」

 ジョン・アーヴィングの作品は、太田が、「おすすめの本を教えてほしい」と芸人仲間やタレントに聞かれた際に、すすめる本だという。ちなみに、太田は、ジョン・アーヴィングと対談を行っている。アーヴィングがサリンジャーを嫌っているのが意外だったという。

ジョン・アーヴィング 「未亡人の一年」

『未亡人の一年』は、幸福と不幸が交錯する物語だ。 アーヴィングの作品を読んでいて、いつも思う事は、人間は、どうしてこんなに幸福を感じる事が下手くそなんだろうという事だ。人間はいつも、自分が幸福かどうか、脅えながら生きている。過去の自分より、今の自分の方が幸福と言えるだろうか? 未来の自分は、今より幸福になれるのだろうか? と。 『未亡人の一年』を読んで思った。幸福とは、自分が幸福である事に気づく事だ。(太田光「三三七拍子」より)

カート・ヴォネガット 「タイタンの妖女」

 爆笑問題の事務所「タイタン」は、この小説のタイトルから、つけられており、太田光が最も敬愛する作家であり、作品である。

太田:今まで出会った中で最高の物語。(情熱大陸出演時)

太田:「タイタンの妖女」という小説は、時空も星も全部超越した壮大なストーリーでありながら、最後は「人間なんてその程度のものさ」という、笑いで物語を終わらせている点がすごい。「タイタンの妖女」は、「着想」もすごくて、神の視点でもないし、全然違うところから冷静に全部を茶化している。「そこから見ますか!」っていう視点のポジションね。読者である俺からすれば、「着想するにしても、そんな居場所があるなんて知らなかった!」ていうすごさ。で、その「着想」を軸に「物語を紡ぐ」んだから、そりゃあすごすぎるよなあって。(太田光 しごとのはなし より)

カート・ヴォネガット「ガラパゴスの方舟」

核戦争によって、ほとんどの人類が滅亡。ガラパゴス諸島で生き残った一部の人間が、どんな進化を遂げたかという話。

戦争から何万年か後、人間はアザラシのような体になっている。日がな一日、たいした会話もせず、海岸でゴロゴロと甲羅干しをして過ごしている。たまに誰かがオナラをすると、その周りで笑いが起きる。人類の行き着いた果てにあるのはそんな光景だった。ー中略ー人類は馬鹿で滑稽だけど、そんな人間を神は結構気に入っているのではないだろうか。読んでいていそんな気持ちになる。環境破壊を止めようなんて事は、今更言われなくても解ってる。大事なのは、愚かな人間が、愚かな自分達を好きになる方法だ。(太田光 「天下御免の向こう見ず」より)

トルーマンカポーティ「冷血」

 トルーマン・カポーティの傑作。実際に起きた殺人事件の犯人に直接、取材し、事件の発生から、死刑になるまで加害者を自身の想像力を含めて克明に描いた。この手法は、「ニュージャーナリズム」と呼ばれ、全世界にフォロワーを生み出した。

太田:ノンフィクションにおける嘘も書き手の主観が入る以上、(嘘は)存在すると思う。嘘と言ってしまうと言葉が適切ではないような気がするけど、たとえばトルーマン・カポーティの『冷血』。1959年、カンザス州で一家惨殺という凄惨な事件が起きる。カポーティは徹底的に取材を重ねる。その取材は加害者であるペリースミスにも及んだ。その際、カポーティは録音機材を使わずに、まぁ、メモぐらいはとったのかもしれないけどペリースミスとの対面で自分が感じた衝撃を『冷血』で描こうとした。だから、カポーティは同作品をノンフィクションとは謳わずに「ノンフィクションノベル」と名付けている。あくまで小説であると。ということは、想像で書いている部分があるわけなんだけど、俺は、作者の想像が含まれているからこそ『冷血』にはリアリティが宿っていると思う。言ってみりゃ、事実からは遠ざかったとしても真実には近づける場合がある。書物ではなく絵画でもそうで、1937年のスペイン内戦の悲惨さを描いたピカソの「ゲルニカ」にしても、写実的にではなく抽象的に描いているからこそ、見る者の心を打つ。(太田光「しごとのはなし」より)

冷血

冷血

  • ロバート・ブレイク
Amazon

アイザック・アシモフ「われはロボット」

これはロボットSFの先駆け、ロボット3原則っていうSF界にとっては大事件なんですよ。これをもとに鉄腕アトムが生まれた。(情熱大陸出演時)

L・M・モンゴメリ「赤毛のアン」

「赤毛のアン」の主人公アンは、孤児院で育ちながらいろんな本を読み、世界がとてつもなく広く、世界が自分のいる世界だけじゃないことを知る。頭の中で空想し、あらゆる場面を想像することで、自分を満たすことを覚えた。アンの豊かで無限の想像力は、ニヒリズムを圧倒し、そのアンの様子を見る読者の命さえ救う。現実は想像の邪魔を出来ない。(太田光「芸人人語」より)

