天才 庵野秀明の凄さがわかる関係者の声・エピソードまとめ

 天才、庵野秀明の凄さがわかる関係者の声、エピソードをまとめてみた。

岡田斗司夫(評論家)

画面の構図優先で説明を放棄することで観客に魔法をかける

岡田:構図優先でカメラフィックスで説明を放棄してるから観客が考えなきゃいけなくなってる。そこで「難しい映画だ」「かっこいい映画だ」ってなるんですね。宮崎駿とはまるで逆なんですよ。(岡田斗司夫のYouTubeチャンネル)

ピクサーでもできない「時間と空間の歪ませ方」

岡田:庵野が『オネアミスの翼』でロケットが発射する時に氷の破片がバラバラ落ちてくる時にリアルな氷の破片ではなくて、時間とか空間を僅かに歪ませて破片ごとにカメラ・レンズを切り替えたような撮り方をしてるんですね。遠くの氷の動きを見せたいときは、ほんのちょっとスローモーションになるし、近くに来た氷の破片はわざと視界から早く消えてなくなるように。これはピクサーのプログラム技術でもできない。(岡田斗司夫のYouTubeチャンネル)

庵野秀明のケレン味のあるデフォルメが『シン・ゴジラ』では何回も見れる

岡田:そんなケレン味のある、ほんのちょっと極端にさせたデフォルメが、『シン・ゴジラ』の中で何カットか入ってて、それを見るともうゾクゾクゾクしてですね。こんなの見れるなら人間の演技なんかいらん!って思ってですね(笑)(岡田斗司夫のYouTubeチャンネル)


岡田が語る庵野秀明の凄さはこちらの動画から
【庵野秀明】庵野秀明の凄さが尋常ではない理由 - YouTube

宮崎駿(映画監督)

『風の谷のナウシカ』の巨神兵シーンを描いて、宮崎駿に気に入られたアニメーター時代の庵野秀明。

その後、庵野は岡田斗司夫らのガイナックスに合流して『オネアミスの翼』の制作に携わることに。

そんな中、宮崎駿は夜中にガイナックスに突然やってきて、庵野をスカウトして『天空の城ラピュタ』の制作現場に連れて行こうとしたというエピソードがある。

庵野を無理やり『天空の城ラピュタ』の制作現場に連れて行こうとした

岡田:(庵野を連れて行かれたことを)宮崎先生、よっぽど悔しかったのか、ガイナックスに夜中に来てスカウトするというですね(笑)業界の掟破りなことをしだしたんですね。(岡田斗司夫のYouTubeチャンネル)

岡田が語る庵野秀明の宮崎駿のエピソードはこちらの動画から
庵野秀明をスカウト!宮崎駿が用意した大役に心が揺れる【岡田斗司夫 切り抜き】 - YouTube

宮崎駿の凄さについてはこちらの記事から
fc0373.hatenablog.com

東浩紀(哲学者)

哲学者の東浩紀は、庵野が新劇場版で『エヴァンゲリオン』シリーズを語り直して、アニメ版(旧劇場版)と全く同じラストなのに変化していることを激賞した。

同じ映画をつくりなおして、同じはずなのに変えることができた凄さ

東:庵野さんは同じことをやっているわけだけど、それは確実に成長して変化しているわけだよ。それが今回観れたってことは凄いことで。人はだから35歳を越えても、変われるし、しかも同じなのに変われるんですよ。庵野さんは完全に同じなんですよ。EOEと今回の映画は完全に同じなんですよ。なのに、変わってるんですよ。それにとても感動するし、そういう映画をエンタテインメントという形でできる、そんなことができるのはこの世界に日本のアニメしか存在しない。これはね、大変なことですよ。(世界最速『シン・エヴァ』)

批評家が語る『シン・エヴァンゲリオン』の凄さはこちらの記事から
fc0373.hatenablog.com

日本最後の思想家 東浩紀の凄さについてはこちらの記事から
fc0373.hatenablog.com


氷川竜介(アニメ評論家)

アニメ評論家の氷川竜介は庵野秀明の独自性と凄さをこう語っている。

アニメ・特撮・CGの枠組みを打ち破る自由で横断的な映像感覚の凄さ

氷川:21年公開の『シン・エヴァ』は、予想を上回る新しい映像感覚を提示し、興行収入100億縁を超える大ヒットを記録する。大きく進歩したデジタル技術を応用し、役者による実写映像や第3村のミニチュアセットをベースにアニメへリアリズムを採り入れ、シリーズ完結を見事に締めくくったのだ。それは庵野秀明が、アニメ・特撮・CGの枠組みを打ち破る自由で横断的な映像感覚を備えているからだ。(2022/5/10 pen)

