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押井守が語る宮崎駿の凄さ

宮崎駿を敵と公言し、宮崎批判の発言が目立つ押井守だが、実際には宮崎駿に多大な影響を受けているという。同世代にエンターテイメントの天才演出家がいたからこそ、自身が本当は好きなエンターテイメントから離れ、鬼才と呼ばれるような作品づくりの世界へ行ったとも言われている。押井守が宮崎駿に言及するエピソードをまとめてみた。

僕のレイアウトシステムっていうのは宮さんの真似

押井:僕のレイアウトシステムっていうのは宮さんの真似から自分独自のものに作り変えただけだよ
-前回もその話が出ましたけど、宮崎さんのレイアウトのどのへんを参考にしつつ、どう変えていったんですか?
押井:あの人のレイアウトっていうのはさ、基本的にはやっぱりアニメーターのレイアウトなんだよ。
ー舞台の装置設定が宮崎さんの言うレイアウトで、押井さんの言うレイアウトはキャメラマンの問題だっていう気がします。
押井:そう、僕のはあえて言わせてもらえば光学的レイアウトってやつなんだよ。要するにパースペクティブ。宮さんのはパースじゃない。画面上の絵柄の収まり具合なんだよ。だから本質的に違うものなの。(「勝つために戦え!監督稼業めった斬り」)

千と千尋の電車シーンの凄さ

電車に乗って三途の川を渡ったわけじゃん?あれはすごい表現だよ。あそこは「火垂るの墓」の夜の市電のシーンと同じぐらい迫力があった。そういう意味でいえば死の世界の迫力があったよね。「もののけ姫」とはえらい違いだよ。(「勝つために戦え!監督稼業めった斬り」)


「未来少年コナン」のレイアウトの凄さ

押井: 『未来少年コナン』のでコナンが寝ているラナのために鉄板で日陰を作るっていう有名なレイアウトがあるんだよ(第八話『逃亡』)。地平線が一本描いてあるだけなんだけど、すばらしいレイアウトなの。これは宮さんに聞いたことがあるんだけど、あのレイアウトを固めるのにやっぱり半日かかったんだって。この線をどこに引くかっていうだけで。それぐらい微妙なものなんだよ。その線一本ですごい広大な砂漠を表現したんだよね。こう鉄板をかざして、その日陰のなかにラナが寝ていて、こう影が落ちてるわけ。その影の落ち方も絶妙なんだけど、それと遠くの地平線がパース的に一致しなきゃいけない。それをあの人は勘でやってるんだよね。 (「勝つために戦え!監督稼業めった斬り」

──勘でできるから天才なんですね。
押井 そうなんだよ。僕だったら三角定規で補助線を引きまくる。地面に落ちてる影のパースと地平線を一致させて、アイレベル(カメラ位置)をどこにフィックスするかっていうさ。でもそれでやったからと言って印象的になるかどうかはわからないんだよ。時には噓も必要なんで。もしかしたら微妙に地平線が上がってる方がいいのかもしれない。実は大地だって起伏があるし、広ければ広いほど丸くなってくるとか、かすかに奥に向かって沈んでる方が広さが出る。(「勝つために戦え!監督稼業めった斬り」)

押井守が珍しく宮崎駿を評価するエピソードが載っている著書はこちら
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崖の上のポニョについて

面白かったよ。100%宮崎駿だと思った。

押井:これは、100%宮崎駿だと思った。
鈴木:その通りです!
押井:鈴木敏夫は指一本触れてない、というか触れさせてもらえなかったんだ。きっと。
押井:だから映画になってないもんね。
押井:今まで、宮さんの映画が、映画たり得てたのは鈴木敏夫や高畑勲がいたからなんだよ。映画として監修する装置がなかった今回は。妄想の羅列だよ。
鈴木:ダメだった?ポニョだめ?
押井:面白かったよ。宮さんの妄想が面白かった。映画になってないっていうさ。
鈴木:あんまりそういうこと言わないで(笑)(「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」より)

素晴らしい妄想の描き手であることは認めるんだ。日本一というか世界一。

押井:今日来たのはさ、目的があって。なんで(宮さんを)ほったらかしにしたの?
鈴木:宮さんの心境を考えて。宮さんの心境は、やっぱり高畑勲の呪縛があったでしょ?高畑勲と10年やった。でも、その後も亡霊のようにつきまとったわけでしょ?宮さんのテーマはどうやって、そこから遠いところにいくかでしょ?
押井:それは、鈴木敏夫の理屈とかさ、高畑勲の能書きが必要だってことを認めてたわけだ。いつまでかは。
鈴木:はい。
押井:それを抜きにして映画をつくりたくなったわけだ。素晴らしい妄想の描き手であることは認めるんだ。日本一というか世界一。それは確かだ。
押井:個々の妄想は凄い。頭の10分間は、クラゲに上がって昇ってくるところ、本当にうまい。うっとりする。
鈴木:妄想を描きたかったんです。
押井:あのお母さん、何で家に帰ったの?家に帰って、もう一回、ひまわりに行ってるでしょ。なんのために家に帰ったの?あの映画の中でなんの意味があったんだ?最低限の必然性がなきゃだめなんだ。
鈴木:構造の無い映画をつくろうと思ったんでしょう。構造っていうのは、高畑さんだったんですよ。構造を持ち込む限り、高畑さんから逃れられないんだよ。
押井:それがおかしいんだよ(笑)自前の構造を持てばいいだけでしょ(笑)(「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」より)

風立ちぬ

シークエンスの作り方の巧さには、思わず唸りたくなります

相変わらず達者なもので、シークエンスの作り方の巧さには、思わず唸りたくなりますが、構成とか構造というものがありません。思いつくまま、気の向くままに物語は展開し、それらしく登場する脇役たちは落とし所もないままに放置され、ドラマは突如として盛り上がり、そして終局を迎えます。(「世界の半分を怒らせる」より)

ド近眼で、ヘヴィスモーカーで、仕事から離れられない堀越二郎青年はもちろん、宮崎駿その人です。婚約者の自宅の庭から忍び込んだり、駆け落ち同然で上司の家へ逃げ込んで結婚したりの大活躍です。かくありたかったであろう青春の日々を臆面もなく描いていて、見ているこちらが赤面しそうです。
誤解のないように言っておきますが、これは大変に結構なことです。「子供たちのために作る」などという大義名分・建前を離れ、自らの欲望の赴くまま、リビドーに導かれて描くことは映画の基本です。映画とはつまり、欲望の形式なのですから。(「世界の半分を怒らせる」より)

老境に突入した宮さんの「エロスの暴走」が、どこを目指すのか。刮目して待て。

老境に突入した宮さんの「エロスの暴走」が、どこを目指すのか。刮目して待て。やはり目の離せない「もう少し見ていたい同世代の他人」ではあります。(「世界の半分を怒らせる」より)


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