ミゲル・デ・セルバンテス「ドン・キホーテ」

 全世界のあらゆる文学に影響を与えた傑作。「カラマーゾフの兄弟」で知られるドストエフスキーは、「これまで天才によって創造されたあらゆる書物の中で最も偉大な、最も憂鬱な書物」であり、現在までに人間の精神が発した、最高にして最後の言葉である」(『ドン・キホーテの旅 神に抗う遍歴の騎士』 中公新書)と激賞し、自身の作品に大きな影響を受けたと語っている。

太田:ドン・キホーテはもう狂ってるわけですよ。だから風車が竜に見えてそこにこう行くわけだけどこんな面白い物語は無いんですよ。読んでいて。言ってみりゃだって人間が経済がこんななって自然が崩壊してとかって人間がおかしいって言うけど人間なんて狂ってるようなもんじゃないですか?テレビの世界だってお祭りじゃないですか。だからそういうところにはいたいと思う。(情熱大陸出演時)

アイザック・ディネーセン 「アフリカの日々」

 ヨーロッパの貴族に生まれたディネーセン自身が、結婚を期にアフリカへ移住しコーヒー園を経営し、苦難を乗り越えながらたくましく生きる姿を描いた世界文学の金字塔。ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ共演の、アカデミー受賞作品映画『愛と哀しみの果て』の原作。

太田:頭もいいし、勇気もあるし、覚悟もある。すっと背筋を伸ばして立っている姿が思い浮かぶ感じで、女性としてかっこいいというのはこういう人なんじゃないかな。(2014年11月5日 NHK あさイチ「知らなきゃ損する!?変わる“本の世界”)

ジョセフ・コンラッド 「ロード・ジム」

 フランシス・フォード・コッポラの傑作「地獄の黙示録」の原作である「闇の奥」が有名なコンラッドだが、太田はこの「ロード・ジム」に共感したのだという。

主人公は水夫。ある日、乗船していた客船が転覆する。水夫は、船長に言われるままに、乗客よりも先に救命ボートで逃げてしまう。なんとか命は助かったものの、裁判により「責任放棄」と弾劾される。結果、彼はそれまで住んでいた社会から弾き出されて未開の南の島にたどり着く。その地での彼は、逃げ出してしまった自分を悔いながら、第二の人生を歩んでいくんだけど、そのうち島民から英雄的扱いを受けるようになるのね。ところが、その未開の地を狙って大国が侵略してくる。そこでジムは「今度こそ逃げない!」と誓うわけ。結果、彼は英雄として死んでいく。生まれつき気高い魂を持ってたわけではない主人公が、自省して、同じ過ちを繰り返さないという物語に俺はすごく勇気づけられた。(太田光「しごとのはなし」より)

マーク・トウェイン「トム・ソーヤーの冒険」

私の初めての読書体験は、子供のことに読んだ、マーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」だ。いたずらっ子の少年トムが親友のハックルベリー・フィンと一緒に、様々な冒険をする話である。読んだのは小学校の低学年の頃のハズだから、かなり遠い記憶だが、読んだ時の衝撃は今でもハッキリと覚えている。とにかく楽しくて、楽しくて、早く先が読みたくて、読み終わった後も、興奮が冷めなくて、また最初から読み始め、何度も何度も繰り返し読んだ。(太田光 「ヒレハレ草」より)

ミラン・クンデラ「不滅」

 思想家の中沢新一に勧められ読んだというミラン・クンデラの「不滅」。太田は、人間の仕草についての考察の文章について感心したという。

「この世には、個人の数より仕草の数のほうが少ないことは明白である。そこでわれわれは不快な結論に導かれる。つまり、仕草のほうが個人そのものより個性的なのだ」、あるいは「仕草のほうこそわれわれを利用しているのだ。われわれは仕事の道具であり、操り人形であり、化身である。(集英社文庫「不滅」より)

太田:これを読んだときに、理由はよくわからないけれど、ああ仕草なのかと思った。僕らは言葉を武器にして表現しているけど、表現手段として、言葉よりも仕草のほうが強いんじゃないかと。では、どうすれば、仕草が言葉を乗り越えられるのか。それを考えるのは至難の業だと思うけれど、僕はその方向にヒントがあるような気がする。(太田光・中沢新一「憲法9条を世界遺産に」より

タレント関係

ハライチ岩井「僕の人生には事件が起きない」

爆笑問題カーボーイにて

太田光:岩井の本、面白かったよ

と一言。

岩井:本当ですか!?読んでくれたんですか!