氷川竜介が語る庵野秀明評はこちらから
特撮研究家の氷川竜介が紐解く、円谷英二から庵野秀明への継承。「シン」がつなぐマルチバース構想とは?|Pen Online

川上量生(スタジオカラー取締役)

スタジオカラー取締役の川上量生は、庵野秀明の凄さをこう語っている。

感性だけでなく、非常に合理的に理屈で作品をつくれる

川上はNHKで放送された『シン・エヴァンゲリオン』の制作ドキュメンタリーのあるシーンが庵野の合理性を示しているという。

川上:番組の中で、作中の部屋を再現した舞台セットをつくり、iPhoneを仮想カメラにして、よいカメラアングルを探るというシーンがある。これは、どんなに腕にあるカメラマンや監督でも、見たこともないシーンを作るうえで、自分の頭で想像できるカメラアングルのパターンなんて限られているから、実際に作ってしまって自分で試行錯誤・探したほうが早いという、極めて合理的な判断によるものだ

卓越したマーケティングセンス

川上は良いクリエイターは良いマーケッターであることが多いと言う。

『シン・エヴァンゲリオン』が興行収入100億を突破したのも庵野のマーケティングセンスがあってこそだ。

100億超えのきっかけは、公開終盤に行われた異例の特典本配布にあった。

川上:これまでの特典本は、すべて公開の初動をかさ上げて勢いをつけるために使われてきた。公開期間も終わりに近づいて、上映回数も激減している最後に投入するなんて手法は聞いたことがない。(2021/7/19電ファミ二コゲーマー)

川上:これを結果的に成功させたことはもの凄いとしかいえない。これは薄い本を描いたスタッフとエヴァファンをよほど信頼していないと踏み切れなかっただろう(2021/7/19電ファミ二コゲーマー)

日本のネット文化をつくった天才 川上量生の凄さについてはこちらの記事から
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幾原邦彦(アニメ監督)

『セーラームーン』や『輪るピングドラム』で知られる監督、幾原邦彦は庵野秀明の凄さをこう語っている。

曖昧さのないことの凄さ

幾原は庵野が自身の作品において「物語、表現、テーマ」すべてにおいて絶対的な評価を得たいという信念に驚いたという。

幾原:庵野さんは、そういう曖昧さを許さないんだ。これには驚いたよ。そういった言い訳を全部なくして、自分の価値観の中で完璧なものをめざしてしているんだ。それも、物語、表現、テーマ、すべてにおいて“絶対”をね。『メカアクションは食い足りないけれど、テーマ的にはすばらしい』みたいな評価も、庵野さんにとっては意味がないんだろうね。ことばで言うのは簡単だけれど、それを実際にやるのはとてつもないことだよ。(《Newtype》1995年11月)

今石洋之(アニメ監督)

『天元突破グレンラガン』や『スター・ウォーズ:ビジョンズ』などの監督として知られる今石洋之は、庵野の凄さについてこう語っている。

今石:庵野監督から受ける刺激は、ものすごく大きい。こんな言い方をしちゃうといいのかわからないけれど」と前置きしながら、「自分より頭のおかしな人ってあまりいないんですが、庵野さんを見ていると『この人ほどおかしくなれない。負けたな』と思う。(2021/10/11ムービーウォーカー)


 

鶴巻和哉(映画監督)

 エヴァンゲリオンシリーズの副監督、「フリクリ」などで知られる庵野秀明の盟友、鶴巻和哉は、庵野をこう評する。

カメラも一緒に飛びながら飛行機を追いかけるシーンは庵野さん以外、誰も描けない

鶴巻:「王立」の時、庵野さんはメカ作監だったけど、原画を描いてた時もあるわけでしょう。カメラも一緒に飛びながら飛行機を追いかけるようなシーンはたぶん庵野さん以外の日本のアニメーターには、ほとんど描けないんじゃないかと思うんだけど。そういったシーンを、相当うまいと言われているアニメーターに要求しても、やっぱり描いてもらえない。業界でもメカを描かせたら1、2番と言われてる人に、そういうのを発注しても、自分が思っている絵になってこない、俺が描いた方がうまいってなっちゃったら、やっぱりここはレベルを落としてでもとか思うのかな。(庵野秀明「スキゾ・エヴァンゲリオン」より)

押井守(映画監督)

 押井守は庵野秀明に明らかに共感を覚えている映画監督だ。宮崎駿という巨匠が君臨するアニメーションの世界で、カウンターとなる作品をつくってきた。ペダンティックなセリフ回しから、世界観の設定、動きよりもレイアウト重視の演出スタイルなど、明らかに共通点が多い。そして、庵野を語るのは、自分が最も適任であると自称するあたり、賞賛しながら、批判する言葉が生まれるのは、庵野への共感からの自己言及にほかならないからだ。