一番好きな芸人は爆笑問題だと公言している岩井が心底嬉しそうに反応していたのが印象的だった。「僕の人生には事件が起きない」は今も増刷を続けいている。

神田伯山

神田松之丞時代に、出演していたENGEIグランドスラムのエピソードをハライチの岩井がラジオで語っていた。

岩井:神田松之丞さんの時に出てて、講談を10分くらいしたのね。太田さんはそれをずっとモニターで見てて。おれはその姿を見かけて、どんな反応するのかなっていうのが見たくて、隣にビタづけして見てたの。太田さんっていつもネタ終わりに挨拶したら「おう!」とか「またな!」とかすごい元気よく挨拶してくれるじゃん。で、(ENGEIグランドスラムの)ネタ終わって帰る芸人が太田さんに挨拶したら、「おう!」も言わずに手だけあげて、集中して見てるの!それ見たときに、神田松之丞さんって凄いんだって思ったの。
澤部:太田さん、すごい岩井は好きだしね。太田光というフィルターを通して、さらに凄さがわかるっていうね。
岩井:おれはその時初めて芸を見たけど、講談とかやっぱりわからない。太田さん通して、すごいってなった。ネタが終わった時にどうでしたって聞いたら、「いや~これでまだ二つ目か・・・」っていう感じで言ってたね。
澤部:あ~かっけえ。

キングコング西野の映画「えんとつ町のプペル」

爆笑問題の日曜サンデー、キングコング西野出演回より

吉原:太田さん観ました?
太田:観た。素晴らしい。文句なしです。
西野:え!嬉しい!
太田:オレね、ディズニーの映画でいうと、子どもの頃に観たのが「白雪姫」で、
リバイバルなんだけど、そのあと「不思議の国のアリス」とかでディズニーでも、ウォルトディズニーの映画なんだよ原体験がね。「美女と野獣」とかその後の作品は確かに綺麗なんだけど、オレの好きなディズニー映画とはちょっと違う。それは何かっていうと、「色の配色」なんですよ!
西野:ああ~!はいはいはい!
太田:圧倒的に違うのが。CGとかで動きが細かったりするんだけど、もともとのディズニーの映画も一回実写で撮ってアニメにしてるから動きは凄かったりするんだけど、何より違うのは色の薄さとかブルーのトーンとか、それにオレンジを重ねるとか、その配色が昔のディズニーのやつとは違うなと思ってて。プペルは正にディズニーの時に感じた色の配色。
西野:嬉しい!
太田:色って一つじゃわかんないわけじゃん!色んな色が交互に重なった時に綺麗って思うわけじゃん。プペルは、全てが美しい。
西野:うわ~~~~~~~~~嬉しい!!!!
太田:天才的だと思った!お前が本でディズニー目指すって言ったら、馬鹿にされたっていうけど、オレはこれを観て元のディズニーをイメージしたんだよ。だから本当に余計なこと言わなきゃいいのにって思う。
西野:いや言ってないし!詐欺師とか色々言うからでしょ!

インパルスの板倉俊之の小説「トリガー」

爆笑問題カーボーイにて

太田光:本当に深い描き方をしている。それが凄いんだ。最近のハードボイルドの中で、普通の小説家と遜色ない。むしろ、かなり面白い部類に入るんじゃないだろうか」

作品が売れたきっかけについては板倉は実際こう語っている。

板倉:爆笑の太田さんがブランチか何かに出ていた時に、自分の本を出した時に、俺の名前出してくれたの。それを漫画の出版社が見ていて、面白そうって読んで見たら『これは漫画だ!』って。だから太田さんに頭上がんないの」と出版から2年間は売れなかったのに、お笑いコンビ・爆笑問題の太田光の一言で、売れ出した。

松岡茉優

無名時代に「桐島、部活やめるってよ」に出演した松岡の異常な演技の巧さに当初から、太田は爆笑問題カーボーイで絶賛していた。

太田光:ひとり、バケモノみたいな女優が出てましたよ。やけに上手いの。上手すぎて浮いちゃってるの。ありゃ、びっくりした

このラジオでの発言の後、松岡は仕事のオファーが目に見えて増えたという。

■関連記事

村上春樹が作家人生で大きな影響を受けておすすめする本まとめ
fc0373.hatenablog.com
太田光に大きな影響を受けたオードリー若林がおすすめする本まとめはこちら
アメトーーク!読書芸人2021 おすすめ本完全まとめ
読書芸人カズレーザーがおすすめする本まとめはこちら
fc0373.hatenablog.com
岡田斗司夫が絶賛しおすすめした本まとめはこちら
fc0373.hatenablog.com
エンタメ大好き芸人、東野幸治が選ぶ2021年エンタメベストはこちら
fc0373.hatenablog.com
fc0373.hatenablog.com
https://fc0373.hatenablog.com/entry/2021/08/13/104758fc0373.hatenablog.com
fc0373.hatenablog.com
fc0373.hatenablog.com
fc0373.hatenablog.com
超漫画好きのかまいたち山内が選ぶ本当におすすめの漫画まとめ
fc0373.hatenablog.com

芸人人語

芸人人語

Amazon