正直言って(旧エヴァを)劇場で見た時は仰天しました。

私小説的内実をメタフィクションから脱構築まで、、なんでもありの形式で成立させた奇怪な複合物であります。ー中略ー表現や文体はと見れば、異化効果どころかラフ原レイアウトもあり、セルまでひっくり返す徹底ぶりで、正直言って劇場で見た時は仰天しました。ワタシでもここまではヤらなかった。「庵野は決してバカではない」どころか、その表現に関する自己批評のありようから察するに、アニメという表現形式への自意識の持ちようは、これは見事なものだと関心した記憶があります。(押井守「世界の半分を怒らせる」より)

世界が称賛する天才 押井守の凄さについてはこちらの記事から
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鈴木敏夫(スタジオジブリ)

 ジブリ鈴木敏夫は、庵野秀明が学生時代に「風の谷のナウシカ」のスタッフとして参加してからの長い付き合いがある。時には、スタジオジブリ新レーベル「スタジオカジノ」をつくり、庵野に実写を撮らせたり、スタジオカラー設立時は、業界中に声をかけ、設立をあとおししたのだという。

宮崎駿なき後は庵野。

 2014年8月に行われた第27回東京国際映画祭の中で、鈴木敏夫の企画で庵野作品の特別上映「庵野秀明の世界」が行われた。鈴木は、宮崎駿が長編映画の監督から引退した現状を踏まえ、こう発言している。

鈴木:宮崎駿なき後は庵野。少なく見積もっても10年、本人は20年って言うかもしれないけど、日本のアニメを牽引していく存在と期待を口にする。(アニメ!アニメ!「宮崎駿なき後は庵野」2014年より)

ナウシカの巨神兵のシーンは粘り強く凄い

 庵野秀明の才能を感じた瞬間は、どこだったというインタビューに対して、鈴木はこう語っている。

鈴木:処女作にその才能は垣間見えると言うけど、「風の谷のナウシカ」の巨神兵を見たときじゃないですかね。粘り強くてすごいシーンになってたんで。その後公表していると思いますけど、実は「ナウシカ」の中に幻の絵コンテがあったんです。何かというと、巨神兵と王蟲(オーム)の戦い。これをやっぱりやりたかったといまだに言ってますからね。ついでだから言っちゃうと、彼はある時期、「ナウシカ」を自分で映像化したいとも言ってました。僕は面白いなと思ったんですよ。宮さんの作った「ナウシカ」はあるけど、庵野の作る「ナウシカ」ってどうなるんだろうと。「エヴァンゲリオン」の最初のテレビシリーズがすごく面白かったですけど、注目したのが、その(エヴァンゲリオンの)デザインですよね。巨神兵じゃんって(笑)。要するにトラウマになっていて、結局彼が何をやってるかっていうとね、「ナウシカ」のその後って感じでしょ?(笑) 僕はそう思いました。(映画ナタリー「シン・ゴジラ公開記念特集 鈴木敏夫、庵野秀明を語る」2016年7月28日 より)

鈴木敏夫の凄さについてはこちらの記事から
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映画監督 樋口真嗣

アマチュアの庵野の作品観て、プロの仕事をぜんぶ捨てた。

樋口:(プロの映画の世界に入って)ダメだ!って挫折するわけですよ。ダメだって自分がダメなのに、いるじゃないですか?若者のわがままさ加減で、悪いの自分なのに周りが悪いと思っちゃう。そんなときに大阪で自主映画っていうのをやってた。学生たちが、集まって映画をとって上映会をやってた。
伊集院:特撮の同好会みたいなのが、素人だけど、頑張ってつくる。
樋口:その中に一本めちゃくちゃ面白いのがあって、有名なヒーローが出てくるんですけど、変身するとただの浪人というか兄ちゃんが、「あ、ウルトラマンだ!」って。その世界観ではそのでかい兄ちゃんがウルトラマンだと思われてるっていう映画があって。それの総監督とウルトラマン役をやっていたのが、庵野秀明だったんですよ。(「伊集院光とらじおと」樋口真嗣出演回 2020年5月12日)

伊集院:アマチュアで凝りに凝りまくったセンス集団がいて、そこにこの人(樋口のこと)プロだからって言われて入るときの緊張感と優越感ってありますよね!?自分の忘れかけてた熱意みたいなのも、そこに。
樋口:そうなんですよ。それで、そのままプロの仕事ぜんぶ捨てて、大阪に行っちゃったんですよ。(「伊集院光とらじおと」樋口真嗣出演回 2020年5月12日)

町山智浩(映画評論家)

エヴァほど抽象的で個人的な映画が日本で100億円売り上げたのは革命的事件

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